WBCが無念の準決勝敗退に終わっただけに、なおさら勝利の余韻が深いのだろうか。3月23日のUAE戦に勝利した日本代表が、称賛に包まれているように感じる。推測気味に書くのは、試合翌日もまだUAEにいたからだ。僕らの帰国は基本的に、選手よりも半日以上遅くなる。

 UAE戦の日本はスキがなかった。前半と後半に一度ずつ決定機を許したものの、相手の長所を封じたという意味では申し分ない。そのうえで、自分たちの強みも発揮することができていた。一人ひとりの選手が、タスクを果たしていた。

 日本サッカーが特徴とする連動性を、使い慣れていない4−3−3のシステムで生み出すのは難しかったかもしれない。それでも、個々の奮闘が距離感を縮めるための時間を稼ぎ、互いにサポートできる関係を作り出していた。

 最前線でボールを収め続けた大迫勇也は、1トップでも3トップでもスタメンにふさわしいことを証明した。彼自身は得点をあげられなかったが、相手守備陣には絶えずストレスをかけることができていた。

 インサイドハーフのポジションでボランチとサイドハーフの役割をこなした今野泰幸は、ピッチのいたるところで連携のつなぎ役となっていた。司令塔のオマル・アブドゥルラフマンを長友佑都と挟み込み、センターバックが跳ね返したボールの回収に走り、二度追い、三度追いのプレスで相手のパスコースを限定した。

 ディフェンスだけでも貢献度はかなりのものがあるのに、攻撃にも関わっていくのだからUAE戦の今野はスーパーだった。51分の追加点はとても、とても価値のあるものだったが、実は前半から相手ゴール前へ飛び出している。同じインサイドハーフでもより攻撃的な香川真司を差し置いて、高い位置を取ることもしばしばだった。2度のW杯に出場した経験と、複数のポジションをこなすポリバレントな資質が、絶妙なバランスを生み出していたのだろう。〈不規則のなかの規則性〉とも言うべき神出鬼没さで、この日の彼はピッチの支配者となった。

 1得点1アシストを記録した久保裕也、スタメンで結果を残した今野と川島永嗣のそばで、本田圭佑がシビアな立場に追いやられている。大迫のケガで急きょ投入された岡崎慎司も、この日は出場機会のなかった清武弘嗣も、最終予選の前半は不動のスタメンだった選手たちだ。交代カードにさえ加われなかった宇佐美貴史も、ハリルホジッチ監督が早くから期待を寄せてきたひとりである。

 UAE戦で歓喜の中心から外れたのは、彼らだけではない。ロシアW杯を射程とするタレントでは、乾貴士、武藤嘉紀、金崎夢生、川又堅碁、柴崎岳、遠藤航、大島僚太らが今回のメンバーから外れている。

 UAE戦の勝利は、そうした選手たちを奮い立たせるものでもあった。日本代表に定位置を約束された選手はいないことを、ハリルホジッチ監督はその選手起用で示したのである。

 スタメンに選ばれなかった選手も、メンバー入りを逃した選手も、クラブで結果を残せばチャンスをつかむことはできる。逆に言えば、クラブで準備を整えていなければ、代表のピッチに立つのは難しい。「正しい競争原理」が働いている現在は、ピッチの内外を問わず閉塞感と無縁だ。一時は靄がかかっていたチームは、力強い前進を始めたように映る。