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伊藤悠さんによるコミカライズ版も知られる「皇国の守護者」など、数々の架空戦記(仮想戦記)小説などで知られる作家の佐藤大輔さんが虚血性心疾患のため、2017年3月22日に亡くなりました。52歳でした。

訃報:佐藤大輔さん52歳=作家 - 毎日新聞

http://mainichi.jp/articles/20170327/k00/00m/040/011000c



小説家の佐藤大輔さん死去 代表作に「皇国の守護者」:朝日新聞デジタル

http://www.asahi.com/articles/ASK3V6F3SK3VUTFL005.html

佐藤さんはもともとボードゲームのデザイナーをしていましたが、1990年代に入って作家に転身し、1991年8月の「逆転・太平洋戦史」でデビュー。

逆転・太平洋戦史―もしも…なら、連合艦隊は!? (天山ブックス) | 佐藤 大輔 |本 | 通販 | Amazon



仮想戦記では「もし真珠湾奇襲が失敗していたら」「もしミッドウェー作戦が成功していたら」など、特定の条件をつけることで史実とは異なった新しい歴史を紡いでいきますが、佐藤さんは描きたい時代よりもかなり前、たとえば太平洋戦争の仮想戦記であっても日露戦争の時点から細かい改変を積み重ねることで、まったく異なる歴史を作り上げるという手法を得意としていました。

そうやって世界を作り上げていくためか、作品はいずれも大きな展開を見せることになり読者を引き込むのですが、作者自身ももてあましてしまうのか、あるいは新たなアイデアが次々と沸いてきてしまってそちらに着手するからなのか、まだ終わりが見えないうちに刊行がストップしてしまうシリーズが多数生まれることになりました。

太平洋戦争終盤・1944年に行われたレイテ沖海戦で日本が大戦果を挙げたことで歴史が変わりソ連が北海道に侵攻、北海道に国境線が生まれて日本と「北日本」に分かれた世界での、史実とは違う日本の戦後を描いた「征途」シリーズは数少ない完結作です。

征途〈1〉衰亡の国 (トクマ・ノベルズ) | 佐藤 大輔 |本 | 通販 | Amazon



日本とドイツによって第三次世界大戦が行われる世界を描いた「レッドサンブラッククロス」は1993年から1996年にかけて徳間文庫で7冊が刊行されたのち、1999年に中央公論新社のC NOVELSレーベルで続編「レッドサンブラッククロス 死線の太平洋」上下巻が刊行され、さらに続編として「レッドサンブラッククロス パナマ侵攻」が刊行されました。佐藤さんの作品としては、もっとも広く展開された代表作ですが、2000年6月に2巻が刊行されたのを最後に本編はストップしていました。

レッドサンブラッククロス パナマ侵攻〈2〉 (C・NOVELS) | 佐藤 大輔 |本 | 通販 | Amazon



同じく代表作として知られるのが、剣牙虎・千早を連れた「皇国」軍人・新城直衛の「帝国」との戦いを描く「皇国の守護者」。単なる仮想戦記とは異なり、「剣牙虎」や「龍」のように現実には存在しない生き物や「導術」と呼ばれるテレパシーのような能力が存在するなど、ファンタジー要素が盛り込まれていますが、佐藤さんらしい戦記でもあり、人気を博しました。1998年から2005年にかけて9巻まで刊行され、イラストを1巻から7巻は塩山紀生さん、8巻は平野耕太さん、9巻は獅子猿さんが担当。

皇国の守護者1 - 反逆の戦場 (中公文庫) | 佐藤 大輔 |本 | 通販 | Amazon



2004年からは伊藤悠さんによるコミカライズ版がヤングジャンプに連載され、単行本が5冊刊行されましたが、原作と同様に未完のまま2007年に終了しています。ちなみに、新城が小説版イラストの偉丈夫とはまるで別人のように描かれていますが、本編描写からすると伊藤さんによる絵の方がより新城らしい姿だといえます。

皇国の守護者 5 (5) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ) | 佐藤 大輔, 伊藤 悠 |本 | 通販 | Amazon



近年の作品としては、マンガ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の原作者としても知られています。「月刊ドラゴンエイジ」連載の人気作品で、2010年夏には単行本4巻までの内容でテレビアニメ化もされていますが、本編は休載がちで、2011年5月に単行本7巻が刊行されたのを最後に長期の休みに入っていました。

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その名前から、古代ローマの政治家・大カトーに引っかけて「大サトー」ともファンに呼ばれていた佐藤さん。筆が遅いことでも知られ、ファンはシリーズの新刊が長く出なくても待ち続けていましたが、とうとう、新たな作品が出ることは夢となってしまいました。もし佐藤さんが「レッドサンブラッククロス」や「皇国の守護者」の続きを執筆していたとしたら、一体、物語にはどんな結末が訪れていたのでしょうか。