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 『怪盗グルー』シリーズや『ミニオンズ』などの作品で知られるイルミネーション・エンターテインメント最新作『SING/シング』が、現在大ヒットを記録している。マシュー・マコノヒー(吹替版:内村光良)、スカーレット・ヨハンソン(吹替版:長澤まさみ)、タロン・エガートン(吹替版:スキマスイッチ大橋卓弥)、リース・ウィザースプーン(吹替版:坂本真綾)らが豪華キャストが共演を果たしている本作では、60曲以上の楽曲とともに、倒産寸前の劇場支配人コアラのバスター・ムーンが、愛する劇場を再生させるため歌のオーディションを開催する模様が描かれる。リアルサウンド映画部では、『リトル・ランボーズ』などの監督作で知られ、本作で初めてアニメーション映画に挑戦したガース・ジェニングス監督にインタビューを行ない、実写映画とアニメーション映画の制作の違いや、イルミネーション作品人気の秘密などについて語ってもらった。

参考:『SING/シング』大ヒット・スタート! アニメ界はディズニーとイルミネーションの二強時代へ

ーー今回の作品では、60曲以上の様々なジャンルの楽曲が使用されていますね。取り上げる楽曲はどのように選んでいったのでしょうか?

ガース・ジェニングス(以下、ジェニングス):楽曲については、各キャラクターのイメージに合うのはもちろん、それぞれのキャラクターの物語のその瞬間に合うような楽曲を選んでいくことを意識したんだ。例えばロジータの場合、彼女は最初に登場する時点からラジオでポップス系の音楽を聴いているよね。だから彼女が歌う楽曲もポップス系の音楽になるという流れなんだ。そうやって楽曲を選んでいったことにより、権利の問題をクリアしたり、新たにレコーディングをする場合のアレンジを考えたりしなければいけない音楽チームをはじめ、僕たちにはとても大変な作業が待ち構えていた。音楽を映画に盛り込むのはとても難しいことなんだ。僕自身が入れたかった楽曲もたくさんあるんだけど、シュービー・テイラーの「スタウト・ハーテッド・マン」はどうしても使いたかった。おそらく誰も聴いたことがない楽曲だと思う(笑)。でも、本当にユーモラスで大好きな曲だったから、オーディションの場面でカバが歌うシーンでその楽曲を使ったんだ。この曲を使えたことは僕自身もすごく誇らしく思っているよ。

ーーあなたはこれまで、レディオヘッドやブラーなどのアーティストのミュージックビデオも多数手がけていますよね。その経験が今回の作品に生かされたことはありましたか?

ジェニングス:MVを手がける時によく考えることは、いかに映像でその瞬間を切り取るか、そして音楽と映像をどう合わせていくかということ。経験を重ねた今となってはあまり考えることもなく、フィーリングや本能でできるようになったし、それがいいものとして成立するかどうかはまた別問題だけどね。とにかく僕は音楽と映像を合わせていくことが大好きなんだ。その経験があったことは、今回の『SING/シング』にも間違いなく生かされていると思う。MVを撮ってきたことが特に助けになったのは、みんなが集まって歌う最後のシーンだね。ひとつのMVの中で生まれるようなストーリーがいくつも重なってひとつに集まるという、素晴らしい瞬間になっていると思うよ。

ーー『SING/シング』はあなたにとって初めてのアニメーション監督作になりますね。そもそもどのような経緯で監督を務めることになったのでしょうか?

ジェニングス:実は本作のプロデューサーのクリス・メレダンドリとは、彼がイルミネーション・エンターテインメントを立ち上げた直後の2008年ごろに会っていたんだ。僕が一番好きなイルミネーション作品は『怪盗グルー』なんだけど、その話を聞いたのも製作に入る前の段階だったかもしれないぐらいだね。最初にクリスに会った時は、いろいろなプロジェクトの話をなんとなく話していただけだったんだけど、2011年にクリスがロンドンまで僕に会いに来てくれた。一緒にお茶をしながら、クリスが「実は歌のコンペティションに参加する動物たちの作品を作ろうと考えているんだ」とシンプルなアイデアを教えてくれて、映画として面白いと思うかどうかを相談してきた。僕はそれがすごく面白い映画になると思ったから、そこからアイデアを書き始めたんだ。つまり、5年前からこのプロジェクトはスタートしたってことなんだよね。

ーー実写とアニメーションとで、映画制作における違いを感じることはありましたか?

ジェニングス:実写作品を監督する場合、僕は撮影に入る前からかなり計画性を持って入念に準備をするタイプなんだ。だから、絵コンテなどを必要とするアニメーションの場合は、準備がより大事な要素になってくる。実写の場合は、どれだけ準備をしていても、現場に入って撮影が始まってしまえば、そのシーンを撮る瞬間がすべてだ。一方アニメーションの場合、その瞬間が大事というよりは、常に大変な状態が続いていく。実写の場合の一瞬が、アニメーションの場合には半年ぐらいかかったりすることもある。それは大きな違いだよね。ただ、作品に関わっている人たちが、常に同じ方向に向かって、同じ視点でストーリーを綴っていこうと気持ちを共有するという点では、実写もアニメーションも変わらないと思うよ。

ーーイルミーネションの作品は、ディズニーやピクサー、ドリームワークスなどに比べると歴史は浅いですが、多くの人々の心を捉え、どの作品も大ヒットに繋がっていますよね。その理由をなんだと思いますか?

ジェニングス:とてもいい質問だね。作品を作ることに注力していたから、これまでそういうことを考えたことがなかったよ。ひとつ言えるのは、僕はほかのイルミネーション作品がどのように作られているのかはわからないけど、イルミネーションで働いている人々の姿を見ると、ものすごく強いイルミネーションの文化というようなものを感じたんだ。最高のものづくりをする、そのための環境をきちんと作る、アーティストたちの力を目一杯引き出そうとする姿勢などがそうだね。そういったスタッフたちの姿勢も含めて、やっぱりクリス・メレダンドリの存在が大きいんじゃないかな。ピクサーにおけるジョン・ラセターもそうだけど、素晴らしいスタジオには強いリーダーの存在がある。イルミネーションの作品もすべてクリスが製作してきたわけだから、そういうことなんだと思うよ。イルミネーションは短期間のうちにたくさんのことを成し遂げている本当に素晴らしいスタジオだ。関わっているスタッフたちも飛び抜けた才能を持った人ばかりで、アニメーターやデザイナー、キャストも含めて、力のある人たちと一緒に仕事ができて僕も光栄だったよ。とにかく僕はイルミネーションに対して愛情でいっぱいなんだ。続編の製作もすでに決まっていて、引き続き僕が監督をする予定だよ。(宮川翔)