Doctors Me(ドクターズミー)- 人工乳房で希少がんリスクと死亡例が報告 懸念される5つの副作用【米 研究】

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2017年3月21日(火)にアメリカのFDA(食品医薬品局)は、胸に人工乳房(インプラント)を挿入する手術を受けた患者に希少がんのリスクがあると発表しました。(参考)

豊胸手術や、乳がんの乳房再建などに使用される人工乳房によって、どのようながんリスクが引き起こされると考えられるのでしょうか。

今回はアメリカで発表された人工乳房と希少がんの関係、人工乳房の主な使用目的、手術内容、副作用や注意事項を医師に解説していただきました。

アメリカで発表された人工乳房と希少がんに関する研究


インプラントとは?


インプラントとは、人体の欠損部分や不足部分を補うために体に埋め込むものを指します。

歯のインプラントが有名ですが、それ以外にも鼻を高くするためのプロテーゼや、乳房の形を補うためのバッグもインプラントに当たります。

アメリカで発表された研究


FDA(食品医薬品局)は、豊胸手術または乳がん術後の乳房再建術で人工乳房の埋め込みを受けた患者では、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)という珍しいがんにかかる割合が高くなると発表しました。

豊胸手術を受ける人は世界中に1000万人、アメリカでは1年間に約30万人が人工乳房埋め込みを受けていますが、人工乳房に関連してALCLを発症する割合は数十万人に一人という低い確率です。

2011年に人工乳房使用とALCL発症の関係があるかもしれないと注目され始めてから、アメリカで確認されたALCL患者は359人、うち死亡者は9人であるとのことです。

また、人工乳房の中身が分かっている312人の中で、中身がシリコーンゲルであるのは186人、中身が生理食塩水であるのが126人でした。

特に表面がざらざらしたタイプの人工乳房は、つるつるした人工乳房よりもALCLの発症率が高かったとのことです。

ALCLとは?


ALCLは乳房にできるがんですが、母乳を作るための乳腺からできる通常の乳がんとは異なり、人工乳房周囲にできる瘢痕組織の中にがんができます。早期発見すれば治療は可能で、命にかかわることは多くありません。

症状としては腫れやしこり、液体が貯まるといったもので、術後に皮下出血が多い場合にALCLが起こりやすかったとされています。

《参照》
・The New York Times

人工乳房(インプラント)は何で作られている?


生理食塩水やシリコーンゲルを詰めた人工物を使用します。

今回の報告で意味しているインプラントからは外れますが、乳房の手術では、お尻やお腹から取った自分の脂肪や筋肉を形成して使ったり、ヒアルロン酸を注入することもあります。

人工乳房の主な使用目的


美容整形


乳房の形や、位置を修正するための豊胸手術に使用されます。

乳がん乳房再建


乳がんで自分の乳房を失った場合の乳房再建に使用します。

乳房再建を行った人からは、喪失感がなくなり自信が取り戻せるといった、ポジティブな感想が多いとされています。

人工乳房の手術


手術内容


全身麻酔をし、脇の下、もしくは乳房の下を切開し、そこから乳房の裏側にスペースを作ります。

インプラントを肋骨と大胸筋の間、もしくは乳腺と大胸筋の間などに入れ込みます。

費用


現在ではインプラントによる乳がんの乳房再建の場合は保険適応となり、自家組織による手術と合わせていずれも健康保険を使用することができるようになっております。

インプラントによる乳房再建の費用は片側100万円程度でしたが、現在は健康保険の適用により30万円程度で受けられると考えられます。

なお、豊胸手術や美容整形手術は自費診療です。

人工乳房の術後リスク・副作用


見た目の不満足


乳房が思い通りの形、大きさにならなかったり、年月が経つと左右のバランスが崩れてきたりということもあります。

乳房の形は立ち上がった時と横になった時で違うのが普通ですが、ご自身の胸の形に合ったインプラントを選ばないと不自然な形になることがあります。

インプラントの破損


交通事故などで衝撃を受けるとインプラントが破れて中身が出てくることがあります。

被膜拘縮


年月とともにインプラントの周りに被膜、つまりカプセル状の固い組織ができ、それが引きつれて変形することがあります。

術後のマッサージが必要になりますが、マッサージには痛みがあると言われています。

感染、出血


人工物であるインプラントの周りに感染や出血が起こることがあります。

乳がん検診が困難になる場合がある


事前にインプラントが入っていることを申告すれば検診を受けることは可能ですが、健診施設によっては対応できない可能性もあります。

豊胸手術を受けられた病院で、豊胸手術の術後健診を兼ねて乳がん検診を受けるか、エコー検査を選択するのがよいでしょう。

人工乳房の術後の注意事項


乳房の形、インプラントの状態、乳がんなどの病気がないかどうかについて、1年に1回程度受診したほうがよいでしょう。

その他、1カ月に1回は乳がんセルフチェックを行い、しこりやひきつれ、乳頭からの分泌物がないかを確認します。

最後に医師から一言


今回の発表では、「インプラント手術を受けていてもALCLを発症するのは非常にまれなことなので、今までにインプラントを入れていても取り出す必要はない」とされています。

しかし、過去にインプラント手術を受けられた場合は、定期検診を受けられることをおすすめします。

(監修:Doctors Me 医師)