こんな時代だからこそ、つながりを求めたくなる。


 これからは「コミュニティ」の時代です。そのことはもう私の中では自明に近い確信があることなのですが、改めて「それはなぜか?」と聞かれると考えてしまいますし、毎回違うことを答えてしまいます。そのいずれもが答えとしては正しいのだとは思うのですが、ちょっと整理してみましょう。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

経済の成熟化による大企業の限界

 日本を含む先進国経済は少子高齢化・成熟化し、これ以上の成長は望めません。イノベーションによる部分的な成長はあるかもしれませんが、かつてのような護送船団的な高度成長はもうないでしょう。全体のパイは拡大せず、ピラミッド型の組織による単純な成長は行き詰まっています。大企業ほど、閉塞感は強いという状況です。

「滅私奉公さえしていれば、悪いようにはしないから」というような単純な終身雇用のモデルはとっくに崩壊していて、実力主義の名のもとに企業は責任を放棄しました。サラリーマンは保険として稼ぐチカラを身に付けたり、会社以外のコミュニティに属する必要が出てきているのではないでしょうか。

豊かさによる欲望の変化

 かといって日本が貧しくなっているわけではなく、むしろ豊かさは増していると思いますが、そんな中でもコミュニティのニーズは高まります。マズローの欲求段階説によれば、生理的欲求や安全欲求が満たされたあとには社会的欲求、承認欲求、さらには自己実現欲求が表出してきますから、欲求が会社だけでは満たせなくなるんです。

 若くて自己実現欲求が高いと「意識高い系」なんてバカにされたりしますが、生まれたときから食べていく心配がなくて人とつながるのが当たり前という世代は、上位の欲求が強くなって当然です。生きるために仕事をするだけでは満足できず、何のために生きるのかを追究することになる。そこにコミュニティがハマるわけです。

グローバル化と都市部への人口集中

 経済のグローバル化や都市部への人口集中も、コミュニティの必要性を高めていくでしょう。交通手段や通信手段の発達により移動のコストが下がり、若者は田舎を出て都市部へ、さらには海外に仕事を求めて自由に移動するようになっています。

 過疎化する地方のコミュニティは担い手が減って疲弊しますし、家族や地元から離れた人の方は孤独になるわけです。そうすると、孤独な人たちがつながるための、新しいコミュニティが重要になると。生まれ育った田舎で仕事をしていれば、新たなコミュニティは必要ありませんが、人が動けばコミュニティは分断され、新しいつながりが必要となるわけです。

インターネットとSNS

 近年におけるコミュニティに関する最大の変化は、言うまでもなく、インターネット・クラウドによって情報のコストが限りなくゼロに近づいたことでしょう。かつてはリアルで付き合うことができる人数には限界がありましたが、新しいテクノロジーの利用によって数千人・数万人とつながることも、理論上は可能になりました。

 そのことは、電子メールと手紙における手間や同時に拡散できる人数の違いを考えても理解できると思いますが、特にFacebookやLINEなどのSNSによって引き起こされた人間関係の「革命」は、恐らく我々のイメージをはるかに超えるものです。世界が変わった、と言っても過言ではないと私は考えています。

 ユルく広く、距離も気にせず、多くの人とつながることが可能になった一方で、「SNS疲れ」に象徴されるように、それらの「友達」との距離感に悩む人も増えました。ネット上には既に多数の「コミュニティ」が存在しており、心地良い距離感を持ちながらそれらと付き合うスキルを、若い世代は身に付けつつあるように思います。

購買行動の変化

 インターネットを通じて流れる莫大な、あふれる情報と付き合うことで、消費者は確実に賢くなっています。マスコミへの耐性を身に付けCMを疑い、大企業が流す情報を信じなくなりつつあります。まだまだリテラシーが低い層も多いとはいえ、流れとしては「知らない人からモノを買わない」ということになりつつあります。

 Facebookで友人(本当の友達)が勧めていた本を思わずAmazonでポチっと買ってしまった、という経験は誰しもあるでしょう。2〜3名の友人が勧めているものは良いものだ、と感じてしまうのではないでしょうか。我々は賢いと自分では思っているのですが、実は関係性のある人からの情報には弱いものなのです。

3つの革命により、コミュニティの時代が来る

 などとごちゃごちゃ考えていたら、このことを非常にコンパクトにまとめた本と出会いました。『権力の終焉』(モイセス・ナイム著、日経BP社)です。権力に影響を与えている3つの革命があって、それは「More(豊かさ)革命」「Mobility(移動)革命」「Mentality(意識)革命」である、と。面白いので、是非読んでみてくださいね。

 とはいえ、なぜここまで私がコミュニティが伸びると確信しているのかは、言ってしまうと私自身もよく分かりません。ひとことで言えば、「どう考えてもコミュニティは伸びる」と「感じている」というのが正直なところです。あらゆる流れがコミュニティが伸びる方向に向かっているように感じるんです。

 リアルの世界で疲弊した地域社会などの、本来の意味での「コミュニティ」がインターネットなどのバーチャルなチカラを使うようになり、バーチャルのコミュニティに疲れた若者がリアルのコミュニティに流れる。リアルとバーチャルの融合が起こる。誰もがコミュニティを持つようになり、それが相互につながる。

 そういう大きなパラダイムシフトが、ここ数年で起こるように感じています。理由はともかく、私には確信に近い感覚があり、この大きな流れに人生を賭けてみてもよいとさえ思っているんですよ。JBpressへの寄稿は今回が最終回です。今までありがとうございました!

 それでは、また。人生計画で夢を目標に変えて実現する、シナジーブレインの安田修でした。

筆者:安田 修