オランダ緑の党のYoutube動画より

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「トランプ旋風」が世界中に影響を及ぼす中、トランプ米大統領と似た傾向を持つ主張を展開して支持を伸ばしつつあるのが、「オルタ・ライト」(新右翼。オルトライトとも)と呼ばれる勢力だ。従前の右派よりも過激な主張を展開することから、「極右政党」と呼ばれることもある。

 イギリスのEU離脱を決定づけた英国独立党、ルペン父娘が二代に渡って党首に就くフランスの国民戦線、ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)、そしてオランダの自由党がその代表格である。彼らは移民排斥、EUからの離脱などの共通する主張を掲げ、欧州内でも連携している。

 今年は欧州で国政選挙が立て続けに行われるが、オランダ下院選挙がその第一陣ということで、オルタ・ライト勢力が欧州内でどこまで伸びるのかを占う試金石と言われてきた。これらの勢力が政権を奪うほど伸長すれば、現在EUが対応に苦慮しつつも大量に受け入れている、シリアなどからの難民の受け入れ政策が大幅に変更される。

 何百万人もの人びとが行き場を失うばかりでなく、EUの存続そのものすら危ぶまれるほど、歴史的な転換点となりうる。世界的注目を集めるに値する選挙だったのも当然といえよう。

◆議席を減らして勝利宣言、議席を増やして敗北宣言?

 今回のオランダ総選挙では、連立与党を主導する自由民主党が議席数を40から33に減らしたものの、同党のルッテ首相は「勝利宣言」。かたや、12議席から20議席にまで伸ばし、第五党から第二党になったにもかかわらず、自由党のウィルダース党首は敗北宣言を出した。どういうことなのだろうか。

 オランダはもともと、オルタ・ライト陣営に対する拒否反応はやや大きかった。与党の自由民主党なども選挙前から「選挙結果にかかわらず、自由党とは連立政権を組織しない」と宣言。28もの政党が完全比例代表制の下で議席を争う選挙制度もあり、そもそも一政党が過半数を制する結果にはなりにくいため、選挙前から「どことどこが組むのか」ということが話題になる。そして、伝統的には比較第1党が連立交渉や組閣の主導権を握る。

 その中で自由党は他の主要政党からソッポを向かれていたため、議席倍増以上で第1党に躍進することを勝利ラインとしていた彼らはその目標を達成できず、「敗北」を認めざるを得なかった。かたや自由民主党は議席を減らしたものの、比較第1党の座はかろうじて守り、連立政権交渉のイニシアチブを渡さずに済んだので、勝利と言っていい、ということなのだ。

◆伝統的大政党の凋落とオルタ・ライトの伸長、その対抗勢力としての「緑の党」

 大雑把に言うと、今回の結果は「連立与党が大幅に議席を減らし(連立パートナーの労働党は35議席から9議席に激減)、野党が議席数を伸ばした」ということになる。野党の中で最も躍進したのは、グリーンレフト(オランダ緑の党)だ。議席数を4から14へと増やして大きな存在感を示した。海外各主要紙も緑の党を「最大の勝利者」と伝えている。

https://www.youtube.com/watch?v=FWfXuMN30og&feature=youtu.be
(動画:「議席増に湧くオランダ緑の党支持者を前に、勝利宣言するイエッセ・クラーヴァ党首」)

 昨年のオーストリア大統領選挙でも、オルタ・ライト勢力(自由党)のノルベルト・ホーファー氏と緑の党のファン・デア・ベレン氏の決選投票となり、再投票までもつれ込んだ結果、ベレン氏が競り勝った。

 一般的傾向とまでは言えないが、オルタ・ライト勢力伸張の裏では「伝統的政党」と呼ばれる大政党の凋落がある。オーストリアの大統領選で、近年では初めて「伝統的二大政党の候補者がどちらとも決選投票に進めない」という珍事態になったのが最も分かりやすい例だろう。

 既存の政治に嫌気がさしたところに、過激ではあるが分かりやすいオルタ・ライト勢力のメッセージに多くの人が共感し、各国で支持を伸ばしてきた。もともと既存の大政党に対する不信感が根本にあるため、オルタ・ライトに対抗する選択肢として、緑の党に期待するようになっている。

◆注目されるフランス大統領選・国政選、ドイツ国政選

 その勢力はいまだ小さいとはいえ、比例代表制を基礎とする選挙制度を持つ国では、既存政党の凋落に伴って比較第1党が必ずしも過半数を握るのではなく、連立政権を組まざるを得ない状況になることが多い。そのため、小政党でも与党連立交渉のキャスティング・ボートを握ることができる。例えばオーストラリアではやはり緑の党が、上院でわずか9議席ながらキャスティング・ボートを握り、2011年には国会内でも反対の多かった炭素税の導入に成功した。

 とはいえ、すべての国で緑の党がオルタ・ライトに対する対抗勢力になっているというわけではない。フランスでは国民戦線が順調に支持を伸ばす一方、緑の党は弱小勢力から脱しきれていない。ドイツでは過去に連立政権の一角を占め、脱原発を主張し続けていたことから3.11後には大躍進したものの、その揺り戻しも考えられる。日本にも緑の党は存在し、幾度か国政選挙にチャレンジしているものの国会に議席は有しておらず、オルタ・ライト的政治勢力に対抗する力にはなっていない。スペインでの「ポデモス」など新たな左派や新興勢力の台頭も見られる。

 4月〜5月にはフランス大統領選挙、6月には同国会議員選挙、9月にはドイツ国会議員選挙が予定されている。オルタ・ライトがどれだけ支持を伸ばすかと同時に、対抗勢力としての緑の党がどれだけ健闘するかも、今後の欧州や世界を占う鍵となるだろう。

<文・写真/足立力也(コスタリカ研究者。著書に『丸腰国家〜軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略〜』など。コスタリカツアー(年1〜2回)では企画から通訳、ガイドも務める)>