昨今では「リバイバル塗装車」が全国の多くの鉄道路線を走り注目を集めている。「リバイバル塗装車」とは、かつて鉄路を彩った懐かしい色を復活させた車両のこと。各地の鉄道会社が続々と復活させていて、それこそ “隠れたブーム”になりつつある。

 

例えば、本記事のトップの写真。イエローとウォームグレーの電車は、1969年から長年にわたり西武鉄道を走り続けてきた101系電車の誕生当時の色だ。このオールドカラーの電車がいま、伊豆箱根鉄道駿豆線(すんずせん)で復元され走っている。西武鉄道のオールドファンには懐かしく、若い世代には新鮮に感じられる、そんな色の電車に伊豆半島を走る鉄道路線で出会えるのだ。

 

こうした「リバイバル塗装車」が、今なぜブームとなっているのだろう。まず、鉄道会社としては鉄道ファンはもちろん、少しでも多く人に注目され乗りに来てもらいたいという思いがあるだろう。さらに、従来の塗装方法に比べてラッピング塗装が手軽にできるようになったことも、こうした「リバイバル塗装車」を増やす一因にもなっていると思われる。

 

全国で次々に復活するオールドカラーの電車たち……。そこで本稿では、全国を走る代表的な「リバイバル塗装車」のいまを追ってみた。

 

【その1】東武鉄道東上線50090型「フライング東上号」

↑東上線を走る50090型「フライング東上号」リバイバル塗装車。朝晩はTJライナーとして走る

 

行楽用電車として親しまれた「フライング東上号」がリバイバル

なかでも、リバイバル塗装車の復活に熱心なのが東武鉄道だ。2015年11月から走る「フライング東上号」リバイバル塗装車。東上線が全通してから90周年になることを記念して、50090型10両1編成と8000系4両1編成が、鮮やかなブルーの車体に黄色い帯を巻いた姿にラッピングされ、リバイバル塗装車として走り始めた。電車の愛称は「BLUE BIRD 青い鳥号」だ。

 

この「フライング東上号」、戦後まもなくの1949(昭和24)年から1967(昭和42)年まで運行していた行楽列車で、長瀞(ながとろ)や外秩父へ向かう行楽客に親しまれた。復活した「フライング東上号」のリバイバル塗装車だが、当初は約1年限定の運行予定だったが、好評だったこともあり現在も50090型リバイバル塗装車が走り続けている。

 

【その2】東武鉄道亀戸線8000系リバイバル塗装車

↑「昭和30年代の通勤形電車標準色」に塗られた8000系。昭和30年代、短期間のみ使われた塗装だ

 

オレンジ色の通勤形電車標準色と、緑色の試験色車両の8000系2編成が走る

東武鉄道の亀戸線は亀戸駅〜曳舟駅間3.4kmの短い路線。この亀戸線には2両×2編成のリバイバル塗装車が走っている。

 

まず1編成目は、2016年から走り始めたインターナショナルオレンジに黄色の帯の組み合わせ。「昭和30年代の通勤形電車標準色」という塗り分けで、1958(昭和33)年から投入されたカラーだ。その後、インターナショナルオレンジとロイヤルベージュの2色の塗り分けに統一されたため、1964(昭和39)年ごろに姿を消した短命だったカラーでもある。

 

↑こちらは緑色に白い帯の8000系。昭和30年代に登場した試験塗装車両が再現された

 

つづいて2編成目は、2017年2月に登場したグリーン色に白い帯という編成。昭和30年代に試験塗装車両として、わずか4両のみが塗られて走ったという希少なカラーの電車が復活している。

 

【その3】京浜急行電鉄800形リバイバル塗装車

↑通常の800形は赤一色に白い帯だが、800形リバイバル塗装車両は側面の白い部分が多くなっている

 

約32年ぶり! デビューしたころのカラーを再現

京浜急行電鉄(以下:京急電鉄)の800形といえば、本線や支線を走る普通電車としておなじみの車両で、赤に白い帯の車体が特徴。2016年11月に登場したリバイバル塗装車両は、基本となる車体の赤い色は同じだが、加えて側面の窓付近の白色スペースが色分けされた。

 

実はこの塗り分け、800形が1979(昭和54)年に登場した当時のカラー。800形が1984年ごろまでに現在の色に変更されてしまったこともあり、約32年ぶりの復活となった。このリバイバル塗装車は登場時にはイベント列車としても活用され、1編成しかない貴重な車両として人気になっている。

 

【その4】京王電鉄京王線8000系高尾山ラッピング車

↑京王線の電車の中では異彩を放つ高尾山ラッピング車。黄緑の車体側面には高尾山のイラストが入る

 

1983年まで走った黄緑色の2000系の車体色を再現

京王電鉄京王線の車体といえば、正面が淡いクリーム色、ステンレス車体にピンクと紺色の帯が巻かれた車体色が一般的だ。そんな中で異彩を放つのが、高尾山をイメージした8000系ラッピング車両。1957(昭和32)年〜1983(昭和58)年に走った2000系の色を再現した車両で、2015年9月から走り始めた。

 

側面には四季折々の高尾山のイラストが入り、爽やかさを演出している。沿線にある高尾山のPRのために走り始めたリバイバル塗装車だが、民鉄としては始めて「第10回東京屋外広告コンクール」で東京都知事賞を受賞。その効果の高さが実証された。

 

【その5】伊豆箱根鉄道大雄山線5000系赤電塗装

↑赤電塗装となった5000系5501編成。5501編成は5000系で唯一の鋼製車両でもある

 

かつて大雄山線を走ったオールドカラー“赤電”が復活

伊豆箱根鉄道は神奈川県内の小田原駅〜大雄山駅間を走る大雄山線と、静岡県内の三島駅〜修善寺駅間を走る駿豆線(すんずせん)の2つの路線を持つ。そのうち大雄山線では開業90周年ファイナル・イベントとして、2016年10月から5000系を“赤電塗装”に塗り替えて走らせている。

 

“赤電塗装”とは西武鉄道が1970年代まで走らせていたラズベリーレッドとベージュの2色に塗られた電車のこと指す。伊豆箱根鉄道が西武グループの一員であることから、大雄山線の車両もかつては赤電塗装だった。その赤電塗装を、大雄山線の主力車である5000系で復活させたのだ。白(車体は銀色)と青色に塗り分けた5000系の中で、1編成限定の赤電塗装車は異彩を放っている。

 

【その6】伊豆箱根鉄道駿豆線1300系デビューカラー

↑駿豆線の1300系。西武鉄道・新101系として誕生したころの色が復元された

 

元西武鉄道・新101系のデビュー当時の色を再現

大雄山線の赤電塗装に続き、伊豆箱根鉄道の復刻バージョン第2弾として登場したのが駿豆線の1300系だ。駿豆線の1300系は元西武鉄道の新101系。2008年から駿豆線を白地に青という車体色で2編成が走り始めた。そのうち1編成を2016年12月に黄色とベージュの塗り分けに変更。実はこの車体色は、西武鉄道・新101系がデビューした時の色だ。

 

色変更にあたり付いた愛称が「イエローパラダイストレイン(YPT)」。「ドクターイエロー」や京急電鉄の「イエローハッピートレイン」のように、黄色い電車の色というのは見ればハッピーになれる。そんな逸話を生み出しやすい色なのかも知れない。

 

【その7】富士急行1200形(京王5000系塗装)

↑クリーム色に赤の細い帯は元京王電鉄5000系のオリジナル色。京王当時の車両番号が付く

 

京王電鉄を走った5000系の当時の色が富士急行を走行中

1960年代に造られ京王電鉄京王線の5000系。主力車両として活躍した後に地方の民鉄各社に多くの車両が引き取られ、いまでも主力車両として活躍している。

 

富士急行の1000形と1200形も、そんな元5000系を改造した電車だ。富士急行では2013年、京王の5000系が誕生して運転開始50周年を迎えることから、京王当時の塗装を再現。さらに車両番号は5113号車と5863号車という、譲渡された当時の車両番号を付け変え、イベント列車として走らせた。

 

この編成以外の富士急行では、富士急行の旧標準色とされる青色と水色に白帯という1000形のリバイバル塗装車も走る。さまざまな色に塗られた元5000系が行き交う富士急行。リバイバル塗装車以外にも観光特急やJRからの臨時列車の入線など、多彩な車両群に出会える鉄道路線でもある。

 

【その8】近江鉄道820形“赤電塗装”

↑正面には「赤電」の案内板が付く。近江鉄道820形は元になった西武401系の姿形を色濃く残す

 

高度成長期の輸送を支えた西武鉄道401系の姿が近江で復活

路線の開業は1898(明治31)年と、西武グループの本家・西武鉄道よりも長い歴史を持つ近江鉄道。創立120周年記念企画として、820形電車1編成が2016年6月に赤電塗装に塗り替えられた。

 

820形は元西武鉄道の401系。多くが近江鉄道に譲渡され、その後は2タイプに改造された。そのうち2両×12編成は正面の形を大きく変えた800形に。車体の四隅を削った程度の変更に留めた2両×2編成を820形とした。

 

赤電塗装となった車両は820形822編成で、1967(昭和42)年に西武所沢工場で造られたオリジナルに近い姿を残す。近江鉄道の路線を赤電塗装で走る姿は、まるで1970年ごろの西武沿線を彷彿させるかのようだ。

 

【その9】京阪電気鉄道700形「80型塗装車」

↑浜大津駅を発車する700形リバイバル塗装車。緑2色で塗られた車体が併用軌道区間を走る

 

かつて大津線を走った80型塗装車が姿を変えて復活

滋賀県内(一部、京都市内まで乗り入れ)を走る京阪電気鉄道大津線(京津線・けいしんせん、石山坂本線とまとめて呼ぶ路線名)。2つの路線の接続駅の浜大津駅付近で、電車が道路を走る併用軌道区間があることから、路面電車の仲間に色分け、京阪本線とは離れた路線網を形成している。

 

そんな大津線のうち石山坂本線を走る700形1編成が、2016年9月に80型塗装車に塗り替えられた。80型とは大津線の近代化に役立った電車で1961(昭和36)年から1997(平成9)年まで走り続けた。他形式にはない緑2色の塗装で、利用客に親しまれている。ちなみに、この700形のリバイバル塗装車は2020年3月まで運行される予定だ。

 

【補足】リバイバル塗装車に出会う方法は……?

懐かしい姿を再現したリバイバル塗装車。出会いたいと思う方もいることだろう? では、どうしたらうまい具合に出会うことができるのだろうか。

 

まずは鉄道会社のホームページを見ることをお勧めしたい。こうした希少車の運行予定を公表している会社もある。また、ホームページで公表していない場合でも、中小私鉄ではほぼ運行予定を教えてもらえる。各社テレホンサービスなどに問合わせてみたい。

 

なお、大手私鉄となると運行状況を公表していない鉄道会社もあるが、首都圏の路線の場合、鉄道ファンが立ち上げた各線の車両運用サイトがあり、リバイバル塗装車が今日、どの時間にどこを走っているか把握することができる。

 

いずれにしても、行き当たりばったり出向いても出会えない場合が多いので、事前に確認することをお勧めしたい。行く当日、もし走ってなかった場合は、中小私鉄であったら車両基地に出向くのもひとつの方法だ。中小私鉄の車両基地は小さめのところが多く、周囲からでも車両を見ることができる場所が多い。

 

なかなか楽しいリバイバル塗装車との出会いだが、色の変更は期間限定ということも多い。行ったらもう走っていなかったということもある。必ずネットや鉄道各社に確認したうえで出向きたい。