連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第25週「時の魔法」第143回 3月23日(木)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


143話はこんな話


栄輔(松下優也)が明美(谷村美月)に一緒にならないか、と告白し、ついに明美は長く住んだキアリス一号店の2階から旅立つ。

妻が美しい歌を自由に歌い、その姿を夫が見守っている。


紀夫(永山絢斗)たちが退職を決め、次の社長は足立武(中島広稀)に決まった。
中西(森優作)の堪らなく嬉しそうな拍手の仕方に和む。

「君の汗かく姿、君のひとを見る優しい目、君のまっすぐなところ」と紀夫が足立に言う台詞が、まるで恋の告白みたいではないか。

大急会長(伊武雅刀)に挨拶に行くと、会長は会長で、結婚式のスピーチみたいなことを言う。

「世間では夫婦というものを夫の後を妻がついていくと言うが、君たちは逆なんだなあ。
妻が歌い、先を歩く。夫が後ろをついていく。
妻が美しい歌を自由に歌い、その姿を夫が後ろ手見守っている。
そうして幸せな家庭や会社をつくりあげた。
それを慈しみ、大切に育て、守ってください」

「妻が歌い、先を歩く」という言葉は、タイトルバックのすみれのスキップにつながっているような気がした。
あと、77話の「飲んで、食って、歌へ」という名言も思い出す。

お互い次のステージやね


引退するすみれに対して、50歳過ぎて職場復帰しているゆり(蓮佛美沙子)。
歳とった世代にも希望を残した流れ。『べっぴんさん』は古門とすみれの生き方の違いのエピソードといい、
できるだけ、いろいろな選択肢を残し、ひとつに決めないようにつとめている印象がある。

おまえは今日からファッション評論家や


潔(高良健吾)が命名して、栄輔(松下優也)は「ファッション評論家」に。ピーコやドン小西みたいなものか。
「楽しく生きようや」と潔は、若いときも年取っても常にポジティブだ。

一緒になったらどやろ


明美「うきうきしてきた」
栄輔「かいらしなあ」
明美「何言ってんや」
栄輔「ほんまやで」
明美「なんや調子狂うな」

ここのとこ、まとめばかりだった「べっぴんさん」だが、久々に心震える場面が表れた。

レリビィに来た栄輔を見て、気を利かせ外に出る龍一(森永悠希)。あんなに空気を読まなかった子供が、すっかり気の利くようになって・・・(涙)。

明美とふたりきりになった栄輔は、「一緒になったらどやろ」と切り出す。
プロポ、きた〜!
と思ったが、フランス婚的なやつだろうか、「いやや思ったらおらんようになっていい。かっちり縛られるんじゃなくて、臨機応変に」ということでとりあえず「一緒に住まへんか」と言われ、「それやったら家を建てるわ」と明美。貯め込んだ(やっぱり)お金を「あの世にはもっていかれへんやろ」「何に使うか考えてたんや」と。
うがった見方をすれば、栄輔にとっては渡りに船である。でも、これがタイミングというもの。
「かいらしな」とさくらにかけていた言葉をついに別の人に。それだけで、戦争であらゆるものを喪失した栄輔がようやく長いトンネルを抜けたことがわかる。視聴者もほうっと一息つけたことだろう。

自転車ひとつに乗る荷物で出ていくふたり。なんてつつましい。
「明美ちゃんの人生に小さな一輪の花が咲きました」(語り/菅野美穂)。
いい終わりだったが、今週、最終回じゃないよね。あと、一週、何が起こるのだろうか。
(木俣冬)