【徹底分析】ファイティングスピリットに溢れる個性派集団…B組最下位・タイを侮るなかれ

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 ここまで6試合で1分け5敗の最下位、得失点差は−12と、数字を見れば2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選のグループBで“最弱”であることに疑いの余地は無い。しかし、一つひとつの試合を見ると、決して対戦相手に圧倒されているわけではないのだ。勇敢に挑み、健闘しながら結果的に大差が付いてしまう。先日に行われたサウジアラビア代表戦はまさにそういう試合だった。

 近年、クラブレベルで著しい成長を見せるタイ代表がW杯のアジア最終予選に臨むのは、2002年の日韓大会以来。“格上”が揃う最終予選はチャレンジである。9月6日に行われた第2節、ホームでの日本代表戦は前半と後半にそれぞれ1得点を許して0−2で敗れたものの、ひとつ間違えれば終盤まで接戦にもつれ込んでもおかしくなかった。4連敗で迎えた第6節のオーストラリア代表戦ではPKで追い付かれて引き分けたが、強豪を相手に念願の勝ち点1を獲得した。

 タイ代表のレジェンドであるキャティサック・セーナームアン監督が率いるチームは、強靭な守備と多彩なアタッカーを組み合わせ、個性的で魅力的な集団を形成している。守備は全員で頑張るが、攻撃に転じれば今夏から北海道コンサドーレ札幌に加入予定の“タイのメッシ”ことFWチャナティップ・ソンクラシンを起点に、サイドから中央から果敢な仕掛けを見せる。

 昨年10月6日に行われたアウェイのUAE(アラブ首長国連邦)代表戦(第3節)では、2点を追う終盤にチャナティップの絶妙なスルーパスから途中出場のFWタナー・チャナブットが抜け出す形でゴールを決めると、同点弾に迫るシーンも作り出した。後半アディショナルタイムに突き放されて1−3と敗れたが、最後まで勝利の可能性を信じて戦うタイのチームスピリットが見られた試合だった。

 大一番のUAE代表戦に勝利して士気上がる日本代表だが、ここでホームに戻り、しかも“格下”と見られる相手に心の隙を見せれば、足下を救われる危険は大いに潜んでいる。FW本田圭佑(ミラン)が「思った以上に締めた方がいいと思います。思った以上に難しい試合になると思って入って、基本的なところから入るのが大事」と警鐘を鳴らしていたが、そのぐらいの気持ちで戦って、結果として大勝なら、それに越したことはない。いや、そんなイメージが観る側にもある時点で、危険信号なのかもしれない。

 日本代表に敗れた場合、タイ代表は他会場の結果に関係なく、最終予選敗退が決まる。気迫に溢れる戦いで日本代表を苦しめようとするはずだ。彼らにとって、左サイドの専門家で、FKの名手でもあるDFティーラトン・ブンマサンを出場停止で欠くことは痛手だが、推進力のあるドリブルを武器とするMFクリルクリット・サウィーカーンがおり、右サイドのDFトリスタン・ドゥーと交互に縦の仕掛けを敢行してくるはずだ。

 ホームでの日本代表戦は4バックだったが、前節のサウジアラビア代表戦で採用したチャナティップを2トップの下に配置する[3−4−1−2]で挑んでくるかもしれない。守備は機動力が高く、個の“デュエル”に強いが、組織としてはやや強固さには欠ける。ただ、ゴール前でDFタナブーン・ケサラットらセンターバックが粘り強く体を張り、抜群の身体能力を誇るGKカウィン・サムサッチャナンが1試合に2、3度はビッグセーブでチームを救う。

 そうした流れに日本代表が飲まれると、嫌な雰囲気の漂う中で守備の隙を積極的な仕掛けによって突かれて失点という事態も起こり得る。その意味で日本代表としてはアウェイの時と同じく、前半のうちに何とか先制点を決めてゲームの主導権を握り、逆にタイ代表の隙を突いて追加点を奪う展開に持っていきたい。タイ代表もそう簡単に最初のゴールをこじ開けさせてはくれないはずだが、セットプレーの守備に高さと一瞬の対応力の部分に不安があり、日本代表の狙いどころにはなる。

 タイ代表は日本代表からすれば“格下”だが“弱小”ではなく、ファイティングスピリットに溢れることから、間違いなく簡単な試合にはならない。その中でまずは確実に勝利を目指して隙を与えず隙を突く戦い方でゲームをコントロールし、1つずつ得点を重ねていく。結果はそこに付いてくるはずだ。

文=河治良幸