月13万 夫の浪費を嘆く「妻の浪費」こそヤバかった

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毎月6.5万円の赤字家計は、なぜ11万円の黒字家計に転じたのか? 夫婦間の熾烈な浪費合戦を解消するため、まず妻がはじめたこととは――。

■家計は火の車 元凶は夫と思いきや……

●家族構成(3人家族)
会社員の夫(42)/妻Mさん44歳(パート)/子供4歳(幼稚園)
●手取り収入(月) 49万1000円(夫)、4万1000円(妻)計53万2000円
●ボーナス 年間200万円
●貯蓄 260万円

「夫がお金を使いすぎるせいで、お金が貯まりません」

パート主婦のMさん(44)は、会社員の夫(42)が浪費家で困っていると、おひとりで相談に来ました。夫には毎月6万円の小遣いを渡しているそうですが、それでは足りないようで、クレジットカードをよく利用するのだそうです。

そして、その支払いは家計から。利用明細も見せてもらえず、営業のための交際費や飲食などの経費のような支出が主だろうと想像はしているものの、実際のクレジットカードの使い道については、わからないのだそうです。

「毎月クレジットカードの支払い分だけ赤字です。ボーナスでこれらの補てんをしますし、夫はボーナス払いでカードを使ったりすることもあり、年間で200万円以上出るボーナスは何も残らないんです」

Mさんは深いため息をつきます。

奥さん自身は、クレジットカードも使いませんし、それほど欲しいものもない。お金を使わないタイプなので、以前から真逆タイプの夫の浪費癖が気になっていたのだと話します。

実際、夫にかかるお金は「小遣い」と「クレジットカード利用分」とで毎月13万円ほどにもなり、家計の大きな負担なっています。お金の使い方について意見することもよくあるそうですが、「仕事で付き合いもあるから、仕方がないんだ」としか言わないのだそう。

夫のお金の使い方を改めてもらわないと、と思いながら家計状況をお聞きすると、お金を使わないと話していたMさんのやりくりにも問題がありました。全体的に支出が多いメタボ家計なのです。「食費」「生命保険料」「4歳の子どもにかける教育費」の支出が高いのが目立ちます。そして一番の問題は、Mさんが、なぜこの支出ではいけないのかを全く理解していないこと。「当たり前」の支出と信じているのです。

3大“浪費”の内訳はこうです。

まず食費。体のために産地の明らかな材料しか使わない方針で、外食はあまり行かないけれど、ファミリーレストランよりよい素材を使った飲食店に行くのが当たり前とのこと。

また、万が一に備えて保険はたくさん入るほうがいい、できれば将来的に貯蓄もできたほうが良い、入院給付も家で暮らす家族が困らないようにしっかり入っておきたいと言います。

子どもは、幼稚園以外でも体をつくったり、頭を動かしたりしなくてはいけないから、と水泳、幼児塾など計4つに通いましょう、と客観的に見るとやや無理のある支出だと思うものでも、お金をかけて当たり前だととらえていたのです。

さらに、世の中は何かと物騒で心配だから、外出する際は電気をつけたままにしておきたい。前出の食材の産地への執着や、万が一に備えての保険もそうですが、“安全安心”志向があるため、点灯しまま外出した際の電気代が余計にかかることになります。

■妻は6.5万のコストカットにたちまち成功

夫の行動に変化を起こさせるためには、まずMさんのお金遣いが変わらなければならないと感じ、夫の支出はひとまず置いておいて、家計支出の圧縮を図ることにしました。

Mさんの支出に対する「当たり前」な感覚を修正する策をとりました。一般的な夫婦と幼児のご家庭の支出のモデルを見せたり、似たような家族背景で、現在改善に向かわれている他のお客様に許可をいただき家計表を見せていただいたり、お話して頂いたり。Mさん自身の感覚がすべてではなく、妥協点は様々なところにあるということを納得して理解していただけるようにアプローチしていきました。

3〜4カ月後たった頃でしょうか、ようやく「いつもと同じでは何も変われない。こだわりすぎるとよくないものですね」と話されるようになり、食材の買い方、外食の仕方、電気水道の使い方、被服費、美容費のお金のかけ方が変化してきました。

【家計費コストカット額ランキング】

1位:クレジットカードの支払い −6万7000円
夫のクレカ遣いはほぼ一括払い。カード利用をやめることで、2〜3か月で支出はゼロに。
2位:生命保険料 −5万5000円
貯蓄型を含め、多数の保険に契約していたが、赤字、貯蓄不足の状況では貯蓄が優先。よいものを残し、他は保障内容から見直し。
3位:食費 −2万9000円
外食や自炊で「食材はいいもの」を徹底していた。そこを妥協することにした。
4位:教育費 −1万1000円
幼稚園代のほか、習い事と通信教材などが主。通信教材はできなくて余らせているので、その分はやめた。
5位:通信費 −5000円
固定電話はない。夫婦のスマホをパケット数多めの格安スマホに変えた。
6位:生活日用品 −3000円
買いすぎていないかを意識。買いだめ分も計画的に消費していく意識で買い物をひかえた。
6位:被服費 −3000円
自宅で洗濯、アイロンで対応可能なものは、自宅でするようにした。
6位:その他 −3000円
貯蓄を作るために、1000円程度でカットできる美容室で髪を切ると夫婦で決めた。
9位:水道光熱費 −2000円
節電を心がけ、つけ消しをこまめにした。水道もすぐ止める意識をもった。

格安スマホにして通信費を下げてみようと行動され、実際に支出が下がることを体験しました。生命保険は、貯蓄型のものや医療保険などに入っていましたが、かけすぎである部分もあり、必要な保障を考えて、良いと思えるものは残し、他は見直しをしていきました。

子どもの習い事4つは、多すぎかもしれないことも伝え、優先順位や要不要を考えてみてはと声がけしました。Mさんと夫と子どもで話してみると「もっと公園に行って遊びたい」ということを家族に言われ、結局2つ減らすことを決めました。このようにして妥協点を見つけながら支出を減らすと、家計の赤字(約6.5万円)はたちまちなくなりました。

■妻が夫の無駄遣いの「内訳」を問いつめると……

次は、夫のお金の使い方について検討することにしました。小遣い(6万円)は、まあいいとして、問題はクレジットカード払い(7万円弱)のほうです。

支出額の大きさよりも、むしろ使い道が分からないから納得できないということを率直に伝え、お金の使い道を教えてもらうことを目標にしました。

家計表を見せながらMさんが家計のお金の使い道を話し、赤字をなくすことができたので貯蓄できるように協力してほしいことを伝えました。その上で、クレジットカード利用の中身を聞くと、ようやく“口を割りました”。

半分は交際費で、もう半分は趣味や仕事の本を買ったり、服を買ったりしていることが判明しました。半分ほどは小遣いの上乗せとして使われていることが分かり、「これからは、そういったお金は現金で払っていきましょう」という約束にしたそうです。

はじめは貯蓄から出していかなくてはいけない部分も出てくるのですが、支出の仕方を整えれば、支出額が圧縮でき、挽回していけるだろうとMさんは思ったそうです。

夫のクレジットカードはほぼ一括払いでの利用でしたので、2〜3か月で請求が来なくなりました。交際費は経費扱いにできそうなら会社で清算してもらったりしながら、小遣いの中でやりくりできるように工夫していくことができました(あろうことかこれまでは仕事の交際費を自腹で出費していたようなのです)。

なぜ、ご主人はMさんの家計引き締め策に異議を唱えず、従ったのでしょうか。

「今まで、妻のお金の使い方も荒いのに、自分ばかりが使い過ぎと言われて面白くなかった」

ご主人はそう言いました。そして、奥さんが家計を改善する努力をしている姿を見て、自分の行動も改善しようと思えたのだそうです。

家計相談の現場では、「夫が使いすぎて」「妻が使いすぎて」と、やりくりがうまくいかないことを家族の誰かのせいにしてしまう姿をよく見かけます。ですが、実際は他人のせいにするよりも自分が原因になっていることも多く、それを見逃してしまっていることが多いものです。

「人のふり見て我がふり直せ」ということわざがあるように、うまくいかないなと思うときは自分の行動を振り返り、修正していくことが周囲の人に影響していくということもあるのです。

(家計再生コンサルタント、マイエフピー代表取締役、ファイナンシャルプランナー 横山 光昭)