アフリカで「最も正しく理解されていない国」・スーダンとはどんな国なのか?

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インターネットで世界のほとんどがつながった現代でも、ニュースが入ってこないと世界の実際の姿を理解することは難しいものです。日本からも遠く離れたアフリカの国・スーダンもそんな国の1つで、どんな人が暮らして生活を送っているのか、そしてどんな歴史や文化が存在しているのかを正しく説明できる人はほとんどいないはず。そんなスーダンの実際の姿を記録したレポートがBBCによってムービーで公開されています。

BBC - Travel - Africa’s most misunderstood country?

http://www.bbc.com/travel/gallery/20170228-africas-most-misunderstood-country

ムービーは「旅行者にとって、スーダンの秘められた宝は心をわしづかみにするものです。夜の砂漠で屋外で眠る体験から、スーダンの若者が詩を詠んで国民としての誇りを呼び起こす様子まで、BBCのレポーターでドキュメンタリー映像作家のベンジャミン・ザンドがスーダンの知られざる側面を3つのパートに分けて紹介します」というキャプションでスタート。



「自分が経験したことをもとに、私がスーダンに対して抱いていた誤解は解けた」との一文を寄せるザンド氏。



◆パート1

「スーダンの古代の都市である『ナガ』はクシュ王国の要塞として栄えた街。その歴史は紀元前4世紀にまでさかのぼるが、2つの大きな寺院『Amun』と『Apedemak』といった当時の建造物は長い時間の試練を生き延びてきた」



トヨタの4輪駆動車に乗って現地を訪れるザンド氏。



現地のガイドとして、2人のスーダン人男性、サファ氏とマジン氏が同行します。



まず目指すのは、紀元前4世紀の都市の遺跡であるナガの寺院と……



その後のメロエ王国(紀元前3世紀‐紀元3世紀)の時代に作られたという、ヌビアのピラミッド



舗装されていない荒涼とした大地を走る4輪駆動車。アフリカではトヨタなどの4輪駆動車がないと生活がままなりません。



道中、コーヒーショップに立ち寄ってスーダン流のコーヒーを味わうザンド氏の一向。



コーヒーを味わいながらマジン氏は、スーダンが持っている豊かな多様性について語ります。世界に発信されるスーダンのイメージは「内戦」や「飢餓」といったものがほとんどですが、2011年に南スーダンが独立する前はアフリカ最大の国土を持つ国だったスーダンには、そのようなイメージを覆す豊かな多様性が存在しているといいます。



コーヒーブレイクのあと、全行程5時間におよぶ炎天下の砂漠のドライブを再開。



やがて一行は、砂漠の中に建物跡が並ぶ場所に到着。



彫刻が施された人工物が立ち並ぶ遺跡。この場所こそが……



クシュのメロエ王国の時代に建てられた寺院の跡です。2000年にわたる時を経て現存している遺跡ですが、特に政府による保護もされない状態で放置されているとのこと。



遺跡を守っているのは、この地域に住むわずかな村人だけ。



その理由は、この場所にある井戸を守るためでもあります。



ナガの遺跡をあとにした一行は旅を続けます。日が傾き、一行は今夜の宿に到着。スーダン流肉料理の「シェイヤ」を楽しんだ一行は、寝床の準備を進めます。多くのスーダン人は、天然の目覚まし時計である太陽の光を求めて屋外で寝ることを選択しています。



「シェイヤ」は鶏肉または羊の肉を使ったスーダンの肉料理で、「ダクワ」と呼ばれる自家製のピーナッツバター辛口ソースで食べられます。



また、「フル」と呼ばれる豆料理もスーダンならではの料理。ファバ豆を野菜から採った油とクミンで和えた料理で、アラブから中東、アフリカ地域で多く食べられている料理です。



料理を味わったら、ベッドに入ります。もとは建物の中にあったベッドをわざわざ屋外に出して眠りにつく一向。



「どうして外で寝ることに?」と尋ねるザンド氏に対し……



マジン氏は「多くのスーダン人が屋外で眠ることを選びます。その理由は、朝に太陽の光を浴びて誰よりも早く目覚めるためだそうです。



「じゃあパンツ一丁や素っ裸になって寝たい人は?もう慣れるしかないんでしょうね」と笑うザンド氏。所変われば生活様式も変わると言うわかりやすい一例と言えそうです。



一行はこのまま朝まで眠りにつきました。



「次の日の朝、ザンド氏の一行はかつてのメロエ王国へ。ナイル川の東岸に位置して豊かさを享受していたメロエは現在、紀元前3世紀に作られた200カ所におよぶピラミッドがユネスコの世界遺産に登録されている。現在、このピラミッドを訪れるのは年間でわずか1万5000人で、エジプトのピラミッドに比べるとほんのわずかな規模である」



太陽が上り始め、辺りが明るくなってきた頃に起き始める一向。



途中でコーヒーショップに立ち寄る一向。店主の男性にピラミッドの存在についていろいろ聞いています。



「昔ピラミッドで何があったか皆知っているか?」と尋ねられた珈琲店の男性は「噂は聞いたことはあるが、本当のことはほとんど知らない」と回答。「皆に恐れられる存在?」という問いに対しては「恐れていたわけではない。みんな何も知らないんだよ」と話しています。



再び現地を目指す一向。やがて目の前には建物が見えてきます。



ついにメロエのピラミッドに到着。大小いくつものピラミッドが建ち並んでいます。



その多くは頂点の部分が崩れた状態。これには、後述する理由が隠されています。



砂漠の中に点在する圧巻の光景



中には非常に細長い形状のピラミッドも



このピラミッドも、砂漠の乾燥した気候によって風化を免れてきたようです。



しかし、ほとんど保護が行われていないことから、観光客が遺跡を破壊するという行為が起こっています。やはりこの問題は世界で共通して発生している大きな問題といえそうです。





先端が崩されている理由、それは1800年代にイタリアの調査団が訪れた際に、ピラミッドの中にあると考えられた財宝を持ち帰るためのものだったとのこと。



しかし実際に財宝があったのか、どんなものが持ち去られたのかはよくわかっていないとのことです。



世界遺産に登録されたことから、一部では保護が行われている模様。この問題は人類共通の課題と言えます。



◆パート2

「人口の大半を占める若者層に見られる断固とした文化へのプライドは、スーダンの繁栄をもたらす長い道のりである。アラブ系とアフリカ系のアイデンティティが国民の分断を招く問題に立ち向かう中において、スーダン人の若者は驚くべき手段・『詩』を用いてスーダン人であることの意味を見いだそうとしている」



ザンド氏に同行していたマジン氏も詩を綴っています。「人々にこの国を知ってほしい。この国がもっと良くなってほしい。私は人生をそのことにささげたいと思う」



ザンド氏が訪れたのは、夜に多くの人が集まる部屋。



ここでは人々が寄り集まって、自分の思いを詩に綴って発表しています。



朗読の様子をiPhoneで撮影する姿も。「内戦」や「貧困」というイメージを抱かれがちなスーダンですが、街ではiPhoneやAndroidなどのスマートフォンを持つ人も多くいるようで、詩を朗読する人のほとんどがスマートフォンに書かれた原稿を読んでいます。



ゲストとして招かれていたザンド氏も急きょ詩を朗読することに。



その内容に拍手喝采。このように人々の気持ちが集まって、国造りが行われていることがわかります。



◆パート3

「スーダン人にとって、自らの文化に対するプライドは今に始まったものではない。それは、3000年の伝統を持つ『ヌバレスリング』にも見られる」



一行が訪れたのは、中央に土のリングが設置されたレスリング場。多くの人々が試合の様子を見守っています。



ヌバレスリングは毎週金曜日の夕方に開催されているとのこと。スーダン人のアイデンティティの1つで、子どもが試合を楽しむ姿も。



試合は非常に盛り上がり、時には観客同士のいさかい事が起こることもあります。



最初は見学に徹していたザンド氏でしたが、急きょ「国際エキシビションマッチ」が開催されることに。



その内容はもちろん、スーダン対イギリスの戦いとなりました。



ルールすら十分に知らないザンド氏は心配の表情。



しかし試合がスタート。青色のシャツを着ているのがザンド氏です。



対するスーダンの選手はシャツを脱ぎ、完全に本気モード。低い姿勢と長い手足が優れた身体能力を感じさせるよう。



果敢にアタックを試みたザンド氏でしたが……



あえなく倒されてしまうことに。ルールすら知らないのでこれは仕方ない。



しかし、ザンド氏を倒したスーダン人選手は、ザンド氏を担ぎ上げて健闘をたたえます。これは心温まる瞬間。



そして担がれたまま場内を一周。さらには別の人物に担がれてもう一周。体をぶつけ合って戦う試合に国境はないことを感じる素晴らしい光景です。



リングを出たザンド氏は場内の人気者に。伝統的な衣装に身を包んだスーダン国民に見送られて会場をあとにしました。



最後のメッセージでは「スーダンが持つ歴史と物語は、ほとんど耳にすることがないものです。しかし、実際に自分で目の当たりにすると、それらは決して忘れられないものになるでしょう」とムービーを締めくくっています。