神野大地インタビュー・後編】

(前編はこちら>>)
 青梅マラソンで30kmレースを経験するなど、充実したルーキーイヤーを過ごした神野大地(コニカミノルタ)。社会人2年目に向け、「マラソン練習に入っていけるだけの土台はできた」と話す。青学大の3年時から思い描いてきた通り、2017年シーズンは初マラソンに挑むが、そのレースもすでに決めている。12月3日の福岡国際マラソンだ。


強豪ランナーが揃った丸亀ハーフマラソンを日本人トップでゴールした神野 photo by Kyodo News そこまでのスケジュールは神野の中でほぼ固まっている。ニュージーランドで実施される日本陸連男子マラソン合宿(3月22日〜4月13日)に参加して、その後は、4月23日の、ぎふ清流ハーフマラソン、5月3日の四国せいよ朝霧湖マラソン、5月14日の仙台国際ハーフマラソンと、4〜5月にハーフを3本走る。その間、トラックレースは考えていないという。春にハーフを3本走る実業団選手は珍しいが、どんな意図があるのだろうか。

「昨季は5000mからスタートしましたが、今年は約3週間のニュージーランド合宿でマラソン練習をします。4月に5000mから入るのでは、流れがよくありません。それよりもハーフを3本きっちり走ることで合宿の成果も確認できますし、マラソンに1歩踏み出せると思うんです。四国せいよ朝霧湖マラソンはゲストランナーとして呼んでいただいているので、練習の一環として64分30秒ぐらいで走りますが、ぎふ清流と仙台国際は勝負にいきます」

 ハーフを3本こなした後はトラックレースにも参戦する予定だ。6月の日本選手権1万mと7月のホクレンディスタンスシリーズ網走大会1万mの出場を考えている。

「6〜7月の1ヵ月半だけはスピードを身体に戻して、その後でマラソン練習に入っていくという流れに持っていきたいと思っています。日本選手権は入賞を狙っていますし、ホクレンでは自己ベストを更新したい。7月下旬から夏合宿が始まるので、8〜9月はしっかり走り込んで、9月に海外でハーフマラソンに出たいなと考えています。そういう流れで福岡国際に向けて仕上げていくつもりです」

 初マラソンとなる福岡国際のターゲットも明確だ。神野は「現実的な目標は2時間8分59秒ですけど、初マラソンで日本記録(2時間6分16秒)を出したいという気持ちもあります」と話す。高岡寿成(2002年シカゴマラソン)以来となる記録更新を目指し、チーム練習に加え、自分なりのメニューもこなしていきたいと語る。

「コニカミノルタのマラソン練習を確実にこなしていけば、2時間10分切りは達成できるでしょう。そこから、いかに自分で『プラスα』ができるかですね。覚悟を決めて、他の選手に差をつける何かを積み重ねていくことが重要だと思っています」

 まだ提案段階だというが、神野はマラソントレーニングの「プラスα」についても具体的な内容を教えてくれた。

「ポイント練習をする翌日(火曜日と金曜日)は、朝練習が合同走になっていて13km弱を走るんです。その後に10km走ろうかなと思っています。ダウンジョッグを10kmするという感覚ですね。それぐらいで疲労がたまっている人間はマラソンなんか走れないと思うので。両日は午後練習のジョッグも20kmに増やしたい。そうすることで朝と午後を合わせて42kmは走ることになります。

 また、フィジカルトレーニングで限界まで追い込むことも考えています。たとえば、ランジスクワット20回を10秒レストで30〜40分間繰り返すようなメニューです。終わったら立てないくらいの強い負荷をかけることで脚筋力を鍛えるだけでなく、マラソンできつくなったときもフィジカルトレーニングの方がきつかったと思えるようにする狙いもあります」

 さらに、走る距離については、次のような持論を述べる。

「網走の夏合宿で能取湖1周(35km)ジョッグというメニューがあるので、今年は能取湖2周ジョッグをしようと思っています。70kmを走ったからといって強くなれるわけではないと思うんですけど、70kmを走った事実は自分のなかで残りますから。

 日本のマラソン練習は40km走が基本になっていますが、僕は違和感を持っています。42.195km走るのに、なぜ40km走なのかと疑問に感じていたからです。40km走をするなら42.195km走をやりたい。ラストの2.195kmをレースペースで上げる『アオガク流』も取り入れたいと思っています」

 神野が卒業した後も青学大は強かった。昨季は「箱根3連覇」と「学生駅伝3冠」を達成。母校の活躍に刺激を受けたという。同時に、2020年の東京五輪を目指すにあたり、青学大の後輩たちには負けていられない。


「目指すは東京五輪でのメダル」と神野は明言する photo by Sportiva 1学年後輩の一色恭志は初マラソンとなった昨年の東京を日本人3位の2時間11分45秒で走っているが、原晋監督から、「おまえはマラソンで一色に勝てない」と言われ続けてきたという。しかし、神野は「一色にマラソンで勝てないと思ったことは一度もありません」と言い切った。では、東京五輪に向けてのライバルはいるのだろうか。

「同年代でいえば、すでに結果を出している服部勇馬(トヨタ自動車)がライバルです。昨季が2時間11分46秒で、今季が2時間9分46秒。1年で2分成長しました。来季2分縮めてきたらすごいことになる。自分はまだマラソンを経験していないので、勇馬が2〜3年で積み上げてきたところを一発で出さないといけません。

 まずは福岡国際を走ってみてどうなるのか。マラソンに向いてなかったらやばいですね。陸上をやめちゃうかもしれない(笑)。でも、自分は東京五輪のメダルを本気で目指しています。マラソンに挑戦するからには、皆さんにメダル獲得を期待させるような走りをしてみせますよ」

 マラソンデビューに向け、準備を着々と進める神野。年末には、低迷続く男子マラソン界に救いの神が現れるかもしれない。

■陸上 記事一覧>>