「(銭形警部の)名前の由来は、銭形平次からなんだけど……。僕の生まれ故郷・北海道にはアザラシが棲息していてね、それが『ゼニガタアザラシ』っていうんですよ(笑)。じつはそこからも取りました。だから両方から取った名前ということになるね(笑)」

そう語るのは、『ルパン三世』の原作者のモンキー・パンチ先生(79)。「とりえず3カ月やってみようか」−−。’67年、創刊された『漫画アクション』(双葉社)の編集長の一言から始まった漫画『ルパン三世』。当時、まだ新人だったモンキー・パンチ先生は、新たな漫画誌の連載企画として『ルパン』を提案するも、「今さらルパンは古いだろ」と、却下されかけたが、「『007』と『怪盗ルパン』をミックスさせた漫画を描きたい!」と再度アタック。編集長から「やってみようか」とGOが出た。

それからはや50年……。今や海外でも大人気の『ルパン三世』。50年にもわたりその人気を支えているのは、個性豊かなキャラたち。その生みの親であるモンキー・パンチ先生が、知られざる銭形警部誕生の秘話を本誌に明かしてくれました!

「ルパンと銭形の関係は、僕が昔から好きなアニメーションの『トムとジェリー』。ストーリー設定の段階で、初めから銭形警部を出そうと考えていました。お互いの能力を認め合っているところを、全面的に押し出していこうと思ってね」

銭形警部の風貌の元になったのは、アメリカの漫画で後に映画にもなった『ディック・トレイシー』。

「『ディック・トレイシー』のトレンチコートを着て、帽子をかぶった、あのイメージから考えました。銭形の性格は、五右ェ門に似ているというか、武道にも強くて本当はかっこいい。ストーリーの中で、そういう部分をもっと出したかったんだけど、『トムとジェリー』のトムのように、いつもルパンにしてやられる、間抜けな役になっちゃいましたね(笑)。実際は、頭がいい優等生で、滑稽なぐらい生真面目な男。そういう感じで描きたいな〜と、ずっと思っていたキャラクターなんです。漫画の中では、それをなかなか出しきれなかったところがありますね」

モンキー・パンチ先生は、5人のキャラクターの中で銭形警部がいちばん好きだという。

「描きやすいというか、どうにでも描けるというかね。銭形はストーリーによってギャグにもできるし、シリアスな役にも使える。つまり、どっちで使っても、いい味が出せる貴重なキャラなんです。とくに“悲哀”という言葉が当てはまるとしたら、やっぱり銭形なんですよ。ギターを弾きながら『酒は涙か溜息か』を歌うのが、ぴったりはまりそうな感じというか……(笑)。そんなエレジー(哀歌)が似合うんです。一方では、ハードボイルドの役にも使える。銭形は、役者として幅の広いキャラクターですね」