ドライバーの長時間労働が問題となる中、ヤマトは宅配料金を値上げする方針を打ち出したが…

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宅配便最大手のヤマト運輸が、今秋にも個人向けの宅配便の基本料金を値上げする方針を固めた。消費増税時を除けば、実に27年ぶりの全面値上げとなる。

ヤマトが値上げする理由は、ネット通販の“ガリバー企業”、アマゾンにある。

アマゾンは、ヤマトにとっての最大荷主で、国土交通省の調べによれば、ヤマトが扱う荷物の個数は年間約17億3千万個(2015年度)。そのうち、「アマゾンの荷物は約2億5千万個。これは業界5位の福山通運が扱う1年間の荷物(約1億2千万個)の2倍を超える数字です」(物流業界紙記者)。

大量のアマゾンの荷物を一手に引き受けるヤマトのドライバーは毎日、フル稼働だ。同社の社員ドライバー(28歳)がこう明かす。

「会社の始業は朝8時ですが、そんな時間に出勤していては荷物をさばき切れません。7時過ぎには会社に出て、自分の荷物を積み込み、8時過ぎには営業所を出発。荷台に積む荷物の3〜4割がアマゾンの商品ですが、配達先に到着しても2〜3割が不在で燃料を浪費するだけの“ムダ走り”が増え、再配達が必要になります。

時間指定が12時〜14時に集中すると昼食休憩は取れず、20時〜21時に集中すると営業所に戻るのは21時過ぎになり、タイムカードを打ってから“無給”の事務作業を強いられます。1ヵ月の所定労働時間を超えると会社的にヤバいらしく、繁忙期は『タイムカードを押してから残務処理をやってくれ』と上司から言われるんです。

体は相当きついですね。体調を崩しても、他のドライバーに迷惑が掛かるので休めませんし…。月収は28万円ですが、全然わりに合っていません。扱う荷物が多い日には、ついお客さんが不在でも玄関前に荷物を置いていってしまいます」

アマゾンの荷物を運ぶ作業は精神的にもツラい。

「アマゾンの荷物は一個250円程度で契約しています。他の荷物に比べれば、半額以下の激安料金。それなのに再配達は多いわ、時間指定でルート計画は狂うわで、運べば運ぶほど『赤字になってるんじゃ…?』と徒労感が募ります。

できることなら、会社にはアマゾンとの取引きをやめてほしいと思う。あのロゴを見るだけで吐き気がすることもあるので…」

こうしたヤマトのドライバーの過酷な現状はTVや新聞でさんざん報道されているところだ。そのためか、日経新聞が実施した読者アンケート『ヤマトの値上げ、賛成ですか?』の回答結果を見ると、実に8割の人が『賛成』の意向を示している。

さらに、前出のヤマトのドライバーはこう話す。

「時間指定で荷物の到着が遅れると、以前は『遅い!』『それでもプロか!?』なんて怒られることが多かったのですが、最近は『御苦労さま』『頑張ってね』と温かい言葉を掛けてくれるお客さんが増えています。仕事が大変なのは変わらないけど、ありがたいですね」

この変化は一体…? 物流ジャーナリストの森田富士夫氏がこう話す。

「メディアの報道合戦によって、『ヤマトのドライバーがかわいそう、彼らを過酷な状況に追い込んでいる元凶はアマゾン』との同情論が高まり、“値上げやむなし”の世論が形成されているのが現状です」

★本日発売の『週刊プレイボーイ』15号「ヤマトvsアマゾン これが交渉の内幕だ!」では、ヤマトが仕掛けた値上げ作戦のウラ側を詳報。そちらもお読みください。

(取材・文/週プレNEWS編集部)