2冠王者としての重圧を背負ってのリスタート。青森山田は力強く、歩みを続ける。写真:安藤隆人

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 兵庫県で開催されているガバナーカップ。6チームを2グループに分け、最終日の3月26日に順位決定戦を行なわれる。高校選手権王者の青森山田は23日の開幕戦でクロアチアの強豪ディナモ・ザグレブU-18を相手に1-0の勝利を収めると、翌日の第2戦では兵庫県選抜U-18を3-0で一蹴、2連勝でグループAの1位通過を決めた。
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 2試合とも、圧巻の試合運びだった。まずは開幕戦となったD・ザグレブ戦。言わずと知れたクロアチアの名門で、育成機関はルカ・モドリッチ(レアル・マドリー)など数多の名手を輩出してきた。今回来日したチームにもU-17クロアチア代表が4人在籍し、エースのマリオ・ツゼは、母国の将来を担う好タレントだ。
 
 その東欧のタレント軍団に対し、青森山田は立ち上がりから攻勢に出た。1トップのバスケス・バイロン(新2年)がドリブルで積極的に仕掛けると、左MFの壇崎竜孔(新2年)、右MFの佐々木友(新3年)の両翼も高い位置に張り出してゴールに迫る。前半15分(40分ハーフ)、MF堀脩大(新3年)のFKからCB簑田広大(新3年)が放ったヘッドは惜しくもポストを叩くが、アディショナルタイムにMF郷家友太(新3年)のロングスローから佐々木がボレーシュートを決め、リードを奪った。
 
 後半に入ると、11分に柏レイソルU-18から転入したFW中村駿太を投入。郷家と2シャドーを組ませ、バイタルエリアでの起点を増やすと、60分には佐々木に代えてFW三國ケネディエブス(新2年)をピッチへ。三國を前線の基準点に、中村、郷家ら2列目が果敢にゴールを狙った。
 
 守っては昨年のレギュラーCB小山内慎一郎(新3年)が、ロングボールを多用してきたD・ザグレブに対して強気のラインコントロールを見せ、逸材ツゼにはフィジカルコンタクトで一歩も引かなかった。さらにGK坪歩夢(新3年)が2本のビッグセーブでピンチを凌ぎ、チームを完封勝利に導いた。
 
 攻守の歯車ががっちり噛み合って掴んだ1-0の勝利。「ようやくチームになってきた。選手たちが大きな自信を掴む一戦になったと思う」とは、指揮を執った正木昌宣ヘッドコーチの弁。新チームになってからのベストゲームだった。
 翌日の兵庫県選抜戦でもチームは本領を発揮。開始6分に佐々木の2戦連続弾で先制すると、30分にMF浦川流樺(新3年)に代えて中村を投入。郷家と中村がリズムを作り、1トップのバイロン、佐々木と壇崎の両サイドがゴールに襲いかかると、後半開始早々の2分に右CKからDF佐藤拓海(新3年)が押し込み、突き放した。
 
 完全に試合の主導権を握ると、後半27分には壇崎が左サイドからカットインを仕掛け、逆サイドに展開。ボールを受けた佐々木が鋭い突破からクロスを送り、ファーサイドの中村が押し込んで3-0。勝利を決定付けた。
 
「全員の意識が徐々に変わってきた。新チームを立ち上げた時は不安が大きかったけど、徐々に手応えを掴んで、堂々とプレーできるようになってきましたね」
 
 そう語って笑顔を見せたのは、U-18日本代表の郷家だ。さらに中村の存在については、「駿太は簡単にボールを失なわないし、きちんと収めてくれる。それでいて前への推進力もあるので、これまでは自分がボールを収めるために動き回っていたけど、彼に任せられるようになった。そうすることで自分もより攻撃的に勝負できるようになったし、周りの動きもより前に向かえるようになった」と、加入による効果の大きさを口にした。
 
「今年のうちのテーマは『競争』。駿太が入ったことで、ケネディもバイロンもより競争心に火がついたと思う。これからさらに競争を煽りながら、チーム力を高めていきたい」(正木コーチ)
 
 2冠達成の翌年というプレッシャーのなか、スタートした新チーム。中村という特大の新戦力を得て、選手間の競争意欲が高まり、個々の能力もさらに引き出されるなど、早くもそこかしこで化学反応が起こっている。
 
 今回のガバナーカップで掴んだ自信と手応えは、なににも代えがたい。4月8日のプレミアリーグEAST開幕に照準を合わせつつ、青森山田は、確かな歩みを続けている。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)