【産業医に相談】仕事が多すぎて潰れそう。でも上司に相談できません

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同様の質問は、職場においてよく耳にします。ここでは産業医である筆者が、職場でよく遭遇する“思い込みの迷宮”を抜け出すための3つのポイントをご紹介します。

1:理解できる、理解されることを前提にしない

人の悩みの多くは、自分が他人にどう思われているかという不安と思い込みが原因であり、対人関係において思い込みを生むのは、“適切な歩み寄りの不足”である場合が多いです。 

親子関係に代表されるように血のつながった家族であっても、他者の考えを真に理解することは非常に難しいと言えます。他者のことは理解できないという前提で、理解できないからこそ相談や相手の理解度を確認することを繰り返すことにより、まずは“思い込みの迷宮”から抜けることが必要です。

2:現状を正直に話して、自分から歩みよる

職場において、ある程度の利害関係のある他人である上司の考えを推測することはより難しいと言えます。まずは困っている現状を正直に話して自分の状態を相手に理解してもらい、上司としての判断を促すことが大切です。

 他人は自分の心を写す鏡と表現されるように、相手が自分を敬遠していると感じるとき、実は自分が相手を敬遠しているというのはよくある錯覚のひとつです。相手がどう思うかよりも相手を信頼して話してみる歩みよりが良好な関係の最初の一歩になります。

 上司にリーダーシップが必要なのと同様に、部下には上司に自ら歩み寄るフォロアーシップが必要です。もしもしっかり話した上で理解の得られないダメな上司であれば、前向きに諦めて産業医などに体調不良にならないために相談するなどの別のルートを探るのもいいと思います。

3:相手の立場を想像する

最後に、上司に相談することが躊躇されるときに勇気を与えてくれる考え方をご紹介します。もし自分が同じ状況で上司側だったら、相談をしないで潰れていく部下と、正直に弱音もはいて相談をしてくれる部下、どちらが可愛い部下でしょうか?

相手の立場になって「もしもわたしが上司だったら……」と想像できる空想力こそが、今の時代には必要な能力であるとわたしは感じています。

以上のように、他人は理解できないことを前提にしながら、ときには空想を膨らませて異なる立場を楽しみ、まずは自ら歩みよってみるステップを踏むことで、みなさんが迷いの迷宮から抜け出すきっかけになれたら幸いです。

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※ Eugenio Marongiu / Shutterstock

【筆者略歴】

三宅 琢

医学博士/日本医師会認定産業医、メンタルヘルス法務主任者、日本眼科学会専門医、労働衛生コンサルタント東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 特任研究員株式会社ファーストリティリング他 産業医株式会社Studio Gift Hands 代表取締役