深田晃司監督「驚くほどにシンプルで力強い作品」、映画『ムーンライト』のトークイベントに登壇

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 【第89回アカデミー賞】で作品賞ほか3部門を受賞した映画『ムーンライト』のトークイベントが渋谷・ユーロライブで行われ、映画『淵に立つ』などの映画監督・深田晃司監督がゲストで登場し作品について語った。

 満席の会場から拍手で迎えられた深田監督。本作の感想を問われると「こんなにもシンプルで力強い映画とは思いませんでした。黒人の役者が出演したり、セクシャルマイノリティをテーマとして扱った作品では、今まではスパイク・リーの作品や『チョコレート・ドーナッツ』など、社会性に焦点を当てる作品が多かったと思うのですが、この作品は驚くほどにそれらの要素を排除して、当たり前のように黒人コミュニティや恋愛を描いている」と興奮気味に語った。

 また、「物語においての“劇的な瞬間”をことごとく避けている点にも驚きを感じました。この作品はハリウッドで作られる典型的でドラマチックな展開がほとんど見られないんです。そう考えてみれば、私たちの生活も実は99%何も起きず、劇的な要素など1%あるかないかだと思うんです。でも映画はそこにフォーカスをしたがる。その矛盾を抱える作業の中、監督はシンプルな構成に徹底し、だからこそあの恐ろしくシンプルなラストシーン、誰もが身に覚えのある感情へと落とし込めたんだと思います」と演出方法についても言及した。

 さらに、本作に登場するキャストの演技については「圧倒的に演出が上手かったですね。画面に登場している役者が全員“素晴らしい演技とはこうだ”という共通認識を持って演じているように感じました」と絶賛。ナオミ・ハリスについては「経験豊かな役者ほど計算が働き、作品から浮いてしまいまうことが多々あるのですが、彼女は見事作品の中に自分を浸透させていたと思います」と監督ならではの視点で語った。

 最後にコメントを求められた深田監督は、「(作家の)亀井勝一郎さんの言葉で“作家は処女作へ向かって成熟する”という言葉がありましたが、長編2作目にして、この映画にはバリー・ジェンキンス監督の想いのすべてが詰まっているように感じました。是非多くの人に劇場で観て頂きたいと思います」と締めくくり会場を後にした。なお、映画『ムーンライト』は3月31日より、TOHOシネマズシャンテほかにて全国ロードショー。


◎公開情報 『ムーンライト』
2017年3月31日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国でロードショー
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
出演:トレバヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホーランド、ジャネール・モネイ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ/朝日新聞社
配給:ファントム・フィルム
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