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by Tony DiGirolamo

アメリカの農家でいま、トラクターのすべての管理に利用されているソフトウェアをクラックする事例が多発しているそうです。そこには、トラクターメーカーと農家との間での「修理する権利」を巡る争いがあることを、ニュースサイトのMotherboardが報告しています。

Why American Farmers Are Hacking Their Tractors With Ukrainian Firmware - Motherboard

https://motherboard.vice.com/en_us/article/why-american-farmers-are-hacking-their-tractors-with-ukrainian-firmware



問題となっているソフトウェアは、世界最大の農業機械メーカーとして知られる「ディア・アンド・カンパニー」(ジョン・ディア)のもの。ジョン・ディアでは、販売しているトラクターの内部にソフトウェアを組み込んでいて、すべての面でのコントロールを司っています。

問題は、ジョン・ディアは2016年10月にライセンスの内容を変更して、ほぼすべての修理や機械への機能追加を禁止し、手を入れてよいのは認定店舗だけに限定したことです。

これまでは農家が自ら修理を行ったり、近所の詳しい人にトランスミッションを交換してもらったりすることができたのですが、ライセンス改訂後は、仮に誰かがトランスミッションを勝手に交換すると、そのパーツは認証されていないためトラクターは動かなくなることになりました。



by Lars Plougmann

ネブラスカ州で農家を営むダニー・クルーゼ氏によると、この状態になったトラクターを動かすためには、ジョン・ディアのエンジニアに来てもらって、USB経由でパーツを認証してもらう必要があり、その工賃は基本料金が230ドル(約2万5500円)、出張費が1時間130ドル(約1万4400円)だとのこと。

ジョン・ディアが用いているプログラムとしては、トラクターの状態を確認して故障した部位を分析する「ジョン・ディア サービスアドバイザー」、シャシーやエンジンの性能を設定可能な「ジョン・ディア ペイロードファイル」、ジョン・ディアのサービスアドバイザーが使うコンピューターとトラクターとの通信を補助する「ジョン・ディア エレクトロニックデータリンクドライバー」などがあります。

当然、これまで自力で修理してきた農家は強く反発。Motherboardによれば、ソフトウェアをクラックするためのウクライナ製のツールがあり、会員制フォーラムでの情報交換が行われているそうで、ジョン・ディアの認証していないコンピューターとトラクターを接続できるようにするライセンスキージェネレーターなどが存在しているとのこと。

先ほど出てきたクルーゼ氏の場合、トラクターを動かすのに豚のフンを使った肥料を利用していて、エンジンのカスタマイズが必要となるため、クラックを行っているとのこと。ただ、それだけではなく、ジョン・ディアがもしほかの会社に買収されたり、トラクターの販売を取りやめたりしたときに、ソフトウェアがそのまま維持されなければトラクターは使えなくなってしまい困るため、自分で管理できる状態にしておきたいという思いもあるようです。

メーカーとしては勝手なことをされたくないという思いがあるのかもしれませんが、「認証しないと動かない」というのは利用者としてはかなり困るので、農家の反発も理解できるところです。