非常識な大統領にアメリカ国民も怒っている Reuters/AFLO

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 2月中旬に行われた日米首脳会談で、安倍首相はトランプ大統領の別荘を訪問。27ホールを一緒にラウンドし、何度も食事をともにするなど信頼関係構築に努め、メディアもそれを好意的に報じた。しかし作家の落合信彦氏は、安倍首相のこういった態度に否定的だ。その理由を落合氏はこう説明する。

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 そもそも安倍はなぜ、あんな男に媚びへつらうのか。外交方針にまったく一貫性がなく、言っていることがコロコロ変わるトランプのご機嫌をうかがう必要などない。相手にしないほうがいい。

 トランプは当選直後、台湾総統の蔡英文と異例の電話会談をした。1979年の米台断交以来初めてのことで、中国が主張する「1つの中国」についても「なぜ縛られなければいけないのか」と語っていた。これは少なからず習近平を動揺させたはずだ。

 それからわずか2か月あまり。今度は習近平と電話会談し、「1つの中国については尊重する」と明言したのだ。習近平は大いに喜び、双方が自国訪問を招待した。この一例だけを見ても、トランプがまったく人間的に信用できない男であるのは明白だ。そんな人物と「信頼関係を築いた」と真剣に語る安倍は、愚かにもほどがある。

 トランプは1月下旬、オーストラリア首相のターンブルとも電話会談を行った。テーマはオーストラリア国内の難民をアメリカが受け入れるというオバマ政権時代の合意についてで、トランプは「爆弾テロ犯を輸出するつもりか」「バカな取引だ」と怒鳴りつけ、いきなり電話を切った。

 1時間を予定していた会談は、25分で終わった。同盟相手国の首脳に対し怒鳴りつけて電話を切るなど、常識では考えられない。しかし、その非常識なことを平気でやってのけるのがトランプなのだ。

 国際社会はもちろん、アメリカ国内のトランプ支持者も、そのうち彼を見放すだろう。トランプが目玉としている政策は、どれも実行不可能だからだ。象徴的なのが経済対策である。トランプは大企業を中心に大規模な減税を実行する方針を示した。その一方で、規制を大幅に緩和し、企業の設備投資を促すと主張している。

 これらは、かつてのレーガノミクスを真似たものだ。方向性としては間違っていない。しかし、トランプがレーガンと違うのは「非常識」であるということだ。あの男には、同じ政策をやろうと思っても実現不可能なのだ。

 レーガノミクスは、多くの企業がバックアップした。レーガンの人間性を国民が愛し、信頼していたからだ。だがトランプは違う。一部の旧態依然とした重厚長大企業のトップはトランプを頼っているようだが、いまのアメリカの成長を支えているのはグーグルやフェイスブック、アップルといった先端企業だ。それらの企業には、トランプが大統領令で入国禁止にした国々から来た優秀な社員が数多くいる。

 グーグル会長のエリック・シュミットは、トランプによる入国禁止の大統領令を「邪悪」と断じた。アップルCEOのティム・クックも、社員へのメールで、「(大統領令は)支持できない。移民なくして、今日のアップルは存在しない」と批判している。名だたる世界的企業がトランプに厳しい目を向けている中で、経済政策がうまくいくはずがないのだ。

 そもそも、アメリカ政府にはカネがない。日本円にして約2000兆円もの莫大な政府債務を負っている中で、成功する見込みのない減税などやったらどうなるか。「国債発行枠」という借金の上限がある中で、議会が上限引き上げをボイコットすれば、たちまち政府機関の手元資金は枯渇する。するとあっという間にトランプ政権は瓦解するだろう。

 どう考えても、トランプがレーガンのようにアメリカを再び輝かせるようなことはあり得ない。そんな男と向き合うなら、やはり安倍は「犬」になるのではなく必要に応じて「ケンカ」すべきなのだ。

※SAPIO2017年4月号