老父と女性ケアマネの間の「トラブル」

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突然、親の介護をすることに……。そんな時、サポートしてくれるのがケアマネージャーだが、性別やタイプによって付き合い方は違う。ライターの相沢光一氏が、その実態を紹介する――。

■ケアマネージャーの性別で介護内容は変わるのか?

老親など家族が要介護になり介護生活が始まると、密接な付き合いをすることになるのが介護支援専門員=ケアマネージャー(以下、ケアマネ)です。

利用者(要介護者)の状態をチェックし、また介護を担う家族の事情を聞きながら、必要と思われる介護サービスを組み込んだケアプランを作る。介護生活を支える専門家といえます。

ただ、介護が始まる前や、始まったばかりの頃は、ケアマネがどのような役割を果たす存在なのか、今ひとつピンとこない人も多いと思いでしょう。本連載「介護ドキュメント」の項でも書きましたが、それをイメージしやすいように教えてくれたのがケアマネと接する機会が多い、福祉用具レンタル会社のIさんでした。

「スポーツチームの監督のような役割を果たす存在」

ケアマネとはそういう存在だとIさんは言うのです。スポーツチームの監督は、チームを試合で勝たせるためにさまざまなスキルを持った選手を適材適所に配置して采配を振るいます。介護も、ホームヘルパー、訪問看護師、デイサービス事業者職員など、さまざまな専門性を持った人たちによる、いわばチームプレー。利用者の身体の状態や家の事情などをくみ取り、それに適したサービス事業者を選ぶことを含めてケアプランを作るのがケアマネの仕事です。私自身も父親の介護をしていた時は、ケアマネがどのような役割をする人か、はっきりわからずにいましたが、このたとえを聞いて納得できました。

もっとも、この説明にはしっくりこない部分もありました。

スポーツチームの監督はほとんどが男性ですが、多くのケアマネは女性です(我が家を担当した方も女性でした)。厚生労働省の統計によれば女性78.2%、男性21.8%。8対2の比率で女性が多いのです。

そこで、介護現場の事情について、いつも話を聞いているケアマネのIさんに聞いてみたいことが頭に浮かびました。

・なぜ、ケアマネには女性が多いのか。
・ケアマネの女性と男性の違いやそれぞれのメリット・デメリットは何か。
・ケアプランの作り方の傾向はケアマネの性差が出るのか。

もちろんケアマネにもいろいろなタイプがいて、単純に女性と男性とに分けて語ることはできないでしょう。ただ、現場で働くケアマネが感じていることはあるはずです。そうした前提のうえで、あくまで一般論として語ってもらいました。

■女ケアマネと男性要介護者のよくある揉め事とは?

なお、Iさんは男性ですが、女性ケアマネのYさんにも同席してもらい、男女双方からの話を聞きました。

まず、なぜ女性のケアマネが多いのかについて、Yさんはこう語ります。

「もともと医療・介護分野は女性が多い業界なんです。看護師は9対1、ホームヘルパーは8対2、福祉施設の職員は大体7対3で女性が多い。身体援助、生活援助など人のお世話をする仕事には女性のほうが向いているという考え方が根強くあって、それが今も続いているということだと思います」(Yさん)

ケアマネの資格は介護福祉士、社会福祉士、看護師などの法定資格を持っていて、5年以上の実務経験がある者が受験し合格することで与えられますが、ホームヘルパーからなる人も少なくないそうです。ホームヘルパーは女性が多いのですから、ケアマネの女性比率も当然高くなるわけです。

次に、男女別のメリット・デメリットです。

「ケアマネは状況把握のため、利用者さんやご家族からよく話を聞く必要があるのですが、女性のほうが話しやすいとは言われますね。たとえば排泄の問題など、女性の利用者さんは男性ケアマネには話せないというんです。一方、男性の利用者さんは女性ケアマネに対してそれがいえるわけです」(Yさん)

そうした点でも女性ケアマネのほうが、ニーズが高いのかもしれません。

「でも、女性ゆえに利用者さんともめるケースもあります。ケアマネは時として、サービスの必要性を強く伝えることがあります。でも、高齢の男性利用者さんの中には男尊女卑的な考え方を持った方がいて、それが気に障る。“女の指図は受けない!”と怒鳴られて、男性ケアマネに交代されられたことがあります」(Yさん)

また、女性ケアマネは女性利用者ともトラブルになることがあると言います。

「女性って感情が優先する部分があるじゃないですか。女性同士でほんのちょっとした言葉の行き違いで信頼が失われ、嫁姑のような関係になってしまうケースがあります。こうなったら、担当は続けられませんよね。男性の場合は感情的になる人は少ないですし、そうしたトラブルはあまり聞きません」(Yさん)

■女性ケアマネの「世話焼きおばちゃんキャラ」の功罪

こうした女性同士のコミュニケーションの問題以外でも、男性ケアマネが必要とされるケースはあると男性ケアマネのIさんは言います。

セクハラ、暴言、暴力といった問題のあるケースです。利用者さん本人からだけでなく、家族から女性ケアマネがそうした被害を受けることもある。ケアマネは1人で家の中に入っていくわけですから、身の危険を感じることも起こり得るんです。そういう報告があった時は事業所で協議して男性ケアマネに交代するようにしています」

では、ケアプランの作成内容に、ケアマネの男女の違いは出るのでしょうか。

「男性ケアマネはヘルパー経験のない人が多いですし、調理や掃除といった家事に疎い部分もある。そのため、ヘルパーさんによる生活援助のサービスに目配りが行き届かない面はあるかもしれません」(Iさん)

一方、女性ケアマネならではの特徴はあるのでしょうか。

「ベテランの女性ケアマネには“世話焼きおばちゃん”的な人がいます。ご近所や親戚などにも、そういう人がいますよね。バランスの取れた考えのもとでの世話焼きなら、とても良いのですが、なかには勝手に思い込んで独りよがりの世話焼きをする人がいます。そんなタイプのケアマネが担当になったら、利用者さんの事情に沿ったサービスは受けられない可能性があります」(Iさん)

的外れの選手起用をしてチームの成績を上げられない監督がいるように、利用者の希望や事情をくみとる努力をあまりせず、満足のいく介護プランを作成してくれなかったり、サービスを提供してくれなかったりするケアマネもいるというのです。

「そうした事情をケアマネが所属する事業所に伝えれば、担当を変えてもらうことは可能です。ただ、ケアマネの立場から言わせてもらえば、いきなりそうされることはショックなので、不満があれば担当ケアマネに直接話してほしいですね。その話し合いから、事態が改善されることもありますから」(Iさん)

より良い介護を行なうために重要なのは利用者とケアマネージャーの信頼関係でしょう。そしてその信頼は会話を重ね、互いを理解することで生まれます。女性と男性では対応などに微妙な違いがあることは確かですが、それよりも重視すべきなのはコミュニケーションが密に取れる相性かもしれません。

(ライター 相沢 光一)