■稀勢の里が強行出場

 25日、大相撲3月場所の14日目が行われた。前日の日馬富士戦で左肩付近にけがを負ってしまった横綱稀勢の里は強行出場した。救急車で運ばれ14日目の出場が危ぶまれたが、早朝に出場することを発表。横綱としての責任があるのか、はたまた、優勝争いを演じている身という意地があるのか。稀勢の里はファンをがっかりさせることはなかった。

 24日の取組後の段階では、明らかに「休場するだろう」という見方が多かったはずだ。普段痛がる表情を見せることが無く、勝ってもぶぜんとした表情の稀勢の里が見せた苦悶の表情はそれほど重かった。何より土俵から落ち、一度立とうとしたが、痛みにより再び座り込んだ動作は「相撲は取れない」と判断するのが普通だった。

 そんな周りの予想を覆しての出場は称賛に値する。もちろん稀勢の里本人は「出るだけではだめ」というのは頭にあっただろう。

■照ノ富士の勝利

 稀勢の里と鶴竜の取り組みの二つ前、同じく優勝争いをしている照ノ富士が登場した。照ノ富士の対戦相手は先場所大関から陥落したばかりで、返り大関を目指す琴奨菊。お互い負けられない一番で館内の熱い視線が注がれた。

 立ち合い不成立となり取直しとなった一番で琴奨菊が前に突っ込んだ。向かった先には照ノ富士はおらずあっけなく勝負がついた。照ノ富士が変化をしたことにより何もせずに勝負がついてしまった。立ち合い後の変化が反則という訳ではないが、大関である照ノ富士のそういった行為はファンのひんしゅくを買った。

■稀勢の里の一番

 稀勢の里の土俵入りはそんな冷めたファンを一蹴するものがあった。鶴竜相手にいつもより若干柔和そうな表情での土俵入りは普段の稀勢の里らしくない面も見受けられた。案の定立ち合い直後鶴竜を張った稀勢の里は力なく押し込まれ、成すすべなく土をつけられた。取り組み後左肩付近を痛そうにする稀勢の里は万全な状況とはほど遠く、明日の対戦も不安視させてしまうものとなった。

 照ノ富士が勝ち、稀勢の里が負けたことにより、稀勢の里が優勝するためには、千秋楽の結びの一番で照ノ富士に勝利し、さらに優勝決定戦でも勝たなければいけないというまさに絶体絶命の境地に生い立たされた。もしこの状態で優勝することがあれば、小泉元首相が貴乃花に対し「痛みに耐えてよく頑張った。感動した」の再現となる。もしかしたらそれ以上のものを与えてくれるかもしれない。

 千秋楽、「ケガだからしょうがない」と言われるのか、伝説になるのかは稀勢の里次第。先場所の千秋楽での白鵬との一番を彷彿とさせるような相撲を、亡き先代の親方隆の里に届くような相撲をぜひ見せてほしいと願う。