【ハンバートハンバート×Predawn】ビルボードライブ東京公演をレポート。穏やかで心地よい“プリバート”の音世界に心酔

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 慎ましく、生活に根付く音を紡ぎ出す2組のアーティスト、ハンバートハンバートとPredawnの共演ライブが、3月24日ビルボードライブ東京にて開催された。

 シンガー・ソングライター、清水美和子のソロ・プロジェクト=Predawnは、アコースティック・ギターによる弾き語りを中心とした宅録感溢れる前作『A Golden Wheel』の音作りから一転し、2016年9月にリリースした3年ぶりの2ndフル・アルバム『Absence』ではバンド・サウンドを展開。一方、ハンバートハンバートはデビュー15周年を迎えた2016年6月に『FOLK』を発表し、本作ではサポートをまったく入れずに2人だけで歌とギターを演奏している。今回のライブでは、互いにフォークやトラディショナルな音楽にルーツを持つハンバートハンバートとPredawnの音が互いに共振し、緩やかな多幸感が心に染みわたるような時間を与えてくれた。

 会場が暗転しSEがフェードアウトしていく中Predawnが登場。ピアノに腰かけ「Sigh」からショーの幕を開けると、その後ギターに持ち替え、「今日は特別なライブということで緊張しているので…何か粗相があったらすみません…」と謙遜感たっぷりの挨拶で会場を和ませた。ギターで爪弾く「Keep Silence」、「Universal Mind」は、静謐ながらも緊張から解放されていくような心地よい雰囲気が会場を包みこんだ。

 そして、ハンバートハンバートが「どーもー、お邪魔しまーす!」と軽快な調子で登場すると、Predawnを挟む形で3人が並びに。すると佐野遊穂の、「美和子ちゃんは、藤子・F・不二雄先生の作品に出てくる“ポコニャン”に似てるよね!」という唐突な発言に清水が戸惑いを見せ、会場の笑いを誘う一幕も。さらに佐野と清水のふわっとした会話に佐藤良成がツッコミを入れるなど、息の合った(?)掛け合いを見せた。その後Predawnの楽曲「Suddenly」をコラボで披露し、佐藤のギターと佐野のコーラスが加わったことで淡さが際立ち、体に浸透していく歌とメロディにオーディエンスも酔いしれた。

 ハンバートハンバートだけのステージでは、“マスク”と“花粉症”をテーマにMCが始まると、佐野の話を聞き流す相槌を打つことが多い佐藤まで積極的に語り出し、“ハンバートハンバート・ワールド”が繰り広げられた。「ぼくのお日さま」などを披露し、日常で誰しもが持つ悲喜こもごもを綴った歌詞と、温厚なアコースティックの演奏がじんわりと胸を打った。

 再び登場したPredawnとともに、高田渡の「生活の柄」とハンバートハンバートの「おなじ話」を披露。過去に男性同士で同曲をコラボレーションしていたが、女声×女声の演奏はおそらく初めてで、普段とはまた一味違って清水と佐野の柔らかいハーモニーが混ざり合っていた。アンコールでは、清水がハンバートハンバートの中でとりわけ好きだという「旅の終わり」を3声で演奏し、ライブの幕を閉じた。

 共演に先駆けて行われた対談でも、「曲の作り方が似ている」という共通点を見つけたり、“プリバート”と今回のユニットを銘打ったりと盛り上がっていた3人だが、演奏でも初共演だとは思えないほど2組の存在感が自然に溶け合い、会場は終始、都会の喧騒も忘れるほど穏やかで、じんわりと温かい空気が溢れていた。

Photo:後藤渉
Text:神人未稀