「ラ・ラ・ランド」公式サイトより

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 現在公開中のミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」(デイミアン・チャゼル監督)が話題だ。第89回アカデミー賞では最多6部門を受賞し、賞を総ナメ状態。本場アメリカでの人気はもちろんだが、いま日本でもラ・ラ・ランド旋風が巻き起こっている。

 特に20代の若者からの人気は高く、Instagramでも「泣ける」「マジやばい、ラ・ラ・ランド絶対2回目見る」という感想とともに劇中に流れる音楽を買ったという人が続出。「#ラ・ラ・ランド」のハッシュタグは50188件(3月21日現在)で、今も増え続けている。

 舞台は夢追い人が集まる街ロサンゼルス。物語はこだわりのジャズバーを開くのが夢のライアン・ゴズリング演じるセバスチャンと、女優を夢見るエマ・ストーン演じるミアが出会うところから始まる。夢を追う2人は互いに惹かれ、いくつもの季節を数えていく。

 しかし、次第に立場と心境の変化が起き…。

 もしもあのとき、ああしていれば。あの時出会った恋人と結婚していれば…。そんな「タラレバ」が観客の個人的な経験とシンクロし、“泣ける”と評判の同作。

 さらに、軽快なダンスと共に流れる美しい音楽、ミアをはじめとする女性たちのカラフルな衣装。そんな絵になる美しさは若い女性のハートを射止めるには十分。

 東京で桜の開花宣言が発表された今週、ラ・ラ・ランドは今春の注目度ナンバー1の映画といってよいだろう。

 だが、いま同作を巡って一つの事件が起きている。

 「ラ・ラ・ランド」を見たという20代女性たち曰く、この作品に関連して自分の周りで不快な現象が起こっているというのだ。

◆おっさんも「ラ・ラ・ランド」を見始めてしまった

 なんと、若者たちの評判をどこかで聞きつけたらしい30代後半のおっさんたちが、こぞって「ラ・ラ・ランド」を見て、あろうことかハマっているというのだ。

 むろん、単に映画にハマるだけなら問題ない。おっさんにも恋愛映画を見る権利はある。

 問題はその絶賛っぷりを職場の同僚、さらにFacebookをはじめとするSNSで発信し始めてしまっていること。これに「お前の感想なんて聞きたくない」と不快感を示す20代女性が続出。

 美しい音楽と夢を追い続ける男女2人の出会いを描いた同作が、なぜそれとは無縁なおっさんの心を突き動かすのか。そして、あろうことか「批評」「感想」という名のもとで“タイムライン公害”を生み出しているのか。

 ラ・ラ・ランドを見終えた20代女性が、この2週間の被害状況を語ってくれた。(※文中に、一部ネタバレ箇所があります)

◆「恋人とは見ちゃいけません」と上から目線で警告投稿

「六本木ヒルズのTOHOシネマズでラ・ラ・ランドを見てきたらしい39歳の上司がFacebookで長々とその感想を投稿していました。3年ほど前からおじさんしか更新してないFacebookのタイムラインでしたが、先週だけでもラ・ラ・ランドの感想を投稿しているおじさんが4人。これは異常な値です」(真由さん・仮名・27歳・広告・港区在住)

 真由さんがおっさんたちの異変に気づいたのは、彼らが共通して“ある文章”を投稿していたことだ。

「<これから見ようと思っているみなさん。この映画は元カノに会いたくなるので危険です(笑)。夫婦で見るのもおすすめできないかな(笑)>と、なぜか上から目線でアドバイスしてくるんですよ」

 曰く、30〜40代のおじさんに限って、先に見たほうがエラいと言わんばかりにラ・ラ・ランドマウンティングを仕掛けてくるという。

「そもそも、映画のオチ的に元恋人に会いたくなるようにつくられてるんだから当たり前じゃん」と真由さん。

「『恋人とは見に行かないでください』っていう投稿がウザいですね。この映画を見たくなるようなうまいキャッチコピー考えた俺、的なドヤ顔をしてるんですが、それってみんな言ってることに気づけよ(笑)」。

◆ラ・ラ・ランドにハマれなかった女の肩身が狭すぎる

 映画関連の会社で働く中井沙知絵さん(仮名・28歳・世田谷区在住)は、職場で上司が口にするラ・ラ・ランドトークに辟易している。

「正直、私はラ・ラ・ランドにハマれなかった側です。『Another Day of Sun』とか音楽は素敵だし、特にオープニングシーンが好きだけど、ストーリーは陳腐。最後のオチも既視感があるし、泣けなかったですね。でも、職場では41歳の学習院卒の既婚上司が絶賛。先週『この歳だけどラ・ラ・ランドハマっちゃったよ。見るなら絶対IMAXで見てこいよ!』と私を含む事務のコたちにやたらとすすめてきたんですよ」

 もちろん、沙知絵さんは上司の前で自分の感想など口にできない。さらに、その絶賛一辺倒の空気はFacebookではより濃くなっているという。

「ラ・ラ・ランドが微妙なことをFacebookで投稿できない雰囲気がすでに醸成されてますね。おじさんの絶賛投稿にはさらに別のおじさんから絶賛するコメントがつく。地獄です。『ラ・ラ・ランドマジでよかった』が前提で会話が始まるので、こちらは息を止めてじっとその場を耐えています」

◆すでに2回見たアピールおっさんが早くも登場

 IT企業で働く織田麻理恵さん(仮名・27歳・新宿区在住)は、かつて「シン・ゴジラ」公開時に職場で続出した「もう2回見たマウンティング」が始まっていることを嘆いている。

「昨年、『シン・ゴジラ』にハマった同じチームの37歳の先輩が今度は『もう2回見た』とこの映画を強く押してくるんです。その人は『今年1番、映画史に残る傑作!』と3か月に1回くらい言うタイプの人で、物事をどこまでも短期的にしか見ていないタイプ。こういうおじさんってすぐにアツくなって、また冷めて違う映画にハマるんですよ」

 麻理恵さんの周りの同僚はその先輩をどこまでも冷めた目線で見ているとか。

◆「お前、別にミュージカル映画なんて好きじゃなかったじゃん」

 さらに、麻理恵さんはラ・ラ・ランド絶賛おじさんへの怒りを続ける。

「何が1番ムカつくかって、『ミュージカル映画がちょっと苦手という人こそ観に行ってほしい』とリコメンドしてくること。お前、別にミュージカル映画なんて好きじゃなかったじゃん!そもそも、これまでミュージカル映画をどれだけ見てんだよと疑いますよね」

 職場の雑談やSNSで何かと話題となっている「ラ・ラ・ランド」。それゆえ、評判を聞きつけたおっさんが来週以降、大挙映画館に押し寄せることが予想される。すると今以上にTwitterやFacebookには誰からも頼まれていない「ラ・ラ・ランド批評」が書き込まれるだろう。

「2週間後くらいにビジネス誌系のWEBメディアで『ラ・ラ・ランドが予想外に日本人にウケている理由』みたいなタイトルの記事が出そうですよね。そしたらさらに被害状況は拡大するでしょう。その記事を何でも上から目線でコメントしたがるおじさんがNewsPicksで感想を投稿。でも、そんなの若者は読まない。どこまでも観客不在の構図です」(ネットニュース編集者・27歳・同志社女子大学卒)

 こうしたおっさんたちの傍若無人な振る舞いをどこまでも冷ややかに見つめている若者たち。ラ・ラ・ランドに感動するのは悪いことではないが、その感動はいたずらに発信すると若者から嫌われるリスクは高い。軽快な音楽を全身で感じたあとの高揚感は、映画館を出た後は、心の片隅に置いておくのがよいかもしれない。

<取材・文/日刊SPA!取材班>