籠池氏「面白すぎる」記者会見の落とし穴

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連日のように取り上げられる森友学園問題は政治家を巻き込み拡大の一途。キャラクターが際立つからこそマスコミは取り上げるのだが。

■スポークスマンは無個性でつまらない人物にせよ

連日のように森友学園の籠池泰典前理事長と、その妻、そして長男がメディアや国会を騒がせている。この事態は、一法人のリスク案件としては相当に規模が大きく、「鎮火」はなかなか難しい状況といえよう。

広報の仕事をしていると、「危機管理」「リスクマネジメント」の仕事がついてまわるが、企業の人々は森友学園を始め、数々の危機に陥った企業から学ぶべき点がある。それは、「スポークスマンはできるだけつまらなそうで、外見も特徴がない人物にしろ」ということである。もしも最高責任者たる社長がそういった人物ではない場合は、「せめて危機的な状況のときだけでもつまらそうな人物に見せて、外見の特徴を消すような努力をしろ」となる。

今回の森友学園の一件は政治家や国をも巻き込んだあまりにもデカ過ぎる話なので、もはや一般論としては語れないが、よくある企業不祥事の場合、スポークスマン選びは極めて重要である。というのも、マスコミは結果的に「キャラクターが際立っている」「過激な物言いをする」「見た目に特徴がある」といったスポークスマンをこぞって取り上げるようになるからである。

籠池一家は、父・泰典氏はとにかく言動が独特で、映像素材としてあまりにも面白すぎる。また、泰典氏と顔がソックリな長男の佳茂氏も何があろうが父をかばい、尊敬の念を見せる姿がまるで「ミニ理事長」のごとき雰囲気で、これまた面白い。さらには、自民党の鴻池祥肇氏(参議院議員)から「オバハン」呼ばわりされた泰典氏の妻も「朝日(新聞)嫌い!」と会見の場で叫ぶなど、とにかく親子揃ってキャラとして面白すぎるのである。

■「面白すぎるキャラ」は不祥事を長引かせる

こうした「面白すぎるキャラ」の筆頭格に挙げられるのは、2007年から2008年にかけて食材偽装や食べ残し料理の使いまわしが発覚し、廃業へと追い込まれた「船場吉兆」の謝罪会見だろう。取締役の湯木喜久郎氏に報道陣から厳しい質問が次々と寄せられるなか、横に座った母親の湯木佐知子氏が「頭が真っ白になって……(と言いなさい)」と喜久郎氏に小声で指示。そのさまが「腹話術会見」などと評された。佐知子氏には「ささやき女将」のあだ名までついてしまった。

このとき、世間に注目されたのが過度に緊張した喜久郎氏だけであれば「情けないボンボン取締役が涙目で冷や汗」といった程度の印象で終わったのだろうが、あまりにも佐知子氏のキャラクターが面白すぎた。日本料理の名門「吉兆」ブランドの知名度が醜聞の拡散に影響した面もあるだろうが、正直、高級店にあまり縁がない一般の人々からすれば「あるセコい店の悪事がバレた」程度のこと。あれから10年も経とうとするのに、こうしてリスクマネジメントの失敗例として取沙汰されることはなかっただろう。庶民が行く巨大チェーンが組織ぐるみで何百万食もの食品偽装をしていた、というわけではないのだから。

籠池氏も、ささやき女将もそうなのだが、マスコミが追うイシューは事件の重大性という要素に加え、「登場人物の面白さ」というものも大いに影響するのだ。ほかにも過度に報じられた例として、私が一瞬にして思い出すのが以下の件である。もちろん被害者本人にとっては重大ではあるものの、マスコミ報道の量として「多過ぎるのでは?」と思われるものである。

●耐震偽装問題におけるヒューザー・小嶋進氏。「ホリエモンになぞらえまして、私は小嶋でございますけど『オジャマモン』ということで、ぜひスタジオに呼んでください」「私の顔が悪人の顔に見えますか!」などと発言したり、演歌歌手デビューしていたりする点などが特徴的。

●殺人ユッケ事件におけるフーズ・フォーラス勘坂康弘氏。ムダにイケメンで、役者顔負けともいえそうな土下座を大袈裟に行った点から印象に残り過ぎた。

●異物混入騒動における日本マクドナルド、サラ・カサノヴァ氏。仏頂面で会見に臨み、マクドナルドが被害者であると言い張り、一気に評判が悪くなった。深々とお辞儀をしなかった点も反感を買った。

●政務活動費の不正受給疑惑における「号泣議員」こと兵庫県議の野々村竜太郎氏。書き起こしサイト・ログミーが記したこのセリフが大きなインパクトを残した。

「この世の中を! ウグッブーン!! ゴノ、ゴノ世のブッヒィフエエエーーーーンン!! ヒィェーーッフウ゛ンン!! ウゥ……ウゥ……。ア゛ーーーーーア゛ッアーー!!!! ゴノ! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中を! ゥ変エダイ! その一心でええ!! ィヒーフーッハゥ。一生懸命訴えて、西宮市に、縁もゆかりもない西宮ッヘエ市民の皆さまに、選出されて! やっと! 議員に!! なったんですううー!!!」

■「面白さ」ばかりでは、他の重大ニュースを見落とす

不謹慎ではあるものの、メディアはこうした「面白すぎる人物」「特徴があり過ぎる人物」を、事の重大性はさておき、いつまでも取り上げることとなる。対して、黒いスーツを着た白髪のオッサンやメガネの地味なオッサンが4人並ぶ「ミズノ『飛び過ぎる統一球』謝罪会見」が2014年に発生したが、このシーンをいまでも鮮明に覚えているのは相当な野球マニアくらいだろう。登場人物の印象が薄ければ、世間の記憶はすぐに風化してしまうものだ。

その一方「キラキラ広報」という言葉もある。これは、美人の若い広報担当者が記者の質問に答えた場合に「美人過ぎる広報」「美人過ぎるOL」などと書かれ、ネットで評判になることだ。こうした人物は、ポジティブな話題の際にスポークスマンになるべきである。

というわけで、スポークスマンは「いいことを発表する人」と「謝罪対応要員」と明確に分けておくほうがいいかもしれない。何しろ、マスコミの追及の激しさの基準となる要素が、単なる「キャラの特異性」に収斂してしまうような状況にあるのが、いまの日本なのだから。

あとは被害者と加害者が誠実に協議をすれば、ひとまず落着か……という段階にある案件であっても、「面白い」というだけでマスコミが過度な報道を繰り返す。そんな状況は、読者・視聴者がもっと関心を払わねばならない他の重大ニュースに向き合うための時間を削いでしまう。これは、大きな機会損失だ。

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【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・不祥事のスポークスマンは地味でつまらない人物に限る。
・面白さばかりに注目していると、大事なニュースを見落とすぞ!

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中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。

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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎)