危なげない勝利でホームでの雪辱を果たしたUAE戦。力の劣るタイとの対戦でも、我々見る者は安心して90分を過ごせるだろうか!? 写真は今野。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 敵地アルアインで、日本はUAEを2-0で下した。これによって、グループ1位のサウジアラビアと勝点で並んでの2位に浮上。ロシア・ワールドカップ本大会出場の道が、少し拓けてきた。
 
 そして、今まで吹き荒れていた批判は、一時的にせよ、止んでいる。
 
 しかし、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表の本質は、何か大きく変わったわけではない。
 
 例えば、昨年10月のオーストラリア戦の前半は、戦術的に完璧に近い出来だった。後半は幾らか綻びはあったものの、及第点だったと言える。
 
 W杯で世界の強豪と渡り合うのに、ひとつの試金石になる試合だった。プレッシングとリトリートを使い分け、ラインコントロールも整然としており、かつ勇敢。選手の距離感は正しく保たれ、カウンターに出ていくスピードも鋭かった。
 
 しかし、後半にわずかな乱れから失点したことで引き分けに持ち込まれ、批判を浴びることになってしまった。
 
 勝敗だけでもって評価を旋回すれば、実像はぼやけてしまう――。
 
 では、先日のUAE戦で、ハリルホジッチ監督はいかに戦ったのか?
 
 主流にしてきた4-2-1-3から4-3-3にフォーメーション変更。さらに、選手も何人か代えたが、戦いのコンセプトは根本的には変わっていない。
 
 指揮官は、サイドにはストライカー色が強く、身体的に恵まれ、闘争心旺盛な選手を好んで用い、ウィングに近い役割はSBに求める。その考え方は一貫し、ブレていなかった。その証拠に、ハリル政権の最多得点者は右FWの本田圭佑であり、連続試合得点記録を続けていたのは原口元気だ。
 
 そしてUAE戦、決勝点を決めたのは、右FWに入った久保裕也。SB酒井宏樹との幅を利用してのゴールだった。
 
 補足すれば、サイドの選手に得点を求める考えが基本にあるがゆえに、ハリルホジッチ監督は齋藤学や乾貴士よりも、本田、久保、原口、浅野拓磨を重用しているのだ。
 
 言うまでもないが、それはハリルホジッチ監督にとっての戦術的な正解であって、絶対的な正解ではない。
 サイドを崩し、ボールを供給し、連係した攻撃を展開するためには、齋藤や乾以上に適任な存在は日本にいないだろう。彼らをサイドの支配者とし、2トップを編成してプレーする場合、(ゴールの仕事は主に2トップに求められるため)本田、久保、浅野にサイドのポジションはない。
 
 個人的には、齋藤や乾を使えるオプションを試し、選択肢にするべきだと思うが、今はハリルホジッチ監督が“頭領”であって、それに付き従うしかないのだ。
 
 その点、ハリルホジッチ監督は彼の論理で、着実に成果を上げてきた。そしてUAE戦は、その一環に過ぎない。
 
 長谷部誠がいないという切羽詰まった状況で、今野泰幸を抜擢したが、単純に長谷部の後釜には据えなかった。異なるフォーメーションで、そのキャラクターを引き出した。
 
 もし長谷部と同じかたちだったら、今野の"精力的過ぎる"動きは、ボランチとしては命取りになっていたかもしれない。実際にUAE戦では、インサイドハーフとしても釣り出されたシーンで危機を迎えていた(前半に川島永嗣がストップした場面など)。
 
 勝負の運は際どく、指呼の間にあるということか。絶賛されたタイ戦(2-0の勝利)は、相手の拙攻に助けられた感が強い。日本は綻びも見せたし、攻撃が淀みなく機能していたわけでもなかった。
 
 3月28日、今野、大迫勇也、高萩洋次郎が怪我で離脱したなかで迎えるタイ戦。ハリルジャパンは、再びその真価を問われる。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。