成長著しい東南アジアの雄“タイ代表”、日本代表が警戒すべき選手は?

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 28日に行われるワールドカップアジア最終予選で、日本はホームにタイを迎える。アウェイでの対戦では2−0と完勝しているが、成長著しい東南アジアの雄を侮るのは危険だ。

 タイはここまで1分け5敗でグループ最下位に沈む。23日のサウジアラビア戦も、ホームで0−3の敗戦に終わった。アジアの上位国を相手に苦戦を強いられているのは確かだが、ホームでのオーストラリア戦では2−2のドローで勝ち点を手にするなどポテンシャルは秘めている。

 とはいえ、日本にとってはタイに対して「嫌なイメージ」はあまりないのが正直なところだろう。アウェイでの対戦も最終予選としては比較的、難しくない試合だったといえる。タイの持ち味である細かいパス回しからの攻撃も、日本戦では影を潜めていた。

 今年7月からの北海道コンサドーレ札幌入りが決まっているチャナティップ・ソングラシンは、「組織的でスピードのある日本より、オーストラリアのようなチームのほうが自分たちの持ち味が出しやすい」と語る。タイのなかには、日本に対する苦手意識が少なからずあるようだ。

 だが、チャナティップは実際に日本と対戦してみて「思ったほど差はないと感じた部分もある」とも語っており、前回とは違う姿を見せてくる可能性もある。タイ代表の主力の大半が所属するムアントン・ユナイテッドがACLで鹿島アントラーズを下したことも、日本への苦手意識を薄れさせたかもしれない。

 日本がもっとも警戒を要するのは、やはりチャナティップ。自身初の出場となったACLでも初戦のブリスベン・ロアー戦、続く鹿島戦と2試合連続でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるなど、その能力がアジアトップレベルの域にあることを証明している。ファーストタッチで一瞬で前を向き、素早く的確な判断で行われるプレーは攻撃の推進力となり、鹿島も苦しめた。

 また、昨年末のスズキカップ(東南アジア選手権)からスタメンに定着した大型FWシロー・チャットーンも要注意。タイ人らしからぬ堂々たる体躯で前線の起点となり、パワフルでスピード感溢れるドリブル突破を見せる。昨年の日本戦では4−2−3−1で戦っていたタイだが、11月のオーストラリア戦から3−5−2を採用している。新戦力のシローとエースのティーラシン・デーンダーで組む2トップはタイの新たな武器だ。

 一方で、左サイドのティーラトン・ブンマタンが累積警告のため出場できないのは日本にとっては朗報。ACLの鹿島戦でも先制の直接フリーキックを決めたアジア最高レベルの左足がないのは大きい。また、前回の日本戦で出場停止だったボランチのサーラット・ユーイェンも怪我で長期離脱中。日本戦でタイらしさを出せなかった要因のひとつだっただけに、彼の不在も特筆すべき点だ。

 昨年10月に崩御したプミポン国王の喪に服すため、タイはユニフォームの色を青から黒へと変えた。見た目の印象が大きく変化したが、今のタイは良くも悪くも、サッカーも試合ごとに変化しやすい。成長期の真っ只中にある新興勢力に足元をすくわれないよう、細心の注意が必要だ。

●協力=アジアサッカー研究所
●文=本多辰成(ほんだ たつなり)
1979年、静岡県浜松市出身。出版社勤務後、日本語教師としてタイへ渡る。その後、タイをベースにフリーランスライターとして活動。サッカーをはじめとした東南アジアのスポーツを中心に取材、執筆を行っている。東南アジア情報サイトやサッカーメディアなどにタイを中心とした東南アジア関連の記事を寄稿している。