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「先輩がつくった資料をまねてみてもOKがもらえなかった」とか、「本や講座を通じて資料のつくり方を勉強してきたのに、自分の提案が選ばれない」など、資料作成について悩んでいる方は決して少なくないはず。このことについて、『3秒で採用! 絶対「通る」プレゼン資料のつくり方』(天野暢子著、実業之日本社)の著者は次のように指摘しています。

あなたがこれまで学んできたのは「資料の作り方」であって、「"通る"資料の作り方」ではなかったのです。
資料というと「プレゼン資料」「営業資料」のように、プレゼンテーションや営業活動の一部として考えられがちです。
しかし、実は「資料こそがプレゼンテーションそのものなのです。(中略)きちんと作り込めば口頭説明は不要になるのが、資料の魅力なのです。
(はじめに 『通る』資料作りのコツを伝授!)より」

なお、「意思決定を引き寄せる」資料をつくるにあたり、著者は常に次の5つを考えているのだといいます。

【決め手はGHOUS(ガウス)!】

Goal(目標意識):この資料によって「何が」「どうなる」のかを常に意識する
Hospitality(気くばり):相手にとってうれしい、心地よいもので意思決定を促す
Originality(自分らしさ):あなたらしさを伝えて選ばれやすくする
Usability(使いやすさ):相手の使いやすさを徹底する
Simple(シンプル):相手を説得ではなく直感で納得させる
(はじめに 『通る』資料作りのコツを伝授!)より」

そして、さらに忘れてはいけないことがあるのだとか。そのことについて触れたSTEP 1「『6W2H』で『仕様を決める』!」を見てみましょう。

What(なにを?) 意思決定に必要な情報はなにか


資料を通すためには、必須情報を「6W2H」で書き出す必要があると著者はいいます。たとえば社内会議を招集して参加者の出欠をとる資料だった場合、「6W2H」は以下のようになるわけです。

What(なにを?):営業部 月例会議
Who(誰が?):本社営業部 山中昌弘
When(いつまでに?):5月23日(火) 午前10時〜午後3時
Where(どこで?):本社7階 B会議室
Why(なぜ?):下半期の売上予測発表
Whom(誰に?):各支店の営業部長
How(どのように?):全支店 北から発表
How much(いくらで?):出張費用は本社負担
(23ページより)

意思決定のポイントは、状況や意思決定者によってさまざま。6W2Hをすべて網羅するように情報をあげていくわけです。(22ページより)


Who(誰が使う?) 「らしさ」を演出する


上司が使う資料を部下がつくるというケースは少なくありません。そして、レイアウト、選ぶ文字のサイズなどにも人柄が滲み出るものだからこそ、自分らしさを出した資料をつくることは重要。そうすることで、「○○がつくった資料」としての認知度が上がってくるということ。そのキラリと光る個性が、意思決定のポイントになることも少なくないといいます。

そして大切なのは、資料は使う人の分身だという意識を持つこと。資料づくりを代行するという感覚ではなく、使う人になりきってつくるべきだという考え方です。(25ページより)


When(いつまでに?) 「○日まで」では不十分。「×時まで」を確認


資料づくりをはじめるときは、まず最初に締め切りを確認。しかも「なるはやで」というように曖昧なものだと、「30分以内」なのか「今週いっぱい」なのかを伝達することは不可能。そこで締め切りについては「何日」だけでなく「何時」まで確認することが大切。(27ページより)


Where(どこで?) 使う場所でつくり方を変える


資料は「どこで見られるか」によって、「現場で見せるだけ(スライドなど)」「現場で見せ、資料も相手に渡る(スライドと配布資料)」「資料だけが相手に渡る」という3種類に分けられるそうです。

そして、資料について説明して回ることはできないため、渡した相手以外に資料があちこちに出回ったとしても勝手に協力者や仕事を集めてくるような、正確で説得力のある資料に仕上げることが大切。(29ページより)


Why(なぜ?) 「最終ゴール」と「今回のゴール」がある


「なにが」+「どうなる」ことをゴールとしているかを明確にしなければ、望む結果を得ることは困難。そこで、「これからつくる資料はなにをゴールとするのか」が、結果を出す資料づくりの最大のポイント。

そして、多くのビジネスはいくつものステップを踏んで進むもの。さまざまな段階で何度も資料を見せるので、「今回の資料のゴール」を決める必要があるといいます。相手に見せる資料の数だけ「今回のゴール」は設定されなければならないわけです。(31ページより)


Whom(誰に?) オトす相手のリサーチポイント


資料を見て意思決定を下すのは、どんな人なのか? それを知らずして攻略はできません。そこで、相手がひとりか複数か、その人(たち)の性別、年齢、職業、役職、知識や経験のレベル、なにに関心があるか、好きなもの、嫌いなもの、決定権があるのは誰か、などを徹底的に考えることが重要。(33ページより)


How(どのように?) 自分が見せたい完成形で渡す


資料はメールやUSB、ウェブからのダウンロードなど「データで渡す場合」と、「紙資料で渡す場合」の2種類があります。しかしデータで渡す場合、ファイルが開かない、文字化けするなどのトラブルも起こりがち。そうした表示の変化を最小限に抑えるなら、つくったままに表示固定できるPDF方式の保存が適切だと著者は記しています。

一方、紙資料にも気配りは必要。相手がコピーをとったり、持ち歩いたりすることを考慮し、コンパクトにおさめるべきだというのです。(36ページより)


How much(いくらで?) コスト感なしでは決定できない


どんなに魅力的なアイデアや企画も、金額なしでは相手に判断することはできません。つまり、意思決定を左右する情報としての「コスト感」が重要。金額には「相手が支払う金額」「無料」「相手が受け取る金額」の3種類がありますが、これらのコスト感が、意思決定の決め手となることがあるというわけです。

「相手が支払う金額」は相手が負担する額なので、出費ということになります。そのため"定価10万円のところ7万円で提供する"というような伝え方で、お得なコスト感を提供することが可能。

「無料」は「0円案件」。つまり"時間が短縮できる""必要な人数が減らせる"など、相手がお得と感じる情報もコスト感の一種。コストのかからない提案ならOKが出る案件も多いので、「無料」「0円」と明記してアピールすることがポイント。「相手が受け取る金額」は、"手続きを行えば最大で10万円が還付されます"など、相手が受け取る金額が発生する提案。これも、金額で紹介しない手はないわけです。

意思決定にもっとも必要なのはコスト感の明示。ただし見積もりとは別なので、概算いくらなのかが伝わればいいそうです。(37ページより)



著者は、約30年間にわたりマスコミ業界で"伝える"仕事をしてきた人物。広告会社、広告主、マスメディアに勤務し、「プレゼンする側」と「プレゼンを受ける側」の両方を経験しているのだといいます。本書の主張に説得力があるのは、そんなバックグラウンドがあるからこそ。プレゼン資料の精度を高めたい人は、読んでおくべきかもしれません。


(印南敦史)