――鍼灸と禁煙にはどのような関係があるのですか?

 武本 最初にお話させていただきますが、ハリを打つとタバコが不味く感じるツボなんてありません! しかしながら、アメリカでは麻薬治療の代替療法として、一部の医療機関が鍼灸治療を取り入れています。これは耳鍼を用いた留置鍼法なんですが、ただ鍼治療するだけでなく、同時に心のケアもガッツリ行われています。
 坂本龍一さんは、アメリカでご自身がハリ治療で禁煙に成功したとの体験談を紹介されておられますが、この分野での代替療法に関しては、日本よりもアメリカの方が先んじている感は否めませんね。タケモト式禁煙療法は、カウンセリングによる「心理依存」のケアと、鍼灸のツボ療法を応用した、自分でできる禁断症状対策、認知行動療法を取り入れた「薬物依存」のケア、これらを組み合わせた新しい禁煙法です。

 ――禁煙しても、酒席で喫煙してしまうのですが…。

 武本 皆さん、そうおっしゃいますね。これは飲酒によって、理性を司る前頭葉エリアの働きが落ちてしまうことが原因です。喫煙に対するブレーキが効かなくなり誘惑に負けてしまうんです。
 もっともこれは一般的な脳の仕組みに対する説明で、実際に酒席でタバコの罠にハマらないためには「なぜ酒席でタバコがおいしく感じるのか?」という仕組みを理解しないと、ずっとこのリスクが付きまとうことになります。
 そもそも酒席でタバコがおいしく感じる、本数が増える背景は、実は脳からのシグナルが最大の原因なのです。誌面の都合でここでは割愛させていただきますが、本書で詳しく書かせていただいています。ぜひ、ご一読ください。

 ――禁煙しても、しばらくするとまた吸ってしまいます。持続させるためには、どうしたらいいですか?

 武本 禁煙に失敗した方から徹底的にヒアリングを行ったのですが、挫折する一番の理由は「忘れてしまう」ことです。そもそも禁煙した動機を忘れる、もしくは薄れてしまうのです。また、禁煙が案外簡単だったので、その後、油断してしまう方も多くいます。この対策としては「なぜ禁煙をしたのか?」を忘れないための仕掛けを講じる必要があります。
 今のうちに「誘惑された未来のあなたへ」と題したメッセージを、将来の自分に宛てて用意しておくとよいでしょう。これが一番のお守りになります。少々手間でも書き残すことが重要です。
 ぜひ、お試しください。
(聞き手/程原ケン)

武本秀治(たけもと・ひではる)
1965年生まれ。鍼灸師。元ヘビースモーカーだったが禁煙成功した体験などを活かし、国内初で唯一の禁煙を専門にした「きんえん堂鍼灸院」を東京・上野で開業。