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●「バランス接続」とは
パイオニアからハイレゾ対応の新しいポータブルオーディオプレーヤー「private」こと「XDP-30R」が発売される。ポイントは、同時期にパイオニアから発売されるイヤホン「SE-CH5BL」と合わせて5万円以内という手頃な価格で、高音質の「バランス出力」に対応した点に注目だ。今回は、バランス接続によるメリットも体験しながら「private」をレビューしよう。

そもそものところ、今どきはスマホでも音楽を聴けるのに、別途プレーヤーを持つ意味はどこにあるのだろうか。最初にポータブルプレーヤーのメリットを整理しておこう。

まず、専用プレーヤーなら電話の着信があってもリスニングを邪魔されることがない。内蔵バッテリーやストレージの容量も音楽再生のためだけに使えるので、たくさんの音楽ファイルを持ち出しやすい。そしてなにより、アンプやDACなど音楽再生の質を高めるパーツを搭載しているため、音質的な底力が違う。

ここに紹介するprivateは、高音質の「バランス出力」に対応。バランス出力には大きなアドバンテージがある。

スマホが多く採用する「アンバランス出力」と比べて、「バランス出力」はヘッドホン・イヤホンを駆動する仕組みそのものが異なる。音楽信号をプレーヤーの内蔵アンプからヘッドホンのドライバーに伝えるには「 (プラス/ホット)」と「- (マイナス/グラウンド)」という2つの信号が必要になるが、アンバランス出力の場合は、左右で1台ずつのアンプからプラス/ホット側の信号を送り、マイナス/グラウンド側の信号は左右が共通化されている。

一方、バランス出力の場合は左右チャンネルに2台ずつ、合計4台のアンプを使うため、ヘッドホンやイヤホンのドライバーを余裕をもって動かすことができる。また左右チャンネルの電流が干渉しないので、ステレオの分離感もますます明瞭になる。

プレーヤー側は、バランス出力に対応するための回路やパーツが追加されることになるため、コストアップにつながる課題をクリアしなければならない。privateは、推定価格が39,800円前後とハイレゾプレーヤーとしてはエントリークラスにあたる価格帯でこれを実現したのだから、十分注目に値すると言えるだろう。

だが、音が良くなるだけでは、スマホに加えてもう1台持ち歩く動機にはなりにくい。次のページでは、privateの特徴的な機能について紹介する。

●スマホアプリで操作できる
privateは非常にコンパクトな設計で、片手持ちでの快適な操作感にもこだわった。2.4型のタッチパネル液晶は、スマホをライバルに見据えた機敏なレスポンスが特徴。音楽再生の心地よさだけを追求した操作画面のわかりやすさは、スマホで音楽を聴くときと比べものにならない。

内蔵ストレージは16GBだが、microSDカードスロット×2基 (1スロット最大200GB)を使うと、最大416GBを持ち歩ける。さらに本体をWi-Fiにつなげば、「TuneIn」や「radiko.jp」でインターネットラジオが聴ける。ストリーミングコンテンツへの対応は、今後様々な音楽配信サービスに広がる可能性もあるだろう。

スマホと2台持ちすれば、本機の操作がますます簡単になる。iOS・Android対応の「Pioneer DuoRemote」アプリをスマホに入れて、機器同士をBluetoothでペアリングすれば、バッグの中に入れたprivateの曲送り、ボリューム調節などをスマホから操作できるようになる。

privateの本体は、大人の男性なら片手に心地よく収まるサイズ感だ。アルミブロックを削り出してつくったシャーシは剛性が高く、質感もリッチ。アンテナの感度を確保するため背面には樹脂製のパネルを採用しているが、この異種素材のコンビネーションが柔らかいデザインの魅力を引き立たせている。また、ダイヤルによるボリューム操作はとても心地よい。ホールドスイッチも付いているので誤操作も防げる。

ユーザーインタフェースもシンプルにまとめられている。ボリュームノブを動かすと、本体フレームの右下コーナーがカットされているデザインに合わせてレベルメータが動くギミックも洒落ていると思う。

●よく聴く曲がいろんな表情を見せてくれる
バランス出力とアンバランス出力による音の違いも確かめてみよう。リファレンスにはパイオニアのハイレゾとバランス接続に対応するイヤホン「SE-CH5BL」と、本機に近いスペックを備える通常3.5mm/3極接続(アンバランス)のハイレゾ対応イヤホン「SE-CH5T」を用意した。

privateは2.5mm/4極のバランス出力用ジャックと、3.5mm/3極のアンバランス出力用のジャックを本体のトップに並べて配置している。それぞれに対応するイヤホンを装着するだけで、バランス出力への切り替え操作は不要だ。

バランス出力は一般的な方式のほかにACG (Active Control GND)方式も選べるが、今回は通常のバランス出力を中心に聴いた。試聴するのは、MISIAのアルバム「星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE」から『Everything』(88.2kHz/24bit FLAC)だ。

はじめにアンバランス出力の音から聴く。中低域のつながりがとてもスムーズで、柔らかく暖かみのあふれる声や楽器の音色に包まれる。バランス出力に切り替えると、声のハイトーンの切れ味がぐっと高まって、ピアノのメロディラインが一段と鮮やかさを増した。中高域の音は艶っぽく潤っている。音像の定位が明確になって、ボーカルとバンドの楽器との位置関係がはっきりと見えてくるうえ、奥行き方向の見通しもクリアになって弱音の粒立ちもキリッと立ってくる。低い音のビートもタイトに引き締まっていた。

パイオニアのイヤホン「SE-CH5BL」自体、バランス接続の良さが直感的に味わえる優秀な入門機だ。解像度が高く聴感のバランスもニュートラルなので、プレーヤーごとのキャラクターがとてもつかみやすい。また、音の出方が柔らかく、きめ細かな階調表現力にも富んでいるので、長時間音楽を聴いていても疲れを感じなかった。2.5mm/4極タイプのバランス出力に対応するプレーヤーで広く使えるので、オンキヨーのハイレゾスマホ「GRANBEAT」こと「DP-CMX1」と組み合わせても良さそうだ。

privateのように、バランス出力とアンバランス出力ともに安定したパフォーマンスを発揮できるプレーヤーは、一概に「どちらの方がよりいい音」と言い切るのが難しいのだが、バランスとアンバランスのキャラクターの違いを1台で堪能できるところも一般的なハイレゾ対応スマホにはない魅力だ。普段よく聴く音楽が色んな表情を見せてくれる。

この頃はスマホでばかり音楽を聴いていたという方は、privateの音を聴けば、すぐに音の"潤い"が違うことに気がつくはずだ。もう既にハイレゾ対応のプレーヤー、あるいはポタアンを使っているという方も、コンパクトでかわいいバランス対応のセカンドプレーヤーとして、privateに注目してみてはいかがだろうか。

(山本敦)