By Flazingo Photos

自身のステップアップのために新しい職を求めることはキャリア志向の強い人ならば当然のように行っている行動で、特に日本よりもアメリカではその傾向が強いと言われます。そんな職探しのうち、求人を見つけて履歴書を作成し、メールを作成して応募するという一連のプロセスをシステムで自動化することで数多くの職に応募してきた人物は、最終的に意外ともいえる結論にたどり着いたそうです。

I Built A Bot To Apply To Thousands Of Jobs At Once-Here’s What I Learned | Fast Company

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この取り組みを行ってみたのは、非営利団体の「米国州政府協議会」で広報・ウェブ担当副社長を務めるRobert Coombs氏です。現在の職務に満足しており、すぐに職を変える必要性は全く感じていないというCoombs氏ですが、あまりにも素晴らしいチームスタッフに恵まれたため、「本当に自分はここに必要なんだろうか?」と疑問を抱くようにすらなったとのこと。他人が聞くとうらやむほどの実に素晴らしい組織作りに成功したCoombs氏ですが、次第に次のステップとしてGoogleやSlack、Facebookなど名の通ったテック系企業で空きが出たポジションを探す取り組みを始めるに至ったそうです。

そんな考えが頭に浮かんですぐ、Coombs氏は次の2点に気づいたとのこと。

1.自分はこの分野のリーダー格の人間と競合する立場にいる。そのため、自分の履歴書が応募者リストの上部に置かれることはまずない

2.応募された書類のデータは全てロボット(コンピュータープログラム)が確認している

ここで使われている「ロボット」は「Applicant Tracking Systems (ATS:応募者追跡システム)」と呼ばれるもので、応募書類に書かれているキーワードやスキル、過去の雇用者、仕事の経験年数、卒業した学校などをもとに、応募者を自動的に振り分けるシステムです。自身のキャリアがこのロボットにはじかれる運命にあると感じたCoombs氏は、逆にこのロボットに立ち向かうシステムを自分で開発することにしたとのこと。



By marissa anderson

Coombs氏はソフトウェア開発者ではないのですが、さまざまな「パーツ」を組み上げて1つの自動化システムを作り上げることに関しては腕利きの人物。今回も工夫を凝らすことで、企業の採用担当者の連絡先を入手し、内容をカスタマイズしたメールに履歴書と自分を売り込むカバーレターを添付して送りつけるシステムを作り上げました。また、このシステムには、応募後にカバーレターや履歴書、そして自身のLinkedInページが閲覧されたのかをトラッキングする機能も組み込まれていたとのこと。

最初にこのシステムを稼働させると思わぬ事態に遭遇したとのこと。システムはなんと、Coombs氏が休憩にでている間にアメリカ中西部の企業1300社に履歴書を送りつけるという動作をしてしまったそうです。慌ててシステムを停止させたCoombs氏はシステムの改良に着手しました。その後、いくつかの失敗を経てCoombs氏は現行の「バージョン5.0」を完成させ、3か月間で538社に書類を送付しました。

このようにしてシステムを稼働させたCoombs氏でしたが、結果としてはそれほど芳しくない状況になっているとのこと。これを聞いて「やっぱりな」と思った人も多いと思われますが、Coombs氏の取り組みからは参考にできる結果も得られているとのことです。

このシステムでは、応募先に合わせて可能な限りメールの中身やカバーレター、履歴書の書き方を変えるという仕組みが取り入れられているとのこと。応募先の担当者に響きそうな内容を可能な限り追求するというのは、人間なら誰もが考えることですが、このシステムは人間と同じような調整を行うことが可能だというわけです。

しかしその結果わかったのが、このような違いは結果にほとんど影響を及ぼしていなかったという事実だったといいます。Coombs氏は中身を変えた2通りのカバーレターを使ったA/Bテストを実施して応募先の反応を見たのですが、結果は全く違いがなかったとのこと。以下の例文では、ごく一般的な書き方に沿った例(左:A)と、2段落目でいきなり「このカバーレターはロボットによって書かれています」と白状している例(右:B)の2つが示されています。



Coombs氏はここから、つまりカバーレターは実際には全くといって良いほど参考にされていないという結論に至っています。しかもこれは人間の反応だけではなく、先述のATS(応募者追跡システム)においても同じことがいえるそうです。以下のグラフでは、応募後の反応を「無視」「自動応答からの返信」「個人アドレスからのメール」「LinkedInページへの訪問」「不合格」という項目に分類した結果が示されているのですが、通常の方法(水色)とロボットであることを明らかにしている方法(青色)の差はごくわずかであるという、実は衝撃的な結果がわかります。



この結果について、Coombs氏の友人たちがその理由を教えてくれたそうです。その理由とは、採用担当者に面識があるかどうかによって選考を通過する確率が飛躍的に上がる、というものです。2014年時点のアメリカにおけるデータでは、30%から50%の人が知人の紹介を経由して仕事についているということが明らかにされています。

それを示すのが以下のグラフなのですが、左の「Applied」が示すように応募者のうちわずか6%が知人からの紹介だったのに対し、実際に採用された人「Hired」の29%が紹介を受けた人だったことがわかります。これはつまり、人からの紹介を経由した方が採用される確率が高くなることを示しています。



しかし、いくら紹介ベースのほうが採用にこぎ着ける確率が高いとはいえ、同時に企業はユニークなスキルを持った人材を常に探していることに間違いはないはず。そう考えたCoombs氏は、エクゼクティブクラスの人材トレーニングを行うAgile CareersのScott Uhrig氏に、熾烈な競争がある人材市場で、Coombs氏のような従来型ではない応募者が生き残る術について尋ねました。

するとUhrig氏の回答は、求人側が条件に合った応募者を見つけること自体はそれほど難しくない、というものでした。しかし同時に、「採用担当者は多くの場合、協力的とは限りません。彼らは常に、求めているターゲットのど真ん中にいる人だけを探しているものです」と答えたそうです。つまりこれは、多くの場合「買い手市場」である採用側の担当者は、メインとなるターゲットから外れた人に関心を向けることに時間を割いていないと言うことを意味します。

さらに、Uhrig氏は「人材を探している重役クラスのポジションのうち、80%から90%は実際には人材サイトに掲載されません。そのため、サイトなどに掲載されている公開求人の競争は非常に過酷なものになります。ATSはニーズに適合した候補者を見つけるために膨大な処理を行うことになりますが、本当に皆が欲しがるポジションの職というのは、公開されないものです」という事実を語ったそうです。

◆希望の仕事に効率的にたどり着くためには

これらの結果から、Coombs氏はベストの職を得るためのポイントを次の3つにまとめています。

1.重要なのは「応募のしかた」ではなく「誰と知りあい関係にあるか」である。でも誰も知らなくても気にする必要はない。

2.企業は求めているポジションに合う人材を最小限のリスクで見つけようとしている。型破りな人を探しているというわけではない。

3.応募した数が結果に結びつくとは必ずしも言えない。そして応募するチャンスに巡りあえなかった仕事に採用されることはない。

Coombs氏はいま、従来型の応募方法に見切りをつけると同時に職探しのペースを落とし、もとの非営利団体での仕事で週に3日勤務し、残りの日は面白い人に会っていろいろなことを吸収する時間に費やしているとのこと。そして願わくば、実際に会った人と関係を築くことで、新たなポジションをオファーされることに期待を寄せているそうです。