フィリピン映画『キタキタ』より小樽運河でのクルーズシーン

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 このほど開催された第12回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門で、どちらも北海道で撮影されたタイ映画『一日だけの恋人』とフィリピン映画『キタキタ』が上映された。北海道では外国人観光客の来道を促す戦略の一つとして海外映像作品のロケーション撮影の誘致を積極的に行っているが、本映画祭のプログラム・ディレクターの暉峻創三氏は「今年は日本でロケをしたものに傑作の率が高かった」と2作についてコメントした。

 タイ映画『一日だけの恋人』は、IT企業を舞台にしたラブコメディーで、社員旅行として北海道を訪れるストーリーになっている。毎年2月に開催される「さっぽろ雪まつり」が主人公たちの恋を盛り上げる重要なシチュエーションとして利用されているほか、余市のキロロリゾートでのスキー、登別の地獄谷観光などダイナミックな冬の北海道を描写する。年間を通して温かく、雪の降らないタイに住む人たちの「雪への憧れ」をギュッと凝縮したような作品だ。昨年9月にタイで公開されて大ヒットした。

 一方の『キタキタ』は、夏の北海道で撮影。日本人の婚約者に捨てられたフィリピン人女性レアと、失意の彼女に手を差し伸べた同胞男性トニョとの、もどかしくも愛らしい恋の奇跡を、札幌のモエレ沼公園や小樽運河クルーズが爽やかに演出している。シーグリッド・アーンドレアP・ベルナード監督は北海道を撮影地に選んだ理由について「プロデューサーからロケ地は好きなところを選んでいいと言われ、その一つとして提案されたのが北海道だった。大都会で撮影するよりも撮影許可が取りやすいんじゃないかと思った」という。

 北海道は、アジアで大ヒットした岩井俊二監督『Love Letter』(1995)のロケ地として知られ、同作に影響を受けた映画人も多い。今回の大阪アジアン映画祭で上映されたデレク・ツァン監督の女性の友情物語『七月と安生』(香港・中国)では、『Love Letter』のワンシーンを彷彿とさせる場面があり、エンディングロールでは謝辞として岩井監督の名前が掲載されている。

 また、夕張市で毎年開催されているゆうばり国際ファンタスティック映画祭に参加し、一面の銀世界に魅了された人も多い。台湾の巨匠・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督は、カンヌ国際映画祭高等技術院賞受賞作である映画『ミレニアム・マンボ』(2001)の撮影を夕張で敢行した。何より近年、中国人観光客の呼び水となったのがフォン・シャオガン監督『狙った恋の落とし方。』(2009)で、平成20年(2008)の中国からの来道者数は4万7,400人だったが、平成21年(2009)は9万2,700人と約2倍に。平成27年(2016)は実に55万4,300人が訪れている(来道者数はいずれも北海道経済部観光局調べ)。

 そして現在、北海道同様に海外作品の誘致に力を入れている佐賀県では、タイの映画やドラマの撮影が度々行われ、観光客の増加に繋がっている。2013年7月からタイ人の日本滞在ビザが免除になったことにも後押しされ、平成25年(2013)に370人だったタイ人宿泊客数は、平成26年(2014)には1,540人となるなど数字を伸ばしている(タイ人宿泊客数は佐賀県地域交流部観光課の「佐賀県観光客動態調査」より)。

 前述した『キタキタ』のフィリピンでの公開はこれから。また国内ロケが行われた作品としてはいずれも大阪で撮影された、オスカー俳優ジャレッド・レトー主演の『ジ・アウトサイダー(原題) / The Outsider』やジョン・ウー監督×福山雅治主演『追捕 MANHUNT』(正式日本語タイトル未定)という大作もこれから公開を控えている。世界の映画関係者の間で日本は「撮影許可が取りづらい国」として評判がかんばしくなかったが、作品が映画祭などで評価されたり、外国人観光客の増加が数字であらわれれば官民の撮影に対する理解も深まっていくに違いない。(取材・文:中山治美)