完全に日本をしのぐほどになっている中国のサッカー熱。スタジアムは超満員だった

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 2004年に国内プロリーグがスタートした中国。現在は、超級(1部/16チーム)、甲級(2部/16チーム)、乙級(3部/20チーム)で構成されている。大のサッカーファンとして知られる習近平国家主席の肝いりで、2016年に施行された「中国足球改革発展総体法案」のもと、名を馳せた指導者や有名選手を各チームが集めまくり世界を騒がせている。

 また急速な環境整備や育成組織の強化も図っている。彼らが目指すのは「中国代表が世界一になること」だ。

 3月14日火曜日、広東省広州は意外にも寒かった。ジャケット必須な気候だ。

 今回はAFCアジアチャンピオンズリーグ(以下、ACL)の取材、高層ビルが立ち並ぶ商業地区、天河区の中心に位置する「天河体育中心」内にある体育場、60000人収容の大箱が今宵の舞台となる。

 試合開始3時間前入りした体育中心の敷地に入ると運動器具でトレーニングする婦人や、備え付けのボードゲームや卓球を楽しむ多くの老若男女に目に付いた。平日の真昼間に、と些か余計な心配事もあるが、彼等の憩いの場であることには違いないようだ。

◆中国版ギャラクティコが描く浪漫飛行

 広州恒大淘宝足球倶楽部(以下、広州恒大)、ACLを2度制したことのあるアジアンコンペティションの常連である。恐らく日本で一番名の通った中国クラブではないだろうか。

 クラブの筆頭株主は、売上3750億元(約6兆4000億円)企業、地元広州に籍を置く不動産会社大手「中国恒大集団」。そして2014年には、国内通販サイト“淘宝網(タオバオ)”や“天猫(Tモール)”を展開する「阿里巴巴集団(アリババ)」が絡んできたとなれば金の匂いプンプン、政治力すら感じる金満クラブだ。

 試合前日には、ロシアワールドカップアジア最終予選3月ラウンドに臨む中国代表メンバーが発表された。広州恒大からは実に7名が選ばれている。正に“中国版銀河系軍団”なのだ。彼等にはアジアタイトル奪還は通過点にしか過ぎず、真剣に世界制覇を狙い今年も動き出していた。

 そしてこの銀河系軍団と戦うべく広州へ乗り込んで来たのが、我らがJ代表、川崎フロンターレ(以下、川崎)だ。中国語表記では「川崎前蜂」となるらしい。中華表記を何だか可愛らしく思えてしまった。

◆大陸的民族意識から見習うべき点あり?

 火曜日平日開催の試合、疎らだったスタンドも開始が近づくとグッと埋まりほぼ満席だ。

 そして試合開始直前、スタンドを真っ赤に染める広州恒大ファンがアカペラで中国国歌“義勇軍進行曲”を斉唱し始めたのである。国際試合に鹿島や浦和のホームで日の丸が振られることはあっても、君が代が自発的に歌われるだろうか。

 “俺達が一番、国家代表なんだ”という自負故の行動なのか、将又、広東省こそが国家の中心なんだという民族的アピールなのか、どちらにしても彼等の強力なアイデンティティに触れ、また新鮮さを感じずに居られなかった。

◆魔法使いを帯同させていた川崎前蜂

 試合は広州恒大が開始早々から完全に支配し、川崎は何もさせてもらえない。26分にはカウンターから7番アランのゴールで先制に成功する。そして広州恒大の攻撃の中心には常に“現役ブラジル代表”パウリーニョが居た。良い流れが生まれる時には必ずと言って良い程に彼を経由する。正に広州恒大の心臓だ。

 しかし後半に形勢が大逆転する。ハーフタイムに川崎・鬼木監督は魔法を掛けたに違いない。前半とは全く別のチームに変貌させたのだ。彼等は本来のリズム感を取り戻し、気持ち良くピッチにボールを走らせ攻め立てる。そしてアディッショナルタイムに実を結ぶ。広州恒大20番、ウ・カンチョウがペナルティ内でハンドリングを取られPKを献上。これを川崎の新エース、小林悠がきっちりと決めて同点、そしてドローファイナルとなった。