「Thinkstock」より

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 中国のインターネット市場が熱い。とりわけ決済アプリやネット融資といったフィンテック市場が急激に拡大している。

 中国国内でのインターネット利用といえば、「ネット検閲」が当たり前というイメージが強い。実際、ネットの黎明期から政府が国内のインターネットを統制しようとする基本方針は不変である。そのため、ネット利用に関する法制度や組織が早くから整備されてきた。

 1996年には、ネット接続ルールを明記した「中国コンピュータネットワークの国際接続に関する暫定管理規定(暫定管理規定)」が制定され、法整備基盤が確立する。また、98年には、現在の情報産業省に当たる信息産業部が設立され、従来5つの組織に分かれていたネット担当部署がひとつにまとまることで、ネットの普及と統制がより効率性を増すことになる。

 こうした厳格な統制にもかかわらず、中国国民のネットによるコミュニケーションは盛んである。メッセージアプリであるWeChat(微信)やインスタントメッセンジャーであるQQ、さらにはネット掲示板やミニブログなどさまざまなツールを活用したコミュニケーションが取られている。

 だが、こうしたコミュニケーションでの自由度は極めて限定的である。たとえば、ネット掲示板でひとたびNGワードと思われることばを書き込むと、政府による検閲が即座に作動し、書き込んだコメントが消去される。

 ただその際、何がNGワードなのか基準が明確になっていない。上述の暫定管理規定には、「憲法の基本原則に反する情報」に始まり、ネット書き込みに関する9つの禁止事項が規定され法制度化されているが、実際は書き込みのケース毎に判断されるため、一定の基準はあってないに等しいのである。

 このように、政府による厳格なネット検閲下にあっても、中国のネットユーザはこれが当たり前ととらえて、日常変わりなく利用している。最近では、決済アプリやネット融資の分野でも利用者が増え、急成長している。

 中国では商慣習の違いからデビットカードが一般的に利用され、元来、クレジットカードはあまり浸透しなかった。だが、アリペイ(支付宝)の登場により、決済アプリが急激に普及する。アリペイは、ほとんどのサービスで手数料を無料とする。

 そのうえ、ネットバンキングでの瞬間チャージが可能で、預けたお金には年率5%程度の利息がつく。さらに、ネット上での商品購入におけるトラブルに対し、十分な消費者保護が採られている。このアリペイの牽引により、16年には四半期におけるモバイル決済額が9兆元(約150兆円)に達する。市場は前年同期の約2倍で成長している。

 中国では拡大するネット市場で、政府の統制方針から逸脱する外資のオンラインサービスを排除して、コントロールが容易なローカル企業をインキュベートする傾向にある。内需拡大で奏効するこの独自路線は、今後の海外展開に向けてどのように変貌するのであろうか。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)