超音速の旅を実現するスタートアップ企業「ブーム社」CEOの野望

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ブームスーパーソニック(Boom Supersonic、以下ブーム社)は航空機の製造を企む異例のスタートアップ企業だ。航空機と言っても小型のプライベートジェットではない。ブーム社は2003年にコンコルドが運行を停止した、超音速旅客機をこの世に復活させる夢を描いている。

「ライト兄弟が飛行機を飛ばしてからの50年で、航空機分野には巨大な進歩が訪れた」とブーム社CEOのBlake Schollは言う。「しかし、ここ数十年で航空機のテクノロジーは実際には後退した。現代最速の航空機は1960年代に最速を誇った航空機よりも遅いのだ」

ブーム社は直近のシリーズAラウンドで3300万ドルを調達。出資元にはYコンビネータのファンドContinuity FundやRRE Ventures、Palm Drive Ventures、8VC、Caffeinated Capitalらの名前が並ぶ。役員会にはYコンビネータ社長のSam Altmanや投資家のGreg McAdooも加わった。ブーム社はこれまでに総計4100万ドル(約46億円)の資金を調達した。

調達資金を元にブーム社は初のテスト航空機、XB-1を製造する。スーパーソニック・デモンストレーター(Supersonic Demonstrator)と名付けられたこの機体は、量産モデルの3分1のサイズで、約1年後の初飛行を予定している。CEOのSchollにとって飛行機の製造は子供の頃からの夢だった。

「コンコルドが運行を停止した時に自分は20代前半で、超音速フライトを体験することは出来なかった。その後、アマゾンやテクノロジー系の企業で働くうちに、この世に不可能な事は無いと思うようになった。しかし、航空機業界のイノベーションは停滞している事に気づいた」

アマゾンを退職後にSchollはスタートアップ企業のKima Labsを共同創業したが、その頃も空への情熱は失わなかった。超音速ジェットに関わるニュースをグーグルアラートで通知するよう設定してチェックしていたほどだ。その後、Kima Labsをグルーポンに売却したSchollは次のビジネスとしてこの分野に乗り込んだ。

コンコルドは燃費が悪すぎで失敗した

「コンコルドが失敗したのは燃費が悪すぎたせいだ。それが原因で運賃が異常な高値になった。業界も顧客も、誰もがもっと速い航空機を求めているのに。だから、最初に考えたのは現在のビジネスクラス並みの料金で超音速フライトが実現可能かどうかという事だった。その答は全部、ウィキペディアに書いてあった」

超音速旅客機は実現可能なテクノロジーだ。必要なのは各所に散らばった技術を一つにまとめ上げることだ。ブーム社のエンジニアらは現代の航空機業界が持つ先進的技術をフル動員し、カーボン繊維の機体やエアロダイナミクス技術を投入して超音速飛行を実現する。

さらに、コンピュータによるシミュレーションも設計やエンジニアリングの過程に劇的な向上をもたらすとSchollは言う。

「かつての航空機開発の現場では風洞実験トンネルの中でテストが繰り返され、一つの実験に半年もの時間を要していた。しかし、現代ではこの種のテストは30分で実行可能でクラウドで結果をシェアできる。ブーム社はこれまでに数千回の風洞実験に相当するテストを積み重ねてきた」

既存のテクノロジーに先進技術を適用し、野心的なイノベーションを実現する手法はイーロン・マスクの試みにも重なる。「スペースXがロケット分野にもたらした革命を、商用旅客機の分野で実現したい」とSchollは言う。

Schollの抱く野心はブーム社に多くの優秀なエンジニアたちを呼び寄せた。「スペースXでファルコン9ロケットを開発したメンバーもうちに来た。今よりも少し良い飛行機を作りたいという人は、ボーイング社に転職すればいい。でも、このチームで働けば、自分の孫たちにも自慢できる飛行機の製造に関われるんだ」