国連・北朝鮮制裁委員会元専門家パネルメンバーの古川勝久氏が、日本記者クラブで会見。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の実兄である金正男氏が殺害された事件が起きたマレーシアこそが「北朝鮮の非合法活動の主要拠点」だったとし、北朝鮮制裁の抜け穴になったと指摘した。

写真拡大

2017年3月16日国連安保理・北朝鮮制裁委員会元専門家パネルメンバーの古川勝久氏が、日本記者クラブで会見した。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の実兄である金正男氏が殺害された事件が起きたマレーシアこそが「北朝鮮の非合法活動の主要拠点」だったとし、北朝鮮制裁の抜け穴になったと指摘。北朝鮮がマレーシアとの多くのジョイント・ベンチャー・ビジネスを通じて、さまざまな国連制裁違反を行っていた可能性がある、と明らかにした。

今年2月13日の金正男氏殺害事件まで、北朝鮮とマレーシアは国交を結ぶなど親密な関係だったが、事件後、報復措置の応酬をエスカレートさせている。

古川氏は同専門家パネルのメンバーとして昨年まで4年半務め、北朝鮮に対する制裁を国連加盟国が履行しているかに関する報告書作成に携わった。
古川氏の発言要旨は次の通り。

昨年まで私が所属した国連安保理・北朝鮮制裁委員会・専門家パネルが、2月27日、最新版の年次報告書を公表した。たび重なる制裁にもかかわらず、なぜ北朝鮮が核・ミサイル、通常兵器の密輸やマネーロンダリングのネットワークを世界各地に張り巡らせたのか、その実態が明らかにされている。金正男殺害事件の舞台となったマレーシアこそ、北朝鮮の非合法活動の主要拠点だった。

金正男氏殺害事件の容疑者として逮捕されていたリ・ジョン・チョル氏の法律上の雇用主であったチョン・チン・チー氏は、マレーシアにあるトンボ・エンタープライズ社の社長である。マレーシア警察によると、チョン氏は「リ氏には同社での勤務実態がなく、彼の就労許可証の取得を支援するために会社の名義を貸していただけ」と説明している。また、チョン氏はメディアのインタビューに対して、約10人の北朝鮮人の就労許可証取得にも協力してきたと語っている。

マレーシア警察は、金正男氏殺害事件への関与を裏付ける十分な証拠が得られなかったとして、リ氏を釈放した。その後、同氏の労働許可証の期限が切れていたため、マレーシア不法滞在を理由に国外退去処分とした。

リ氏はクアラルンプール市内で、比較的高級なアパートに暮らしていた。リ氏はマレーシア国内でどのような活動を行っていたのか?本当はトンボ社で何らかの雇用実態があったのではないか?トンボ社のパートナーである香港企業のグローバル・ネットワークを、北朝鮮のために悪用していなかったのか?また、チョン氏が支援したとされる「10人の北朝鮮人」とは、いったい何者で、どこでどのような活動を行っているのか?すべてが闇のままである。

朝鮮中央通信に引用された海外企業には、国連制裁違反事件に関与した企業や関与が疑われる企業が多く存在する。特にマレーシア国内にはそのような企業が多い。例えば、マレーシアと北朝鮮のジョイント・ベンチャー企業であるMKPグループは、朝鮮中央通信に頻繁に紹介されてきた。国連安保理・北朝鮮制裁委員会・専門家パネルは、2017年度の最終報告書で、同社の子会社銀行の活動が、国連安保理決議で禁じられた活動を行っている容疑で捜査中、と報告している。

安保理決議では、北朝鮮の銀行との取引関係の維持が禁じられており、北朝鮮に所在する子会社や銀行口座の閉鎖も義務づけられているが、MKPグループの銀行がこれら制裁措置違反の可能性が考えられている。また、MKPグループの主要事業の一つに、アフリカなどでの銅像などのモニュメントの建造も含まれ、安保理決議で禁止されている「銅像の輸出」が行われている可能性も、同報告書で示唆されている。

MKPグループのもう一つの主要事業として、船舶建造がある。同社のホームページで紹介されている「船舶」の中には、海軍の艦船らしき船が紹介されている。もしこれらが海軍向け艦船であれば、北朝鮮との「兵器及び関連物資」の取引を禁じた国連制裁にも違反していることとなる。