アフィア・ナサニエル監督

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 パキスタン映画「娘よ」が、3月25日に公開される。第87回アカデミー外国語映画賞のパキスタン代表作品で、また、同国の作品が日本で公開されるのも本作が初となる。児童婚という同国の社会問題を扱うが、風光明媚な山岳地帯を映すロードムービーでもあり、スリラー、カーチェイスのような娯楽的要素もある、多角的な視点を含んだドラマだ。来日したアフィア・ナサニエル監督に話を聞いた。

 パキスタン、インド、中国の国境付近にそびえ立つカラコルム山脈。その麓では数多くの部族が暮らし、衝突と融和を絶えず繰り返していた。ある日、部族間で衝突が起こり、トラブルを収める代償として、相手部族の老部族長と10歳になるゼナブとの婚姻が求められる。その事実を知ったゼナブの母アララッキは幼い娘を守るため、掟を破り部族からの脱出を図る。

 とある部族の母親が子供をつれて逃げたという実話が基になっている。「そのエピソードがどうしても心から離れなかったのです。児童婚の事実を伝えるよりも、この題材をフィクションにして、脚本を書いてみたいと思ったのです」

名誉殺人や、幼児結婚など国の文化の負の部分を描いた作品を発表したことで、困難はなかったのだろうか。

 「残念なことに、世界中にパキスタンのニュースが広がるときは、ネガティブな話題が多く、恐ろしい国だという印象を持たれているのではないでしょうか。でも、パキスタンにも2種類の人がいます。古い考えに固執し、名誉や血筋を重要視する人たちがいる一方で、世界を変えようとか、国のよいところを表に出していこうというグループもいます。この映画は、後者のグループがとてもサポートしてくれました」

 「若い女性たちが自分の意思に反して、どんどん結婚していくなんてよくないこと。とある州では、部族が存在し、3人の中で1人が18歳までに結婚させられるという事実があったんです。この作品を発表したことによって、法律も変わって、今まで16歳で合法だった結婚が、18歳まで引き上げられました。大事なメッセージを伝えることによって、国が動いたり、人が動いたりすることを体験しました。それは自分がフィルムメーカーとして映画を作る醍醐味だと思っています。古い考えを引きずる人ばかりではなく、頭がよく前進的な人がいる国では、変化が生まれると思います」

 イスラム教が国教のパキスタン。映画の宗教的な検閲について聞いた。「今作に関しては、一切検閲には邪魔されずに伝えたいことをすべて伝えることができました。イスラム教の国家を考えると、イランはとても厳しいのだと思います。実は、パキスタンはメディアやジャーナリストに対して自由に報道させます。国の権力者でも、とめることはできないのです。ですからとても前進的なグループが、国際化に向けて盛り上がっています。表現の自由も尊重されて、この映画も何の問題ありませんでした」

 パキスタンでテレビ制作にかかわる女性は多いが、映画監督は隣のインドに比べほとんどいないという。自身はCM制作を経験し、その後米国コロンビア大の映画学科に入学。ニューヨークを拠点に活動している。「インドにはたくさんの女性監督がいますが、パキスタンでは4〜5人くらいでしょうか。インディペンデントで、小さなグループでがんばっています。今、私は米国にいますが、世界の市民だと考えています。自分の伝えたい物語がある場所の人間になるのです。フィルムメーカーとして、文化の架け橋になりたいと思っています」とほほ笑んだ。

 「娘よ」は、3月25日岩波ホールで公開。