長友や今野、さらには香川らがオマルを徹底的に封じ、UAEに主導権を渡さなかった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト特派)

写真拡大 (全3枚)

[W杯アジア最終予選]UAE 0-2 日本/3月23日/アルアイン  ヴァイッド・ハリルホジッチの采配が、面白いようにハマった試合だった。【PHOTOギャラリー】日本がUAEを撃破!   日本は立ち上がりから、「練習でも、ミーティングでも、口酸っぱく言われていた」(長友)というUAEの司令塔オマル・アブドゥルラフマンを徹底マーク。長友佑都と原口元気が激しい当たりと寄せで行く手を阻み、敵が中央に入ってきたところを今野泰幸がしたたかに狩る――。その共通認識が最後まで乱れることはなかった。  ボール支配率は前半が日本45%対UAE55%、試合全体でも42.4%対57.6%とUAEのほうが勝っている。しかし、これはマークを嫌ったオマルがボールを求めて最終ラインまで下がったから。前回対戦で2ゴールを挙げたFWアハメド・ハリルが欠場したこともあって、ゴールから遠い位置で回される分には怖さはなく、日本は激しい守備からカウンターを狙うために「ボールを持たせていた」印象だ。  マブフートの決定的なシュートをストップした川島永嗣のスーパーセーブや、後半早々のピンチでイスマイル・アルハマディがシュートを外してくれたことも日本には追い風となった。長友は試合後、「今回はかなり戦術的に戦ったと思う。オマルのストロングポイントは(右サイドから)中に入ってからのスルーパス。だから、左に流れるのは問題ないと思っていたし、実際、彼は何もできなかった」と胸を張ったが、綿密な準備を行なった指揮官の“戦術勝ち”と言っていいだろう。
 また、中盤を逆三角形にした4-3-3へのシステム変更も的中した。長谷部誠の代役に今野を抜擢するに当たり、ハリルホジッチ監督は「ガンバでどんな試合をしたか追跡し、そこで私にアイデアが沸いた」と話す。G大阪は2トップ、日本代表は3トップと前線の形こそ違えど、インサイドハーフに入った今野の役割は「走って、相手を潰して、とにかく自分の良さを出す」“普段”のそれだった。  今季G大阪で開幕から充実のパフォーマンスを続け、今野のインサイドハーフの適性はすでに証明されている。香川真司が「凄い運動量で、得点も取った。今のサッカーにコンちゃん(今野)のスタイルはすごく生きていますよね。経験であったり、プレースタイルは今のサッカーに欠かせない」と脱帽したように(今野本人は「出来過ぎです」と謙遜していたが)、長谷部を欠くハリルジャパン、特にUAE戦と同じシステムを使用する際には、間違いなくキーマンになるだろう。  ベンチで戦況を見守っていた岡崎慎司も、4-3-3システムについて次のように語る。 「新しいフォーメーションだったから、最初は『どうなるかな?』っていう感じだったけど、中盤がひとり増えて守備のブロックが厚くなっている分、相手に主導権を握らせず、良い距離感を保っていた。先制点の流れは、SBが空いていたので、上手く使ったと思うし、短い期間しか練習できなかったけど、選手が上手くやったかなと」

 逆にUAE戦で気になったのは、香川だ。オマルや他のボールホルダーに対してプレスをかけ、アンカーの山口蛍や最終ラインのカバーにも奔走するなど、守備面においては与えられたタスクがこなした。しかしそれはあくまで「最低限」(香川)の内容。相手が密集する狭いエリアでも縦パスを受け、周囲の選手とパス交換・連係、または短い距離のドリブルで敵を崩していく技術は“宝の持ち腐れ”になってしまう。背番号10も「ハードワークできないと試合には出られないし、それくらい割り切ってやるしかない」と複雑な胸中を明かす。  UAE戦を迎えるにあたり、香川と今野は「速い攻撃だけじゃ難しい。自分たちのリズムになった時にはしっかりボールをつなぎながら、落ち着かせることも大事」と話していたというが、実際はポゼッションよりもカウンター色の強いゲームとなった。「カウンターがこのチームの一番の強みになりつつある」(香川)なかで、ワールドカップ進出、そしてその先の本大会を見据えるならば、背番号10の最適な生かし方を見出さなければならない。 取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト特派)