侍ジャパン・菊池涼介【写真:Getty Images】

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米283勝の名投手ジム・カート氏、殿堂入り選手に例える「ロベルト・アロマーのよう」

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は22日(日本時間23日)に全日程を終え、アメリカの初優勝で幕を閉じた。2大会ぶり3度目の優勝を目指した野球日本代表「侍ジャパン」はそのアメリカに準決勝で敗北。2大会連続で4強で散り、23日に帰国した。準決勝は先発した菅野らが好投したものの、1-2と惜敗。失点はいずれも守備のミスが絡んだものだった。

 最初に綻びが出たのは菊池だった。0-0の4回、菅野が1死からイエリチをニゴロに打ち取ったかに見えたが、菊池がイレギュラーした打球を大きく弾き、ボールは転々。イエリチは快足を飛ばして二塁に進んだ。その後、2死一、二塁となり、マカチェンの適時打で先制点を許した。この場面では菊池にエラーがついた。

 これまで鉄壁の守備で何度も日本を救ってきた名手の失策には大きな衝撃が走ったが、米国ではどう伝えられたのか。

 米国で試合を中継した「MLB NETWORK」では実況が「4度のゴールデングラブを獲得している彼ですが、これは打球が芝の部分で弾んだのでしょうか? いずれにしても痛烈な当たりでした」と振ると、この日解説を務めたメジャー通算283勝の名投手、ジム・カート氏は「打球が滑るように弾みましたね。体勢を落とし、グラブを下から出し、上からはしっかり手でも押さえようと彼はでき得ることを全て行いましたが、打球が横滑りするように弾んでいきました。チームUSAにとっては大きいです」と分析し、捕球できなかったことを責めなかった。

 その前の3回にはポージーを一塁に置いた場面でスタントンの三ゴロを併殺にしたかに見えたが、米国側が要求したビデオ判定の結果、菊池の足が二塁ベースから離れており、ポージーのみセーフに。その場面でもカート氏は「キクチは本当に“滑らかなグラブさばき”というものを分かっていますね」と評し、「みなし判定、というのはありますが、少し離れていたかもしれません。キクチのプレーはロベルト・アロマーのようだという人もいるかもしれませんね、手と足さばきが本当に素早い」と、オールスター出場12回、ゴールドグラブ賞10度の殿堂入り選手にたとえて賛辞を贈っており、現地での評価の高さをうかがわせた。

松田のミスにも言及「エラーは記録されませんが…」

 逆にカート氏がミスを指摘したのはアメリカが勝ち越した場面。1-1の8回1死二、三塁からA・ジョーンズの三ゴロを松田が捕り損ねて本塁送球できず、一塁で打者走者をアウトに。この間に三走クロフォードが勝ち越しのホームを踏んだ。

 カート氏はこの場面を「本塁へ送球しようという気持ちは伝わってきましたが、実際に捕球する前から送球体勢に入ってしまっていますね。しっかりボールをハンドリングできませんでした。エラーは記録されませんが、弾いたことには変わりありません」と守備の乱れを指摘していた。ただ、松田に関しても試合中に好守を称賛する場面があり、決してその評価は低くななかった。

 圧倒的なパワーを武器とする海外勢を相手に、高い投手力や緻密な守備、チームワークで渡り合ってきた日本。この日は打線が4安打1得点に抑えられており、なおさら1つのミスが重くのしかかった。ただ、2大会ぶりの世界一こそ逃したものの、試合後はアメリカ代表のリーランド監督も日本野球を称賛しており、侍たちのプレーを評価する声は多い。

 菊池をはじめとする日本選手の技術の高さも、大会を通じて十分にアピールできたに違いない。