江戸から昭和の俗世を妖艶に彩るニッポン「毒婦」列伝

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 今月二九日、和歌山地裁は、ヒ素入りカレー殺人事件で死刑が確定(二〇〇九年最高裁)している林真須美死刑囚が申し立てた“再審請求”について、可否の決定をする。

 再審が認められても検察側の異議申し立てで再審開始が取り消されることもあるのだが、もし請求が認められると、ヒ素(亜ヒ酸)入りカレーで四人を殺害し、さらに六十三人への殺人未遂で死刑判決を受けた林死刑囚に“逆転無罪”の判決が下される可能性が出てくる。最近の例で言えば、保険金目当てで小学六年生の長女を放火、殺害したとして無期懲役に服していた夫婦に無罪判決が下された“東住吉事件”や“東電OL殺人事件(犯人とされたネパール人に無罪判決)”などがある。

 林死刑囚が無罪になれば夏祭りのカレーに毒物を盛った犯人が誰かはわからなくなり、事件が迷宮入りするだろうことは必至だが、もともと冤罪の可能性は否定できないとも言われていた。事件の証拠となったヒ素を鑑定したのは東京理科大の中井泉教授(分析化学)だったが、鑑定方法の信憑性が揺らいでいるのだ。週刊新潮の取材に、全国紙のデスクが応えている。

「兵庫県佐多町の大型放射光施設『スプリング8』を用いた鑑定では、事件現場に残された紙コップに付着したヒ素と、真須美宅の台所の容器に保管されていたヒ素が同一物とされ、犯行の裏付けとなりました」

 ところが、この鑑定結果に河合潤・京都大学大学院教授(材料工学)が異を唱えた。河合教授は、昨年十一月、鑑定書を見てすぐにおかしな点に気づいたという。

「同一の証拠資料を分析し、含まれている微量元素の濃度を“ピーク強度”で表したグラフがあります。ところが、同じものなのに、複数回の測定でSn(スズ)やSb(アンチモン)の強度が異なっている。実はスプリング8の分析とはこれほど大雑把で、例えれば料理のとき、砂糖の重さを体重計で計るようなもの。誤差が大きく、事件の鑑定には不向きなのです」(週刊新潮より)

 裁判では、通称“林真須美関連亜ヒ酸”と呼ばれた六種類のヒ素(台所や親類など関係先から提出されたもの)が用意された。河合教授が続ける。

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