デビュー前には実地で先輩を前にガイドの練習を行う。(NMV日本語ガイドグループ提供写真)

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 タイは前国王の崩御からもうすぐ半年になろうとしている。街中では前国王を悼む様子がまだあり、特に国王陛下の棺が納められている王宮周辺は今も全土からたくさんのタイ人が弔問している姿が見られる。

 ただ、それ以外では経済活動は通常通りとなり、観光客もこれまで通り国内外からバンコクにやってくる。一時期は大混乱のため、王宮や王宮前広場周辺の観光施設は休業となった。しかし、すぐに再開され、しかも弔問者がそのまま施設見学にも訪れるため、逆に今はかつてないほどの訪問者数になっているのだという。

 そんな地域にある、タイで最も格式の高い博物館「バンコク国立博物館」には外国人のためのガイドが待機し、展示物の案内やタイの歴史を紹介している。日本語のガイドもおり、日本人女性らで構成されたガイドグループが毎週水曜と木曜の朝9時30分から所要2時間かけて、主要な展示物を案内している。

 このガイドたちはすべてボランティアになる。博物館を管理するタイ文化省芸術局が認める正式なガイドであるのだが、予算は一切割り当てられず、すべてがボランティアによって賄われる。ただ、ボランティアだからといって手を挙げれば誰でもできるものではなく、話を聞けば聞くほど日本人らしい気質を備えた集団であることがわかった。この国立博物館ガイド「バンコク国立博物館ボランティア(NMV)」を務めて15年という野村祥美さんと、現在リーダーを務める3年目の古川典子さんにお話を伺った。

◆40年以上の歴史を誇る日本語ガイド

「芸術局の要請の下、1969年に英語ガイドから始まっているのを見て、当時の在住日本人の方たちが日本語でもガイドをしたいということで勉強会を始めました。初めてガイドを行ったのが1974年の1月で、定期的にガイドを開始したのはその年の3月からですので、ちょうど43年経っています」(野村さん)

 最初のNMV日本語ガイドグループを1期として、毎年5月に募集をかける。今年入会する人がいれば46期。毎年平均で15人が入会する。45期は14人の入会があった。現在は日本語ガイドグループにおいては女性だけしか募集をしておらず、年齢層は20代から70代と実に幅広い。主に日系企業駐在員の奥様方で構成され、若い人の中には小さなこどもを幼稚園バスに乗せてからガイドや勉強会に参加し、午後にはまた急いで戻ってバスを待つ人もいる。夜は子どもを寝かしつけてから、自分の勉強にとりかかる。並大抵のバイタリティーでは務まらない。

 日本語ガイドグループの統制は非常にバランス感覚に優れていて、長い歴史の間に培われた日本人らしいグループ運営であることを感じる。

「グループの活動を支える運営は、すべてメンバー内でまかなっています。先輩方が長年の経験の中で構築されたノウハウをもとに和やかに全員参加型でシステマティックに運営されています。」(古川さん)

 敬虔な仏教徒が多いタイでは徳を積む意味もあって、社会貢献活動が当たり前に行われる。そのひとつに様々な団体や活動にボランティアグループがあって、ボランティアたちはポケットマネーで参加する。ただ、内部で揉めごとを起こすグループも少なくない。しかし、NMV日本語グループは構築されたシステムとノウハウがあって、統率されたグループになっている。

◆半年以上しっかり勉強

 NMVの日本語グループは同じNMVのほかの言語グループと比較しても優れているとされる。毎年5月に入会してもすぐに表舞台に立つのではなく、実に半年にもおよぶ期間、勉強会に時間を費やす。まだ3年目の古川さんにはそのときのことが昨日のことのように思い出せる。

「週に数回、同期の家に集まって勉強会をしました。最初は仏教の言葉どころか漢字すら読めません。ひとつひとつ頭に叩き込んで憶えていきました」