朝鮮中央テレビのキャプチャー

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北朝鮮は22日午前、ミサイルの発射を行ったが失敗したと見られている。これに先立ち、今月6日には朝鮮人民軍(北朝鮮軍)戦略軍火星砲兵部隊が弾道ミサイル4発を発射した。

19日には、新型のロケットエンジンの燃焼実験が行われ、成功したと朝鮮中央通信が報じている。金正恩党委員長が実験を視察した際に「3・18革命」と述べていることから、実験は18日に行われたと見て間違いない。金正恩氏はよほど実験の成功が嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべて大喜びしている写真が北朝鮮メディアで紹介された。

ヘンな写真を公開

金正恩氏は、これまでも北朝鮮メディアを通じて、自身の写真を数多く公開してきた。中には「え、これいいの!?」と思ってしまうような写真もある。そんな写真を最終的にセレクトできるのは金正恩氏以外にはいない。写真を通じて何かをアピールしたいのだろう。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

さらに、今年1月には「ファースト写真集」が発刊された。写真集にはデイリーNKジャパンや本欄で紹介する写真の多くがセレクトされていた。どうやら、正恩氏とデイリーNKジャパン編集部は、「これはいい写真だ!」と感じるセンスが似通っているようだ。

今回の新型エンジンの実験成功を伝える報道でも、かつての日本のさわやかな青春ドラマの一場面を思い起こさせるような写真が公開されている。

朝鮮中央テレビのキャプチャー

朝鮮中央テレビのキャプチャー


金正恩氏の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏が先月、マレーシアで暗殺された直後こそ仏頂面を見せていたものの、正恩氏は日頃、無邪気な様子を隠そうとしない。ところが、こうした金正恩氏の写真が庶民達の反感を買っているとう。

ブタ工場視察の写真も

北朝鮮の庶民にとって、春の訪れは「飢え」の訪れを意味する。昨年秋に収穫した食糧が底を突くからだ。この時期を朝鮮語で「ポリッコゲ」(直訳すると麦の峠)と呼ぶが、大麦の収穫が始まる8月中旬まで食糧が不足した状態が続く。食糧事情が大幅に改善したとはいえ、依然として綱渡りが続いているのだ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、普天(ポチョン)、甲山(カプサン)、三水(サムス)など道内各地で、食糧が底をついたと訴える人が続出している。

こうしたなか、金正恩氏が繰り返す派手なミサイル発射や実験に対して、知識層のみならず、一般庶民も「ミサイル1基で、全国の人民の数ヶ月分の食糧が買える」と考えるようになってきている。空に飛び去るミサイルを見て「数十万トンの食糧が飛んで行く」と怒りを募らせているというのだ。

金正恩氏が新型ロケットエンジンの地上噴出実験を視察する写真についても、多くの庶民が「人民にジャガイモさえも腹いっぱい食べさせられないくせして、何がミサイルだ」などと憤慨する。中には「庶民を飢えさせられてそんなに満足なのか」と言う人もいる。

当局は、庶民の怒りに気づいたのか、抑制策に乗り出しているが、あまり効果はないようだ。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、地元の労働党組織は、「(一連の核実験などは)自衛力強化のためのものだ」などと宣伝するための政治講演会を開催するよう指示を下した。

講演会の講師は「われわれがひもじい思いをしてでも、自衛力を強化しなければ、祖国と人民の安寧と平和は守れない」「堂々たる核保有国となった我が国とやり合う者はこの世にいない」などと大口をたたく。

それを聞いた人々は「人民の苦しみなど考えず、耐えろと繰り返すばかり」「われわれが欲しいのはミサイルではなくコメだ。お上はなぜそれがわからないのか」と怒りを抑えきれない様子だったという。

昨年、金正恩氏がある養豚工場を視察した際の写真が公開された時も、北朝鮮庶民はあれこれと揶揄した。金正恩氏は、ますますアンデルセン童話の「裸の王様」になりつつあるようだ。