この日も決勝点を挙げ、4試合連続ゴールとしたアラン。チームの快進撃を支える立役者のひとりだ。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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[J2リーグ5節]東京V 1-0 岐阜/3月25日/味スタ
 
 このゼロ行進はどこまで続くのだろう。
 
 本拠地・味の素スタジアムにFC岐阜を迎えた東京ヴェルディは、内容で圧倒されながらも、68分にアラン・ピニェイロが挙げた虎の子の1点を守り切り、1-0の勝利を挙げた。これで4連勝となり、4試合連続の完封だ。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督は「じつに難しい試合で、前半を0-0で終えるのにたくさんの仕事をしなければいけなかった」と、かなりの辛勝であったことを認めた。
【東京V1-0岐阜PHOTOハイライト】東京Vがアランのゴールを守り抜いて4連勝!
 
 試合は序盤から岐阜のペースで進む。敵将の大木武監督は「ヴェルディの3バックに対しては、サイドのセンターバックの両脇をうまく突いて釣り出そうと。ウイングバックも攻撃的なんで自由にさせないように徹底した」と、策を弄して臨んだ。東京Vはたちまち守勢一方となり、ボールを奪っても前線のドウグラス・ヴィエイラやアランにボールが収まらず、高木善朗が孤軍奮闘するも、動き出しの早い岐阜DF陣の囲い込みに遭った。
 
 30分過ぎまでに3度の大ピンチを迎え、GK柴崎貴広の好セーブと「かなりの運」(ロティーナ監督)でなんとか凌ぎ切った。完全に、たじたじの展開だ。
 
 だが、ここから立て直すのが新生ヴェルディの強みだ。ロティーナ監督は両サイドのプレッシングの位置を高く設定し、ドウグラスにもっとボールを追い込むように指示を飛ばした。指揮官の要望通りに、すぐさまリアクションする選手たち。39分、負傷した井上潮音に代わってピッチに投入された橋本英郎は、「僕が入ったときには、選手一人ひとりが互いの位置をしっかり掴んでましたね。そこからは(岐阜に)好きにはやらせなかった」と振り返る。
 
 そして後半の53分、ロティーナ監督は動きの緩慢なドウグラスを諦め、梶川諒太を送り込む。これが効果てきめん。抜群の機動性能で右サイドを活性化し、岐阜の守備系統に狂いを生じさせた。中央にスライドしたアラン、左の高木善も積極果敢に仕掛け、敵の最終ラインのギャップを巧みに突いていった。橋本は「ボールを奪ってからスペースに蹴りだせるようになったんで、僕らとしてはありがたかった。ゴールもそこからですから」と語る。
 
 68分、ボールカットした内田達也が素早く前線にミドルパスを打ち込み、これを受けたアランが相手DFと駆け引きしながら持ち込んで、右足を一閃。鮮やかなスライダーショットで、均衡を破ったのだ。
 一度リードを奪うと、そこからの東京Vの集中力は凄まじい。
 
 リトリートを基本に自陣で鉄壁の要塞を築き、クロスを上げさせても中央の堅固なブロックがことごとく跳ね返す。焦燥にかられた相手はミスが多くなり、強引なシュートを繰り返してはチャンスをフイに。もはや勝利の常套パターンと言っていい。74分から高木善に代わって投入された安西幸輝は、単なる守備固めのカードではなかった。持ち前のアジリティーと積極性を存分に発揮し、岐阜DF陣のラインをぐっと押し下げ、苦し紛れのロングボールを頻発させた。指揮官の采配も、そのいちいちに無駄がない。
 
 守護神の柴崎は「監督の指示に対して自信を持って動けるようになってきた」とし、橋本は「勝ち癖がついてきて、少し余裕が出てきたのかなとも思う」と、チームの進化を口にした。
 
 試合は1-0のままタイムアップ。この日も圧巻の修正力で劣勢を盛り返し、3ポイントを掴み取った。ロティーナ監督の言葉だ。
 
「(岐阜の)大木監督にはこう伝えたよ。『あなたたちは本当にいい試合をした。負けに相応しい内容ではなかった』と。そう、これがフットボールなんだ。ゴールを取れなければ負けてしまう。かなり厳しい試合だったが、相手に支配されてもしっかり守備ができるようになってきた。一歩ずつ着実に、進歩しているね」
 
 歴戦のスペイン人指揮官が恐ろしいほど細かいディシプリンを提示し、若き主力メンバーは必死に食らいついて、それを消化している。ゲームを重ねるごとに高まる、攻守両面のオートマティズム。そしてわずかながら、娯楽も提供しつつある。
 
 決して盤石ではない4連勝。だがもはやこの快進撃を、フロックと位置付ける者はいない。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)