岐阜を率いる大木監督。甲府時代に見せたエンターテイメント性に溢れたサッカーを岐阜で再現することはできるだろうか。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 良いサッカーをしているが、勝てない――。
 
 今、これが最もあてはまるチームはFC岐阜と言えるかもしれない。
 
 今季、大木武監督が就任した岐阜は、ボール保持率を高めてショートパスの連続で敵陣を崩していく攻撃的なスタイルに挑んでいる。ほぼ毎試合、ボール支配率は6割から7割を越え、チャンスも数多く創出。決してボールを“回しているだけ”のチームではなく、観る者の多くが「良いサッカーをしている」と評価をするチームとなっている。実際に取材現場でも、岐阜のスタイルを賞賛する声は多いのだ。
 
 こうしたチームを作るにあたって、指揮官の理想を体現できるメンバーを集めることにも成功した。J2初年度ながらも攻撃サッカーで昨季のリーグを席巻したレノファ山口の司令塔・庄司悦大をはじめ、開幕スタメンを勝ち取りレギュラーとして活躍する大卒ルーキーの古橋匡悟と大本祐槻は、それぞれ興国高と野洲高の出身で、ボールを保持して展開する攻撃的なサッカーの経験値が高い選手である。この新卒選手2人に関しては「大木さんが監督になるから」と入団を決心した理由を語っているのだが、指揮官の志向するサッカーに魅力を感じ期待を寄せて岐阜に足を踏み入れた者は彼らだけではないだろう。
 
 そして、ここで名前を挙げた彼らはすでにチームの中核となっており、魅力あるサッカーを展開する担い手として存在感を際立たせている。
 
 しかし、冒頭に述べた通り、開幕後5試合を消化したものの岐阜は未だに勝利がない。初勝利を誓って臨んだ25日のアウェー・東京V戦も後半に浴びた1失点により敗戦を喫してしまった。
 
 試合を支配したのは間違いなく岐阜だった。「サイドで崩して中で合わせて、あとは触るだけの状態を、最後のやつが作るというのが理想」と大本が語るように攻撃時には同サイドに複数の選手が顔を出し、ショートパスの連続で前進する。そして、相手の目を寄せた中で最後は中央に配給しフィニッシュを狙いにいった。
 
 ただ、「最近は相手も自分たちのスタイルを読んでサイドを突破しにくい形を取ってくる」と大本が続けて語ったように、若干の窮屈さが見て取れたのも事実だ。そして68分、その窮屈な局面で福村貴幸が出した甘いくさびのパスがカットされ、カウンターからアラン・ピニェイロにネットを揺らされてしまう。その後も岐阜はチャンスを作るも、最終局面での精度の低さを露呈してしまい、0-1で敗戦となった。
 失点を含めた試合全体を振り返り「不用意なミスから失点が生まれてしまうサッカーでもある」と青木翼は言うが、両サイドバックも高い位置を取って前に重心をかけて攻撃的なサッカーをしている以上、この日のようなリスクがあるということはチームの中の共通認識として存在している。
 
 そういう意味で言えば、攻撃時のリスクマネジメントという部分がチームの大きな課題であることは間違いない。
 
「あの時間帯ではあのくさびのボールはいらなかったと思うし、もう少し自分たちでボールを握れば良かったというのはある」と庄司は失点シーンを振り返る。
 
 ただ、この発言で注目すべきは守備の枚数を割けるということを解決案としているのではなく、あくまでも“攻撃の進め方”で失点を減らそうと意図している点だ。
 
 パス&ムーブの連続の中で出し手へのパスがずれてしまいカウンターを浴びることもこの日は散見されたうえに、ややパス回しのスピード感を出しすぎているような場面もあった。ある種、型にハマりすぎているきらいがあったといのうが正直なところだ。
 
 崩す過程で、得意のサイド攻撃以外にゴールへ向かうアプローチ法を増やし、トレーニングの中で個人間の認識をすりあわせていくことが、まだまだ必要だろう。いずれにせよ、より攻撃の精度を高めていくことが失点の減少を呼び白星の可能性を上げることになる。
 
「やっていることは悪くないし方向性は間違っていないと思うので。全員がそういう意識で1つの方向にやれているで、ブレずにやっていくことが大切」(青木)
 
 攻撃のバリエーションを増やすことやゴール前の精度など、課題は選手たちも理解している。しかし、その中で“ボールを保持して攻撃的なサッカーをする”というベースの部分はブレずに存在する。新生・岐阜の挑戦はまだ始まったばかりだ。現状で消化した5試合が全て僅差であることを考えれば、開花の時はそう遠くないと思われる。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)