市民活動を積極的に行い発展している企業が立派なのは、トップが「健全なコミュニティーにのみ健全な企業が育つ」「企業が存在する地域で評価されてこそ全国で、世界で評価される」というしっかりした信念を持っていることである。

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米国の教育問題は深刻である。国際競争力をつけるためには、読み書きできない人をなくし教育レベルを上げることが必要であることはすべての人が理解しているが、太幅な財政赤字に阻まれて逆に教育費を削減せざるを得ない州もある。

良質の労働力を確保しなければならない企業はなお大変である。米国企業はその地域のニーズを吸い上げて順位づけをし、企業市民活動を行っている。これは行政ができないことを民間が代わりに行ったり、なかには民間が企画したプロジェクトに行政が側面的に援助するといった官民パートナーシップ方式も多くみられる。

こういう活動を行っている企業が立派なのはトップが「健全なコミュニティーにのみ健全な企業が育つ」「企業が存在する地域で評価されてこそ全国で、世界で評価される」というしっかりした信念を持っていることである。

さて、地域のニーズとなると多くの諸問題を抱えた米国だけに、麻薬、犯罪、医療、教育と多様である。総じて言えば、地域の教育の改善を優先している企業が多い。

その協力の仕方も機材の提供、研究施設の開放、講師の派遣、教育カリキュラムの策定などのほか、あるファストフードでは、実際に模擬店を学校に提供し、そこで購買、営業、会計など事業とはどういうものかを教え、月に一回実地に店を開いてそこからの収益をすべて奨学金として寄付している例もある。

教育養子制度を採用している企業も多い。すなわち、優秀な社員が貧困家庭や片親の子供の面倒をみている。週に一回子供の相談にのり、学校を訪ねて先生を交えて子弟の勉強や将来のことを話し合って力になっている。また、3〜4歳の子供と読み書きできない母親を公立小学校を使って一緒に教育し、母親を高校卒業のレベルに引き上げ、かつ職業訓練の手助けをしている協会もある。

こうした企業や協会の草の根運動が強い米国の力となることを信じたい。

立石信雄(たていし・のぶお) 1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長、財務省・財政制度等審議会委員等歴任。
北京大学日本研究センター顧問、南開大学(天津)顧問教授、中山大学(広州)華南大学日本研究所顧問、上海交通大学顧問教授、復旦大学顧問教授。中国の20以上の国家重点大学で講演している。