牛で畑を耕す北朝鮮の農民

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北朝鮮は連日、各メディアで興南(フンナム)肥料連合企業所(興南肥料工場)が多くの肥料を生産していると宣伝している。

朝鮮中央通信は先月26日、朴奉珠(パクポンジュ)総理が「最高指導者金正恩同志の今年の新年の辞で示された戦闘的課業を高く奉じ、自力自強の威力で5カ年戦略高地を占領するための全民総突撃戦を力強く繰り広げている興南肥料連合企業所、2・8ビナロン連合企業所、龍城(リョンソン)機械連合企業所の生産実態と生産能力拡張の状況を視察した」と報じている。

また、昨年11月27日の朝鮮中央通信も、朴総理が興南肥料工場を現地了解したと報じるなど、肥料生産に力を入れていると強調している。

「信じる方がバカ」

ところが、農民のもとには肝心の肥料がほとんど届いていない。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK情報筋によると、市場では様々な肥料が売られるようになったが、興南肥料工場で製造された肥料は見かけないとし、「興南肥料は新聞だけで見られる『絵に描いた餅』だ」と述べた。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋も、「メディアが興南肥料工場の宣伝を繰り返しているので、もしかして肥料が安く手に入るのではないだろうかと期待していたが、見かけもしないと地域住民は口々に非難している」と話す。

情報筋によると、工場のお膝元の咸興(ハムン)市の興南区域ですら、興南肥料工場製の肥料を見かけることはあまりない。情報筋は、肥料商人と興南肥料工場の労働者の話として、興南肥料工場で生産されている肥料のほとんどが軍隊に送られていると述べた。地域住民は地元産の肥料に対する期待などとっくの昔に捨て去ったという。

ところが、労働新聞の記事を真に受けて、肥料の買い付けに来た商人がいた。

情報筋によると、この商人は、地元の両江道の市場で、リンやカリ肥料が売れているのを見て、労働新聞で報じられている興南肥料工場で肥料を直接買い付けて、地元で売れば儲かるだろうと見込み、遠路はるばるやってきたというのだ。

地域住民はそんな彼を「世間知らず」「頭がおかしい」「携帯電話で確認すべきだった」「まだ労働新聞を信じるやつがいるのか」などと散々バカにしたとのことだ。

興南肥料工場は、朝鮮が日本の植民地支配下にあった1930年、日本窒素肥料(現チッソ)が建設したアジア最大の肥料工場が前身だ。当時は年間50万トン近い生産量を誇ったが、老朽化が著しく、リン、無煙炭、電力など原材料も不足し、生産は順調に行われていない。

1990年代前半、非常に優秀な経済官僚で金日成主席の信任が厚かった金達玄(キム・ダリョン)副総理が、工場設備の改善で生産性を高めようとしたが、金正日総書記の不興を買い、失脚し、自殺に追い込まれた。金正恩政権に入ってからも生産量を倍増させる計画が立てられたが、うまくいっていないようだ。

専門家によると、北朝鮮の肥料消費量は年間155万トンだが、実際の生産量は50万トンにとどまっている。ちなみに韓国の農業畜産新聞によると、韓国の2016年の年間肥料生産量は518万トンだ。北朝鮮の人口は韓国の半分なのに、肥料生産量は10分の1に過ぎない。

足りない肥料は中国から輸入している。昨年の北朝鮮の肥料輸入量は15万8300トンだった。

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