山田孝之がカンヌ映画祭でパルムドールになるために映画を撮る……というコンセプトのドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』が最終回を迎えた。
テレビ東京オンデマンドでも見られる。
フィクションオチかと思いきや、最後にリアルの発表があった。


「映画 山田孝之3D」
6月16日から本当に上映する。山下敦弘が監督に戻り、山田孝之は主演。芦田愛菜も出ている。
本当にカンヌ映画祭に応募している。
全国6館、3D上映しかない。予告編だけで酔いそう。

山田孝之「いつか芦田さんのような大人になるため、山田孝之は現実をぶち壊し続けて生きていきます」
山下敦弘「この度、芦田愛菜さんのおかげで一本の映画を作ることが出来ました」

確かにフィクションだか現実だかよくわかんないこのドラマ、最初から最後まで、芦田愛菜の周りを男2人が迷走している状態が続いていた。
コメントで、芦田愛菜に「寄りかかっていてすいません」と認めたことで、ドラマのキャラクターの2人が、やっと一歩踏み出せたように見える。

故郷に帰れた山田孝之


前回、作中で撮っていた映画『穢の森』は崩壊。監督・山下敦弘と主演・芦田愛菜が降板してしまった。
山田孝之は故郷である鹿児島に戻った。

彼が最初に向かったのは、卒業校である川内南中学校。
ここで、山田孝之号泣。言葉にならなくなる。

彼は一度、似たような経験をしている。
7話、河瀬直美の誘いでショートフィルムの主演を演じた時だ。
役者を追い詰めて役と一体化させる手法。学校での撮影で、山田はボロボロと泣いていた。

次に彼が向かったのは、住んでいた家。
更地だった。
ところどころに落ちているベッドの柱やタイルを見て、再び泣いてしまう。
「もっと早く来ればよかったなー」

今まで山田孝之は、全く後ろを振り返らず、焦りながら撮影しようとしていた。
最終回で「あの映画撮ってた時面白くなかった」とやっと気づく。
前のめりな彼が過去を見つめ直し、じっくり考えられたのは、泣いた7話と12話だけだ。

軸足、芦田愛菜



「山田さんは次何をやりたいんですか?」

9月なかばで再会した芦田愛菜は、11話で「山田さん、何がやりたいんですか」と言ったセリフを、もう一度違う意味合いで投げかけている。

山田孝之「やっぱぼくは映画が作りたい」

山田孝之と山下敦弘が再会し、非常に気まずい空気になった時。
彼女は心機一転、2人が初めて出会ったかのように名前の紹介をしている。

ドラマの軸足としての芦田愛菜は、全くブレずに「芦田愛菜」を演じ続けていた。
「一億円お願いします」と微笑んで言えちゃうピュアな少女。
ランドセルを背負って大人の中を歩く違和感・虚構の象徴。
誰もが認める演技も歌もうまいプロの役者。
合同会社カンヌで一輪車で遊ぶ子供。
何やってるの、と皆を目覚めさせる現実の象徴。

松江:芦田さんがいることで、常に「大人たち何やっているの」というツッコミが入る。
山下:大人たちとちゃんと距離感をもっている。ただ山田くんを信じたばかりに…。そこだけは道を大きく間違えたなと(笑)」
山田孝之はあらゆる人類に侵食する… 密着した2人の監督が語る中毒性 BUZZ FeeD

ラストシーンで、妹のように山田孝之の後ろからノートパソコンを覗き込む芦田愛菜。
画面の隅に常時映っている彼女は、「大人と子供」の比較ビジュアルを前面に出し続けてきた。

「作れませんでした」にならない必要性


山下敦弘は「映画山田孝之3D」のコメントで「これは人間、山田孝之と山下敦弘のけじめとしての映画です」と述べている。

ドラマから映画が派生したのか、映画ありきでドラマを作ったのかは、わからない。劇場版的な位置なのかもしれない。
ただドラマを「山田孝之、結局力及ばず撮れませんでした」にしなかったのは、本当によかった。

作中では様々な映画批評・批判を取り込んでいる。
カンヌの映画関係者や、日本映画大学の話など、「カンヌで受け入れられる映画とはなにか」を、具体例をあげて出し続けてきた。一方で「山田孝之のやり方」は「新しいことをやる」以外は曖昧なままだった。
仮にフィクションだったとしても、批評をするからには何らかの「持論」を出さないと、ドラマ自体が言い逃げになってしまう。

山田孝之は作中で「本気で面白いものを面白がって作る」「ぼくを映画にする」と言った。
これを踏まえて、虚構を含んだドラマとしてだけでなく、映画を別に撮り発表をしたことで、ちゃんとドキュメンタリーとして終わらせた。
「完成させることこそ映画」だという、当たり前だけど大変な持論を、実際に映画を撮ることで、タイトル通り応募することで、やりきった。






「狂気の旅」。毎週何やらかすのか、どこまで事実なのか、見ていて不安で仕方なかった。山田孝之の友人・小栗旬は「「イカれたことやってんな」って思いますけどね」と語っていた(朝日新聞
一皮むけてすっきりした顔の山田孝之らの撮影の様子を見ていると、映画はどんなトンチキな映像になろうとも、安心して見に行けそうだ。
むしろ山田孝之の言う「新しいこと」、「面白がって作ったもの」を、映画で見たい。

(たまごまご)