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広島大学と京都大学は、宿南知佐ウイルス・再生医科学研究所客員教授(広島大学教授)、開祐司 同教授、近藤玄同教授、吉本由紀広島大学特任助教らの研究グループが、腱・靱帯やその連結部にあたる軟骨など、筋骨格系を繋ぐ組織の成熟には転写因子Scleraxis(Scx)が必要であることを明らかにした。同研究成果は3月22日、英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

腱・靱帯とその連結部の軟骨は、筋骨格系が一体化した運動器として機能的に働く際 に欠かせない役割を果たしているが、血管網が乏しく、損傷すると修復と機能回復が非常に困難で、治療の発展につながる分子的なメカニズムの解明が望まれている。

転写因子であるScxは、胎生期に繋ぐ組織が形成される過程において特異的に発現 することが知られているが、その発現パターンはダイナミックで、腱・靭帯では持続するが、骨への連結部を形成する軟骨では一過性にしか発現しない。ノックアウトマウス(遺伝子を操作して1つ以上の遺伝子を欠損させたマウス)胚の解析から、Scxが欠失するとその発現が持続する終止腱や筋間腱の低形成が認められ、腱の成熟に対する重要性は示唆されていたが、靱帯や連結部の軟骨などほかの繋ぐ組織に対する影響は明らかになっていなかった。

同研究グループは、ScxCre ノックインマウス(染色体の特定の遺伝子の場所に別の遺伝子のDNA が挿入されたマウス)を作成。筋骨格系を繋ぐ組織に発現している転写因子 Scx は、その発現が長く持続する腱・靱帯だけではなく、一過性にしか発現しない連結部の軟骨の成熟にも必要であることが明らかになった。

今回の結果から、Scx が繋ぐ組織の成熟に必要な転写因子であることは明らかになったものの、再生医療に応用することのできる幹細胞から Scx 陽性細胞を効率良く誘導する方法は知られていない。今後は、液性因子や低分子化合物を用いて、iPS細胞のような多能性幹細胞からScx陽性細胞を誘導する方法を開発することで、外科的な処置だけでは完治を見込めない繋ぐ組織の再生が可能になることが期待される。

(早川厚志)