ビッグセーブも見せ、完封勝利に貢献したGK川島永嗣

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[3.23 W杯アジア最終予選 日本2-0UAE アルアイン]

 GK川島永嗣(メス)のハイライトは2度あった。最初のハイライトは、ビッグサプライズとなった先発メンバー発表の際、アウェーゴール裏から起きた大声援。そして、2度目のハイライトは、1-0とリードして迎えた前半20分のプレーだった。

 自陣でボールを奪われ、UAEのカウンターを浴びた日本は、MFイスマイール・アルハマディのスルーパスからFWアリ・マブフートにフリーでPA内への進入を許してしまう。絶体絶命のピンチだったが、この日のゴールマウスを守る男には、ハリルホジッチ監督が強調してきた「経験」があった。

「ああいう動きをしてくるというのは分かっていたし、あの場面は1対1で抜けてくると思った」

 脳裏をよぎったのは15年1月23日のアジア杯準々決勝・UAE戦の前半7分に許した先制点のシーンだ。ロングフィードから日本のDFラインの裏を突いてシュートを打った選手こそ、今、目の前にいるマブフートだった。

 とっさに考えたのは「シュートコースを消すこと」。特徴を知る相手に対して瞬時に間合いを詰めて対応し、左足で防いだ。昨年6月のキリン杯・ブルガリア戦以来となる代表戦出場で見せた“神セーブ”だった。

 所属するメスでも長らく出場機会を失っており、最後に出場した公式戦は今年1月8日のカップ戦。試合勘に対して疑問符が付くのは当然の状況で、川島自身も「そもそも今回の代表に関しては、呼ばれないのかなというほうが自分の中では強かった」という。

 しかし、UAEに到着してからのトレーニングで指揮官に決断させた。練習では試合の2日前から主力組でプレー。試合前日に先発を告げられると、「やるしかないと思った」と腹をくくった。

 ハリルホジッチ監督は「リスクはあったが、練習をしながら確信を持てた。経験が必要な試合であり、メンタル的に落ち着いた人が必要だった。今野と一緒で、パーフェクトな試合をしてくれた」と満足げ。日本サッカー協会の田嶋幸三会長も「彼の素晴らしい精神力を称えたい」と興奮気味に言った。

 ホームで負けた相手にアウェーで完封勝利を飾ったことは、最終予選残り4試合に向けて良い流れをつくることにもつながったはずだ。川島は「無失点はGKとしてうれしいけど、全員のハードワークがあってこその結果」と謙遜するが、10年南アフリカW杯直前に正GKの座をつかみ、日本をV字回復へと導いたときに見せた土壇場での力は、34歳になった今もなお健在だった。

「このチームは(西川)周作が2次予選や最終予選にずっと出ていたり、みんなで引っ張っているところが大きい。今日は僕が出たし、選手として試合に出ることが目標であることは変わらないけど、日本代表が勝っていくうえでは(GKの)3人で切磋琢磨していかなければいけない」

 有事に頼れるベテランが、日本にはいる。

(取材・文 矢内由美子)


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