すでに世界中で超弩級のヒットをぶちかましている実写版『美女と野獣』。みんなも気になるよね! ね!!(ほぼ強制) じつは、あたしがこの仕事をするきっかけになったのはこのオリジナル版のアニメだったんだよね……(遠い目)。それくらいあたしにとっては思い入れの強い映画。だからこそ、日本でも世界でもみんなに観てもらいたいのよ〜。ミュージカル好きで、恋愛ものが好きなら太鼓判の極上ファンタジーに仕上がってるから期待してて!(もちろん、それが苦手な人にはあまりよろしくない反応出ることは承知の助)。

ところがよ。妙な横やりというか、ネガティブなニュースも出てしまっているのよね。それが「ディズニー初のゲイキャラ登場」ってネタ。これ、ネタもとは監督なんだけど、今やその監督がニュースの火消しに回るほど広まっちゃったの。LGBTQが違法、もしくは社会的にダメっていう国では、作品自体が上映できなかったり、ありえないカットをされたりしているとか。もう、信じられない……。

っていうのも、観ればわかるんだけど、マジで騒ぎ立てるほどのシーンじゃないのよ! むしろ、その程度のシーンならば、他の映画でもたくさんやってるし、観てもいない人たちがギャーギャー騒ぐようなもんでもない。むしろ、LGBTQに偏見ある人が観たら、そのシーンの意味すら気づかないんじゃないかってくらい。

事の発端は、監督がイギリスのゲイ雑誌『Attitude』(イギリスで一番歴史のあるゲイ雑誌で、この号はエマ・ワトソンとダン・スティーヴンスがカバーモデル)のインタビューで、「ガストンの舎弟、ル・フゥがガストンへのあこがれを持ってて、ゲイ的瞬間を迎える」って発言したこと。

ジョシュ・ギャッド演じるル・フゥ(左)とルーク・エヴァンズ演じるガストン(右)

……だからなに?っていうくらいの話なのよ。ファミリー向け作品を製作するディズニーだから、いくらゲイ的瞬間っていっても、露骨な濡れ場があるわけないし、アニメ版『美女と野獣』でのル・フゥを知ってる人なら「あー、なるほど。あのキャラを2017年版にアップデートしたわけね」ってわかるはず。監督が言いたかったのは、セクシュアリティの話じゃなくて、キャラやストーリーを今の社会に適したアップデートにしたっていうコンセプチュアルな話なわけよ。

そう考えると、みんな大好き『アナと雪の女王』だって『ベイマックス』だって、『ズートピア』だって、今らしい話でしょ? それに対して、オリジナルの『美女と野獣』や、あの頃作られた『アラジン』や『リトル・マーメイド』など、今観るとちょっと古くさいのは否めないわよね? お姫様が王子様を待つ(イコール女性が弱き存在)的な伝統的ディズニープリンセスの流れだもの。それを貫きすぎて、観客のニーズとズレたことで、一時は見向きされなくなったディズニー・アニメーションは、近年の作品でキャラ設定をアップデートしまくってるの。その代表が、『塔の上のラプンツェル』。"プリンセスにも現代女性の感情と気丈さを"っていうコンセプトに切り替えたのよ。だからこその毎年毎作大ヒットに結びついているし、みんなも大好きでしょ〜?

だから、『美女と野獣』の実写版をたかだかキャラ設定の変更だけで「観ない!」ってするのは、その方、人生大損よ。しかも、マジでたいしたこっちゃないんだから。

そもそもですよ。オリジナル版だってLGBTQの隠れたメッセージがあったってのに、そこをスルーするたーどういうこっちゃい。ちょいマニアな見方なんだけどね。あの名曲ぞろいのサントラは、今作も手がけたディズニー・レジェンドの作曲家アラン・メンケンと、その盟友の作詞家ハワード・アシュマン。アシュマンは、この作品の公開直後にエイズで他界しちゃったのね……。もちろんゲイだったんだけど。で、ガストンが村人をあおって野獣狩りに出るときの歌「The Mob Song(夜襲の歌)」には、マジョリティがマイノリティを攻撃する偏見の浅はかさや、マイノリティの孤独が込められてるのよ。そこらへんは、ここで掘り下げてくれてるから参考にしてね。

ホント、謎なのよね……。セクシュアル・マイノリティってキーワードが出るととたんに批判する人って。いやまぁ、宗教上の問題抱えてる人は批判するだろうけど、それも「自分とは無縁のよそ様のお話」なわけで。そこに対してとやかく批判するのって、ちょっと違わない?と思ってしまう今日この頃。おまけに、LGBTQが禁止されている背景を持つ人の中にも、確実に当事者はいるわけだしさー。よそ様を批判する前に、ご自身の偏見の方を見つめ直した方がよろしいんじゃないかしら。