孤独であることは自由であること…幸福に向かって軽やかに歩んでいく主人公を演じたイザベル・ユペール
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 第66回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した、フランスの大女優イザベル・ユペール主演映画『未来よ こんにちは』でメガホンを取ったミア・ハンセン=ラヴ監督がインタビューに応じ、作家性の強い監督が置かれている厳しい現実について語った。

 本作は、夫から突然離婚を告げられた上に母も他界、仕事も時代の波に乗り切れず、気付いたら孤独になってしまっていた哲学教師のナタリー(イザベル)が、想定外の出来事に遭遇しながらも、軽やかに未来へと突き進んでいく姿を描いたヒューマンドラマ。

 ナタリーのモデルは実際に哲学教師であるミア監督の母親で、長年温めていた作品だったそう。「年齢を重ねていくことに対するちょっとした恐れだとか、困難な状況というのは当然出てきますが、それは少なからず私の問題でもあるので、そういうことを映画に撮りたいと思っていました」。しかし、これまでは「なかなか勇気が出なかった」ことから撮影に踏み出せず、監督として経験を積んでいくうちに「今なら私も十分に力があるし、勇気もある」と思えたタイミングで念願をかなえることになったと振り返る。

 惜しくも受賞とはならなかったものの、第89回アカデミー賞の主演女優賞にノミネート(『エル(原題) / Elle』)されたことも記憶に新しいイザベル。本作は彼女を想定して脚本を書いたとあって、その魅力が存分に引き出された作品となっている。これまでどちらかといえばシリアスで危うい役が多かったイザベルだが、本作ではしなやかなヒロインを好演。監督も「軽やかさやユーモアの感覚、非常に気品あふれるところがあると思うんですが、彼女はいわゆる喜劇というかコメディーでも才能を発揮する人なんです」とイザベル自身の優しく、軽やかな素質に注目していて、演出の際にもそれをイザベルに伝えたという。「あなたの非常に瑞々しくて無邪気なところを描きたいと思っていると最初にイザベルに話しました。この映画では厳しさや強さとは違う面を出せば良いんだなということをすぐにわかってくれました」。

 長編2作目の『あの夏の子供たち』で第62回カンヌ国際映画祭のある視点部門審査員特別賞、第3作の『グッバイ・ファーストラブ』はロカルノ国際映画祭で特別賞に輝き、本作ではベルリン国際映画祭で監督賞にあたる銀熊賞を獲得するなど、順調にキャリアを積み重ね、“エリック・ロメールの後継者”とも称されるミア監督だが、前作『EDEN/エデン』では製作資金がなかなか集まらず、完成まで長い時間を要した。本作が高い評価を受けたことで、そうした製作面で変化はあったのだろうか。

 その問いに対し「期待を裏切るようでごめんなさい」と切り出したミア監督は、フランスなどさまざまな国で本作がヒットしたことを説明しつつも、「私は作家性の強い映画を撮っているので、ヒットといってもどうしても限られた範囲でのヒットということになります」と冷静だ。「(受賞によって)事態がすぐに改善するというわけではなくて……。もちろん銀熊賞は皆さんからお祝いしてもらいましたし、非常に栄誉だと思っていますが、やはり作家映画の厳しさというのはあります」と今もなお次回作の資金調達に奔走していることを明かした。

 その次回作『マヤ(原題) / Maya』はかなり完成に近づいていて、4分の3がインドで撮影されているという。『愛、アムール』などのジャン=ルイ・トランティニャンの孫にあたるロマン・コリンカ(本作にもナタリーの愛弟子ファビアン役で出演)が主演を務め、シリアで人質になったことでトラウマを負ったジャーナリストが、ある女性とインドで出会い、家を建てていくうちに自分をまた再構築していく……という内容になるそう。現在はフランスとインドを往復しながら朝から晩までカレーを食べるような生活をしており、今回の公開にあわせて来日できなかったことを残念がっていた。(編集部・吉田唯)

映画『未来よ こんにちは』は公開中